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Cocoテラスたがわ: 地域新電力としての志は指定管理者やPFIで満足する程度のものか!?  その1 2023.12.15

ロ 事例2‐4 Cocoテラスたがわ株式会社

 「地域新電力事例集」で紹介されているCocoテラスたがわの【ポイント】と「事業目的・ビジョン」は次のとおりです。

 【ポイント】 「地域内資金循環を促進するほか、地域産業の振興を図っている」

「事業目的・ビジョン」 「地域新電力事業で得られる収益を活用して公共施設等における省エネルギー化の推進など環境関連施策の展開を図るとともに地域活性化に繋げる」

 以下では、1 Cocoテラスたがわの概要、2 Cocoテラスたがわ設立の経緯、3 Cocoテラスたがわの事業運営と経営戦略、4 Cocoテラスたがわの活動状況と成果、5 Cocoテラスたがわの出資者と経営責任者、6 Coco テラスたがわの「今後のビジョン」について検討します。

1  Cocoテラスたがわの概要

 同じ筑豊地区の田川市を所在地とする唯一の新電力です。電力の小売りやまちづくりが主な事業です。設立は2017年6月、供給開始は2017年11月、資本金 870万円、出資構成は田川市(28.7%)、パシフィックパワー (株) (28.7%)、その他(42.6%、内訳はNECキャピタルソリューション(株) (28.7%)、田川信用金庫(4.6%)、福岡銀行(4.6%)、西日本シティ銀行(4.6%))です。田川市が出資しているので、間違いなく自治体新電力です。

2  Cocoテラスたがわ設立の経緯

 ⅰ Cocoテラスたがわが設立される始まりは、2016年8月の「市として産業振興、再エネ導入促進を目的とした地域新電力設立を検討開始」のようです。その後、「参画事業者を募るため地元企業への説明を実施」したり、「新会社への出資金を含む予算が市議会で承認」されるなどがあって2017年6月に設立されています。

 事務所機能は田川市役所3階の建設経済部内に置くとされ、社長には当時の田川市建設経済部長とパシフィックコンサルタンツの100%出資子会社であるパシフィックパワー(株)九州支社の技術次長が共同で就いています。

 ⅱ パシフィックパワーHPによると、パシフィックパワーは、公共支援を60年以上にわたり行ってきた親会社パシフィックコンサルタンツの社会的な信頼をベースに、 自治体、地元企業とパートナーシップを構築し、数多くの自治体新電力会の設立・運営に携わっている企業です。

 注目されるのは、Cocoテラスたがわの「経営業務全般」をパシフィックパワーが受託運営していることです(「事業運営」についてはNEC キャピタルソリューションも関与するとされています。「事業運営」は事業活動の範囲や対象を確定する広い概念で、「経営業務」は確定された事業を現実に管理運営することを意味していると推測しますが、正確な違いは不明です)。いずれにしろ、パシフィックコンサルタンツないし子会社であるパシフィックパワーの事業運営と経営に関する考え方がCocoテラスたがわの経営戦略と実務に大きく反映され影響を及ぼすことになったと思われます。

Cocoテラスたがわの事業スキーム

3 Cocoテラスたがわの事業運営と経営戦略

 田川の地域新電力ですから、さぞかし参考になることが多いだろうと、CocoテラスたがわのHPを含め、webで文献を探してみました。しかし「地域新電力事例集」(2021年3月)以外、ほとんど見当たりません。みやまスマートエネルギーについて議論している文献が多かったのとは大違いです。

 そこで、Cocoテラスたがわの事業運営と経営業務全般に大きな影響を及ぼしていると思われるパシフィックパワーの考え方を窺い知ることができる資料が見つかったので、一般論ですが適宜抜粋して紹介します。この後、以下でCocoテラスたがわの活動を評価するときに参照します(プロジェクトイノベーション事業本部サービスプロバイダ事業部付 パシフィックパワー株式会社出向 中川貴裕「自治体新電力を核とした地域経営への展開」、Management for the Power Company with Local Government 2023年4月。原文には数字番号や下線はありませんが、引用する便宜のため、以下では「中川・地域経営」①~⑬などとして引用しています)。

 ① 自治体新電力の主業である小売電気事業の電力需給管理業務は外部委託可能で、初期投資・ 資産保有がほぼ不要であること、また、公共施設を主たる顧客としていることから、事業のリスクが低い。これにより事業として始めやすく行政内の意思決定も図りやすいものとなっている。

 ② パシフィックコンサルタンツ株式会社(以下、「当社」という)は、以前から将来的な人口減少に伴う行政予算縮減を見据え、地域の新たな担い手として地域のインフラ・サービスの維持、地域振興等の新たな仕組みを創出する「地域経営」展開に取り組んできた。

 ③ 自治体新電力は地域内電源を地域内で活用するための仲介役としての役割のほか、外部流出していた資金(電気料金)の地域内還流、収益を活用した新たな事業展開などに期待を持って設立されている。この設立時の期待を踏まえると、自治体新電力が担うべきは、地域課題や地域経済成長を考慮した地域版GXを進めるための事業体としての役割であると考えられる 。

 ④ 自治体は、これまで多くが各部署・各施設で個別の入札により「安さ」を判断基準とした電力調達を行ってきた。これに対し、自治体新電力は、単に安さだけを追い求めるのでなく、個別契約から一括契約に変えることによる行政事務の集約管理・効率化、すなわち財政面での合理化や、地域内電源の最大活用による電力への付加価値創出といった、より多面的なメリットの創出に主眼を置きつつ、電力価格そのものも比較的手頃な水準とすることを目指している。

 ⑤ これまで各施設・各所管課で別々に行ってきた電力調達を、民間ノウハウを活用しまとめることで、比較的手頃な価格で、かつ地域内電源活用などの価値を加えることができる。この点で、自治体新電力の担う小売電気事業は、施設運営の指定管理 や P F I 等と類似するものと考えられる。

 ⑥ 実は、この効果は昨今のエネルギー高騰に当たっても功を奏している。多くの施設が、電力市場高騰により電気料金の値上げを余儀なくされ、入札では参加者不在で不調に陥り、高い電気料金(最終保障供給)を支払わざるを得ないといった状況が生じた。その中で、パシフィックパワーの関与する自治体においては、自治体新電力からの供給を積極的に維持し、最小限の傷口(予算増大)で済ませることができている。

 ⑦ 自治体新電力は、自治体出資とは言え民間企業であることから、事業にあたっては当然「採算性」が重要な要素となる。「収益事業」として成立させることがまず必要で、いかに理念的に良い内容であっても採算を伴わなければ事業化はできないという点を改めて認識する必要がある。

 ⑧ もちろん、再エネ導入などエネルギー事業の多くは、現状、FIT(固定価格買取制度)を含め、未だ国の補助金等がなければ 採算性確保が厳しいのも事実であり、その点もしっかり念頭に置きつつ、活用できる補助等の仕組みは最大限活用することが重要になる。

 ⑨ 小売電気事業を含むエネルギー供給事業はあくまで「小売」であるため、薄利多売の事業特性となる。さらには電力販売顧客が公共中心となることで、多売の範囲も限定される。これにより、着実に利益確保ができる可能性がある一方で、莫大な利益が出るわけではない。投資回収に時間がかかることとなり、再エネ導入などでは、10~20年などの事業期間となる。初期投資 のみならず、維持管理費や固定資産税負担なども生じるため、綿密な資金計画や資産管理体制の構築なども行う必要がある。

 ⑩ 自治体新電力で資産を保有した場合は、継続的な資産管理体制の構築が重要となり、事業期間中に地域住民とも円滑な コミュニケーションを図り、かつトラブルが生じた際などにも即座に対応していくために、地元企業からの支援が必須となる。したがって、地元企業に対し、協力企業として自治体新電力の事業に関わってもらう機会の創出のほか、何より、自治体新電力の目指す展開・地域像に関するアピール・意見交換などの機会の創出に心掛けておくことが重要になる。

 ⑪ 小売電気事業を含む収益事業を実現化していくプロセスでは多大な調整が必要となり、一朝一夕に進むものではない自治体新電力設立・運営によって実現したい将来の姿に対する市民・議会・庁内の共通認識化が最も重要であり、これが合意できれば、スピーディな事業推進が可能となっていくと考える。

 ⑫エネルギー関連で言えば、国では、地域の配電網(電線)の維持管理を地域主体に担わせていく議論(配電ライセンス)もされており、今後は、このような自立分散型システムの構築や、エネルギーインフラの管理体制の構築に向けた準備も実施していく必要 がある 。

 ⑬ 脱炭素・エネルギー面の効果と同時に、地域への様々な経済的・社会的効果をもたらす「行政マネジメント」の担い手としての有用性も見据え、当社グループとしては、これら多面的効果の最適・最大化により、「地域経営」の実現を目指していきたい。 (以下、「4 Cocoテラスたがわの活動状況成果」に続く)