ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

考察⑶ リチウムイオン電池の用途別ニーズの動向と日系企業のシェア推移 2020.8.31 環境エナジータウン直方創造のための市民目線からの政策選択メモ ⑱

Ⅲ リチウムイオン電池の用途別ニーズの動向と日系企業のシェア推移

一口にリチウムイオン電池といっても、13回の連載で見てきたように、IT機器用の小型軽量のものから電気自動車用、さらに定置式のかなり大きなものまで、用途は多様化しています。そこで、用途別ニーズの動向を確認すると共に、併せて用途別ニーズにおける日系企業のシェア推移も見ておきます。

 

ⅰ 用途別ニーズの動向について、2020.8.25付けの⑯で引用する富士経済作成の表を参照してください。

 小型民生用については一般的な説明が簡潔になされているだけですが、定置式のリチウムイオン電池、特にESS(電力貯蔵システム)については諸外国の動向に言及して、再生可能エネルギー発電システムの導入増加に連動して世界的な拡大が続いていると指摘しています。環境エナジータウン創造との関係で注目されます。要旨は以下のとおりです。

 

小型民生用は市場規模が大きいが需要は飽和している。そして、EVやPHVなどの電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池(LIB)は、需要の中心である中国で2020年末に補助金制度が終了するため今後の伸びに不透明感があるが、長期的に非常に厳しいCO2排出規制が課される欧州では拡大が予想される。

しかし、「ESS(電力貯蔵システム)用は世界的な再生可能エネルギー発電システムの導入増加に連動し拡大が続いている。韓国で2030 年までに再生可能エネルギー由来電力の割合を20%に増やす計画が発表され、2018年は太陽光発電風力発電システム向けESSの導入が加速したことから、世界市場は2017年比2.3倍と急拡大した。・・・欧州や北米での需要の増加もあり引き続き拡大が予想される。また、2020年には米国カリフォルニア州で新築住宅での太陽光発電システムの設置が義務化されることから、ESSの併設も増加するとみられる。」

 

ⅱ 次に紹介する記事は、簡潔ながらも太陽光など再生可能エネルギーの利用と電力貯蔵システムに言及しています。リチウムイオン電池の来し方を踏まえて、「環境とエネルギー」の将来を展望しようとするその着眼は、環境エナジータウンの創造という当フォーラムの問題意識と通じるところがあります。

 

産経新聞リチウムイオン電池 5兆円市場へ ノーベル化学賞・吉野氏が開発」(2019.10.9) 

市場の約4割を占める小型の民生用は、普及とともに伸び率が鈍化してきたのに対し、今後の成長が見込まれるのが電気自動車やハイブリッド車などの電動車用だ。各国の燃費規制の強化を背景に、急速に普及するとみられる。

22年の電動車用市場は18年と比べ倍増の約4兆5千億円に拡大する見込み。多くの自動車メーカーがラインアップを拡充し、成長が続くと予想している。

 また、今後は太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用に不可欠な電力貯蔵システムへの採用も進みそうだ。電力供給を最適化するスマートグリッド(次世代送電網)への貢献も見込まれる。

 人工衛星やロケットなどの宇宙分野でも用途が広がっている。国際宇宙ステーション(ISS)では従来、ニッケル水素電池を電源に使ってきたが、リチウムイオン電池はエネルギー密度が約3倍と高いなどの利点があり、代替が決まった。物資補給機「こうのとり」で日本製のリチウムイオン電池を運び、順次置き換えている。

 

ⅲ なお、前回紹介した政策投資銀行「バッテリーベイの現状と今後」(2013、平成25年)は、「日本はリチウムイオン電池の小型分野においてはシェアを失いつつあるが、今後、さらなる高性能が求められる車載・住宅用の大型分野においては活躍が期待されている。」としていました。

ここで、車載の大型分野とは電気自動車 (EV/PHV)を意味していますが、住宅用の大型分野とは「スマートハウス」を指しています。そして、スマートハウスとは、明確に定義された意味合いはないようですが、「創エネ(太陽光発電燃料電池)、省エネ(スマート家電等)、蓄エネ(家庭用蓄電池)等の機器を備え、その全てをHEMS(Home Energy Management System)で繋いで、世帯のエネルギーの流れを「見える化」している住宅スマートハウスとするケースが多い」と説明しています。持続可能な社会を志向するときの“環境とエネルギー”のあり方という関心からすると興味尽きない話題ですが、これ以上の具体化は今後に託されていたようです。

 

ⅳ そのほか、リチウムイオン電池の用途別ニーズに関する今後の展望に関して、公表されている文献のほとんどは、電気自動車(EV)を中心に2020年代リチウムイオン電池市場が成長するとの見通しを述べるにとどまっているようです。しかし、よく見ると、吉野さんは電気自動車を明示してはいますが、次のように、電気自動車による地球環境問題解決に対する大きな貢献を指摘していたのです。

小型・軽量なリチウムイオン電池の発明と商品化は、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンなどのIT機器の世界的普及に大きな貢献をしてきました。さらに、これからは電気自動車などによって、地球環境問題の解決に大きな貢献をしていくという責務を負っています。われわれ日本の研究者は、今後もこの分野で世界の研究をリードしていきたいと考えています。

 

ⅴ なお、日本エコノミックセンター「2019年版 リチウムイオン電池市場の実態と将来展望」(2019年8月。以下、エコノミックセンター「2019年版 実態と将来展望」)は、車載用リチウムイオン電池以外に、「リチウムイオン電池市場の動向と展望」を調査項目の一つに挙げ、その「用途別リチウムイオン電池世界市場推移予測/シェア」において、民生用、産業・業務用、住宅用、電力貯蔵用別に見た「リチウムイオン電池メーカーシェア(数量・金額)」や「世界市場推移・予測(容量・金額)」などについて調査結果を述べています。

それを読めば、用途別に見た世界市場の推移やシェア等に関する貴重な情報が分かると思います。残念なことに、レポートの本体は7万円から10万円近くするため、入手・閲覧できていません。目次などについては、下記アドレスを参照ください。 http://www.ssk21.co.jp/repo/R_R02N0176.html

 

以上のとおり、用途別に見たリチウムイオン電池(LIB)のニーズの動向やシェアの

推移は、小型民生用は市場規模は大きいが需要は飽和状態気味であること、EVやPHVなどの電気自動車向けは、その拡大を予想する見方がほとんどであること、そして、定置式の電力貯蔵用については、再生可能エネルギー発電システムの増加と結び付けて再生可能エネルギーの貯蔵を展望する見解があり、環境問題への対応を含む先進先端の領域でわが国の活躍と貢献が期待されていることに留意しておきたいと思います。(つづく)