ふるさと直方フォーラム

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4 住民監査請求・住民訴訟の提起による問題提起   2024.3.16

 ⑴ 2018(平成30)年11月、生駒市が市内公共施設で使用する電力調達について、生駒市市民が、一般競争入札を行わずに生駒市が51%出資する地域電力会社「いこま市民パワー」(社長・小紫雅史生駒市長)と随意契約する方法で電気を購入したことは、同時期に一般競争入札で電力調達契約を行った奈良市と比べると年間約9000万円高い電気代を支払っており違法・無効であるなどとして、住民監査請求を提起しています(参照、地方自治法242条)。

 ※ 背景事情として、当時、関西電力による安値攻勢があったようで、「原子力発電所を再稼働させた関西電力の安値攻勢が思わぬ結果を招いている」などと報じられています(たとえば、「自治体主導の新電力、苦境に 関電の安値攻勢 誤算 生駒市購入の電力「割高」住民訴訟に発展の恐れ」、日本経済新聞2019年2月7日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO40981630W9A200C1LKA000/)。それらによると、関電の入札価格は、どうやら自治体側があらかじめ算出している「予定価格」の半額程度の安さだったようです。

 さらに、後に気づいたのですが、圧倒的なシェアと電源保有率を誇る大手電力によるの3割以上の安値攻勢は独禁法違反ではないかとの問題意識を共有し、小売電気事業者の会員組織が議論しています(詳しくは、参照「大手電力の安値攻勢や囲い込みは独禁法違反? 新電力会合で激論」、山根 小雪=日経エネルギーNext 2019/11/09 https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00001/00015/)

 

 住民監査請求をした方が、ご自身のHPで「請求却下」の監査結果が送付されてきたと述べておられます。それによると、2019(令和元)年1月、市の監査委員3人は、政策遂行上、市がいこま市民パワーから優先的に電力を購入する必要があることを認め、「直ちに違法又は不当であるということはできない」との理由で請求を退けています。なお、同じ住民が同様の内容で対象時期を変えて再び監査請求をしたが2020年1月に棄却されているようです。

 監査請求における監査委員の見解は、生駒市が、いこま市民パワーを通じて、低炭素化や住民サービスの向上といった政策目的を果たそうとしている一般競争入札随意契約で、いこま市民パワーから電力を購入する場合とに差額が生じるのであれば、それは市の「政策遂行のコスト」である、ということのようです。

 これに対し、住民監査請求を提起した方はそのHPで次のように述べています。「監査結果は、会社設立当初は、民間事業者に電気を売るには時間を要するため、経営の安定化を図るため市が電気を買うのは不合理ではない。今後再生可能エネルギーを拡大する余地もあるので政策目的に反しているとまでは言えない、ということでした。今年も市民パワーと契約してしまったようですが、『設立当初』を何年続けるつもりなんでしょうか。」

 住民監査請求が却下されたため、この方は引き続き住民訴訟を提起し、「最少の経費で最大の効果を上げるよう求めた地方自治法に反する違法な契約」などと主張して、市長に対し、いこま市民パワーに支払った電気料金の全額に当たる2億5000万円を生駒市に返還するよう求めたようです(参照、同法242条の2第1項4号)。

 奈良地裁は、生駒市といこま市民パワーの代表者がいずれも市長のため、上記随意契約民法が原則禁じた「双方代理」に当たるが、市議会が決算を認定したことなどで、さかのぼって契約の法的効力が生じたとする判決を下したようです(参照、民法108条、119条)。

 ⑵ 住民監査請求が提起された2018(平成30)年11月当時、私は関東の大学に単身赴任していました。ネットの記事で住民監査請求が提起されたことを知りました。当時はそれ以上に情報収集して調べることをしていませんが、以下のようなことを漠然と思ったことを覚えています。

 「確かに、形式としては双方代理だな。ただ、双方代理であることはそのとおりだが、自治体が締結した行政上の契約にも民法の双方代理禁止が直接に適用されるかな? 自治体自身が出資している自治体新電力と自治体との契約については双方代理だから無効だなどの批判を避けるため、地方自治法や特別法に特則規定があるかもしれないが、ないのかな? 

それにしても、地域新電力が、原油高騰などの影響でコスト高になった電気を購入・調達することを余儀なくされて困難な状況に陥り、全国的には営業停止や解散に追い込まれているものも出ているようだ。

そんなとき、自治体が51%出資し、脱炭素や地域経済の活性化を志している市民団体も出資して設立した自治体新電力から、救済の意味合いも込めて、自治体が購入契約をして電気を調達するというのが本件双方代理の本質であり目的だろう。それを市民が違法又は不当と非難するというのは、虚しいような印象もあるな。

それに、原子力発電所を再稼働させた関西電力が安値攻勢をかけて地域新電力を駆逐するかのような動きをしていることはどう評価したらいいのだろう?  金銭的な一時の損得だけを見て住民訴訟の結論を出していいものか、判断は難しい。他方、立派な理念からスタートしたものでも、いつのまにか初心を忘れて馴れ合いや結託をして自治体に無益な損害を与えることも結構あるから、形式上から見た適法違法で判断するというのも不祥事予防のためにありかな?」などというものでした。        (つづく)