ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

5 住民監査請求・住民訴訟が再生エネベースの地域経済循環施策を強力プッシュ❣    2024.3.18

 住民監査請求と住民訴訟が大きなきっかけとなり、生駒市といこま市民パワーの取り組みは加速したようです。

 住民監査請求を提起した方がその方のHPに書いておられますが、「政策目的といいながら「地産再生可能エネルギー」が全体の4%にも満たない」ことを強く主張されたようです。

 この主張(批判)を受け、生駒市といこま市民パワーは、「事業目的・ビジョン」をスローガンとして掲げるだけでなく、活動の実態面でもそれを明確に実践する必要に迫られ、具体的な対応策を打ち出すようになっています。

 生駒市(といこま市民パワー)の活動に異議を唱える形で提起された住民監査請求ではありますが、現実には、いこま市民パワーを設立した当初の目的を大いに推進する結果をもたらしたのです。すなわち、地域新電力の存在意義として重視する電源と供給先における変化について述べます。

 ⑴ 電源構成に占める再エネ比率を引き上げる取組み

    「再生エネ比率 1割超に いこま市民パワー、木質バイオマス電源を追加」(参照、日経新聞2019年3月11日)

 監査請求では、いこま市民パワーが再エネの地産地消をうたいながら、再生可能エネルギーである太陽光発電などからの調達が3%弱、2.6%程度(当時)にとどまり、電源の大部分を大阪ガスから調達していることを批判的に指摘していました。 

 そこで生駒市はいこま市民パワーの電源構成に占める再エネ比率を引き上げることとし、上記記事によりますと、2019年度から隣接する大東市バイオマス発電所からFIT電気を調達、環境価値の高いFIT電気比率を10%超、10.2%にするとしています。これは気候変動対策を遂行する生駒市の政策目標にも適合します。

  ロ いこま市民パワーがみんな電力より電力調達を開始  2021.4.1

 2021年4月1日 いこま市民パワーは、「みんな電力株式会社からのバックアップ電力調達を2021年4月1日に開始! 当社供給電力の再生可能エネルギー比率が計画値約80%に向上しました」とプレスリリースしています(https://www.ikomacivicpower.co.jp/news/20210401_)。

  ハ いこま市民パワーによる再エネ電源の開発

 生駒市は、生駒市が進める“環境モデル都市”などの施策をいこま市民パワーと連携して推進するとしていましたが(たとえば、文献②「市民パワーの取組」27頁)、再エネ電源の開発主体としても位置づけています。

 そして、いこま市民パワーが中心となって立ち上げる事業スキームにより、非FITの太陽光発電の開発と取得を目指しています。そこで、いこま市民パワーは2019(令和元)年、生駒市の方針に合わせ、電力事業の経営安定、再生可能エネルギー・地産比率の向上、需給規模の拡大などを目指す、中長期の経営計画を策定しています(下図参照、文献②「市民パワーの取組」10頁)。 

いこま市民パワー中長期計画、2019(令和元)年

 なお、再エネ・地産比率の向上を目指し、いこま市民パワーはかねてより定置型太陽光発電の整備候補地の探索を継続していたようです。2021(令和3) 年11月、自家消費型・非FITの市民共太陽光発電所5号機が完成し、電力調達を開始しています。これは完全に地産の再エネ電源です。

  ニ 家庭用太陽光発電の卒FITの買い取り

   いこま市民パワーは2021年9月から卒FIT電気の買取りサービス※を開始しています。市民の家庭の屋根に設置されている太陽光発電による電気は貴重な地産エネルギーであるとの理解の下、その電気をいこま市民パワーが買い取り、地域内で供給するというものです。

 ※卒FIT電気  再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)における家庭(10kW未満)の太陽光発電の買取期間は10年と定められているため、2019年11月以降に期間満了を迎えた家庭は、売電先を自由に選択することができます。

 これにより電気の地産地消がいっそう進められることになります。地域新電力を設立した本来の崇高な目的に照らし合わせて大いに歓迎できます(参照、お知らせ「卒FIT電気の買取開始」、いこま市民パワー株式会社のHP[更新日2022年7月5日] )。

 ところで、いこま市民パワーの電力買取単価は下表のとおりです。地域新電力を立ち上げ、市民向けに電気を小売りするときの参考になると思います。

 なお、表中、市民共太陽光発電所の出資者というのは、いこま市民パワーの出資者である(一社)市民エネルギー生駒が、市民からの出資を募って整備・運用する市民共太陽光発電所への出資者のことです。基本価格より1kw/hあたり1円上積みされていますが、上積みのための経費は(一社)市民エネルギー生駒が負担協力するとされています。   

 

単価

 合計単価

基本価格

10

 

生駒市内の発電設備

+1

 11

いこま市民パワー電気契約者

+1

 12

スタートキャンペーン((注意)2)

+1

 13

民共太陽光発電所の出資者((注意)3)

+1

 15

 

 ⑵ 市内市内一般家庭や事業所などへの再エネ電気の供給開始

  イ 新聞報道によると、令和2(2020年)9月生駒市は、いこま市民パワーが市内家庭への再エネ電力の供給を開始、先着順で約100世帯を募集、11月ごろから供給開始する見込み、将来的には5千件を目指すと発表しています (産経新聞2020年9月2日、 https://www.sankei.com/article/20200902-3JCGPWX775M2ZANHAL3NZUZ7DI/)

 これは電気の地産地消に向けた取組みと評価できます。つまり、「低炭素化及びまちづくりの市民参画に向けた家庭・市民向けサービス展開の第一歩」です(文献②「市民パワーの取組」16頁)。

 いこま市民パワーがそれまでは主に市内公共施設に電気を供給していたことは前に述べたとおりです。しかしそれでは、地域の経済循環や地域低炭素化の政策目標は限定的にしか実現されません。早晩、民間事業所や一般家庭に供給する体制を創ることが必須でした。

  ロ そして、いこま市民パワーが市内の家庭に再エネの電力を供給するということは、当然ながら各家庭はそれまで契約していた関西電力などから、いこま市民パワーICPに需給契約を切り替えることになります。

 さて、電気を購入する市民の立場からすると、関西電力と比較して料金が高くなるか安くなるかは大きな関心事です。この点、使用量によって若干差が生じるようですが、2.9%から3.6%、年間にすると4548円から2976円、関西電力との契約より安くなる料金プランになっています(下図参照)

一般家庭に再エネ電気の供給開始 2019年9月、文献②「市民パワーの取組」16頁

  ハ いこま市民パワーはまた、地域の中核企業である金融機関と連携して民間施設への供給を拡大しようとしています。具体的には、出資企業である南都銀行との間で需要家の紹介体制を構築し、民間施設への営業を強化しています。

 さらに、2020年に入ってからは市内郵便局ともタッグを組み、郵便局施設への電力供給を始めると共に、郵便局から顧客を紹介してもらう合意を成立させたようです。

                                 (つづく)