ふるさと直方フォーラム

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大規模蓄電システム⑴  環境エナジータウン直方のための政策選択メモ⑧ 2020.5.12

4 個々の環境エナジーについて一般人目線で政策選択に役立てたいメモ

 (1) リチウムイオン電池 

  イ 車載用リチウム電池

  ロ 家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池(前回まで)

  ハ 大規模蓄電システム(今回)

 

ハ 大規模蓄電システム

 ㈠ 国内最大規模109万個リチウムイオン電池による蓄電池施設

 この施設は福島県南相馬市にある東北電力の変電所の中にあり、2016年から実証実験を行っているそうです。蓄電する意義と効果について、私は太陽光発電パネルを設置している家庭など、電力消費者の側についてしか知りませんでしたから、電圧の昇降を担当する変電所で蓄電に関する実証実験をしているというのは、不勉強でしたが新しい情報です。

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クリーム色のコンテナボックス80台が並び、コンテナの中には手のひらサイズのリチウムイオン電池109万個が入っている。リチウムイオン電池がひらく未来とは? NHK2019.12.10

NHKの記事(リチウムイオン電池がひらく未来とは?2019.12.10)を参照しますと、電力会社が太陽光や風力などの自然エネルギーを大規模に利用して電気を供給しようとするとき、消費者側が太陽光パネルで発電し売電する場合と同じように発電量と使用量のバランスをとる必要があるようです。 

この点、東北電力の担当者は実証実験の結果について、「需給バランスに寄与できる能力があることを確認した。今後、こういった大規模な蓄電システムが普及することによって、再生可能エネルギーの導入をさらに拡大していくことができると期待している」と述べています。そして、「送配電の系統にリチウムイオン電池を組み込むことは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの拡大に重要な意義がある」との専門家の意見を紹介しています。 

ここでは、蓄電するということを、家庭など消費する側だけでなく、発電する側でも極めて大規模な形態で進めようとしていること、そして、それは太陽光や風力など再生エネルギーの活用に大きな道を拓こうとしているものであることを確認しておきたいと思います

 (ここではこれ以上掘り下げませんが、この太陽光や風力などによる再生可能エネルギーの獲得とリチウムイオン電池の組み合わせこそは、石炭、石油、原子力と展開してきたエネルギー供給の歴史的な転換になるものだと私は確信を強めています。)

家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池(2) 環境エナジータウン直方の政策選択メモ⑦  2020.5.11

ところで、昨年夏から秋にかけ千葉県などで自然災害のため長期の停電を余儀なくされた地域が続出したことがありました。確かあの頃だったと思いますが、リチウムイオン電池を動力源として装備したバスを停電している場所に移動し、電源として利用できるという記事を読んだ記憶があります。給水車のように「給電車」が移動して来て充電してくれるというわけですね。

 それだけでなく、一般家庭でも太陽光発電パネルを設置していれば、リチウムイオン電池の蓄電設備を購入すると、停電したときに防災用電源として活用できると宣伝されていたように思います。

自家消費向けの太陽光発電のパネルですから持ち運びモバイルではなく、家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池です。セールスに来た業者が取り扱っている自家消費用固定式リチウムイオン電池には3つのタイプがありますが、どれもコンパクトな箱型で、標準的なものでタテ70センチ、横45センチ、厚さ15センチ位です。

つまり、太陽光パネル発電した電気を発電と同時に使うことはもちろんできますが、それだけでなくリチウムイオン電池を使った蓄電設備を設置しておき、太陽光パネルで発電した電気を貯めておいて好きなタイミングで使う方がお得ですよというセールスです。結果としてリチウムイオン電池の購入家庭が増えているようです。これには以下のような背景事情もあります。

ご承知の方も多いと思いますが、2009年11月にスタートした太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)は2019年11月より順次契約が終了しています。そのため、発電した電気は安い値でしか買ってもらえなくなり、一般家庭の売電収入は大幅にダウンすることになりました。

 私が関東の古河市に住んでいるとき、脱サラした人で売電収入を見込んで郊外に空き地を買い太陽光発電パネルを設置している人がいました。固定価格買取制度(FIT)が終了するためだったと思いますが、彼は「こんなことでは原発から太陽光発電への切り替えが進むはずがない」と怒っていました。太陽光パネルの設置は誤算だったというぼやきです。

私の場合、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災の約1年後に自宅を建てたのですが、そのときに一般家庭標準の太陽光パネル3kwを設置し、以来、高い価格で買い取りしてもらってきました。売電による収入は夏場で毎月1万円ちょっと、晩秋から冬の間は8千円弱程度だったように思います。しかし、買い取り終了後の今年になってからの振込額は月1千円ちょっとです。年間にすると10万円位の減収です。

そして、私が支払っている電気代は、オール電化ですが、夏場でだいたい毎月1万円ちょっと、それが秋は1.5万円で、冬は2万円を数千円オーバーします。ですから、太陽光パネルで発電した電気を貯めておいて好きなタイミングで使うことが可能なら、その方が得かもしれないと思えてくるのです。

そこで、リチウムイオン電池の設置費用次第になるかと思いますが、これが今のところ100万から200万円近くしているようですが、もっと普及し、量産化されて50万円以下に安くなり、全体的に見て経済的に合理的な選択ということになれば、太陽光パネルを設置している一般家庭を中心にリチウムイオン電池を使った蓄電が全国的に普及していくかと思われるのです。

 ※補足

一般家庭で固定して利用する固定式リチウムイオン電池については以上のとおりです。また、電力会社に売電するための施設ではありませんが、事業所の敷地内にかなり大規模に蓄電システムを設置し、事業活動に利用するものもかなりあるようです。

たとえば、「加西グリーンエナジーパーク」はハイブリッド車などに使うリチウムイオン二次電池の生産拠点ですが、2010年10月のスタート時からリチウムイオン電池を使った容量1.5MWh(一般家庭の一日の電力消費量の150世帯分相当)の蓄電システムを事業活動に実際に使用しています。

 すなわち、出力1MWの太陽光発電システムを使って発電し、余った電力を蓄電池に貯め、太陽電池の出力が一時的に低下したときなど、蓄電池から電力を補完する仕組みです。また、価格の安い深夜電力(系統電力)で充電し、昼間の電力として利用するということもしています。三洋電機の社長は「大型蓄電池は2015年には1兆円、2020年には2兆円以上の市場規模が見込まれる。個人的にはこの倍の市場規模になる」と見込んでいます(以上すべて2010年10月時点の情報で「加西グリーンエナジーパーク」で検索するとたくさんヒットします)。 

家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池(1) 環境エナジータウン直方の政策選択メモ⑥ 2020.5.10

4 個々の環境エナジーについて一般人目線で政策選択に役立てたいメモ

   (1) リチウムイオン電池 

    イ 車載用リチウム電池(前回まで)

  ロ 家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池(今回)

  ハ 大規模蓄電システム(次回)

 

 ロ 家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池 

今日は、車載用や持ち運びモバイルではなく、家庭などに固定して利用する固定式リチウムイオン電池を取り上げます。ノーベル化学賞受賞の吉野さんが「小型民生用から車載用・大規模蓄電システムへ」と述べておられたことに倣って、前回までの車載用リチウム電池のあとは、大規模蓄電システムを予定していました。

    しかし、リチウムイオン電池について勉強している間に、固定式リチウムイオン電池がかなり普及してきていることを知りました。そこで、一般家庭で使用されているリチウムイオン電池の例を先に取り上げて話を進める方が、私自身にとっても、また読んでくださっている多くの方にとっても、リチウムイオン電池を身近に感じて理解しやすいかと思います。 

最近、リチウムイオン電池を購入する家庭が増えているそうです。実は私の家にも今年初め、スマート蓄電システムのセールスがありました。みなさんは《電気は買ったり売るよりも、創って使う方がお得な時代》のキャッチフレーズを見かけたことはありませんか。

昼間、太陽光発電のパネル(「太陽光パネル」はほかに「太陽電池パネル」や「太陽電池板」と呼ばれることもありますが、どれも同じものを指しています)で発電した電力を溜め(蓄電)、夜間や災害で停電した際の防災用電源として活用する「自家消費」を推奨しています。 

ネットを利用しているときたまたまですが、ディスプレイの隅に「卒FIT後は蓄電池の導入がおすすめ」の文字が眼にとまりました。写真と図を使い、分かりやすい文章で示してくれています。民間企業のPR画面ですが、引用しておきます。

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「あんしん太陽光発電エコの輪」https://www.taiyo-co.jp/service/storage-battery/

 (つづく)

 

 

 

 

 

リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し⑷ 環境エナジータウン直方のための政策選択メモ ⑤ 2020.5.9

二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し

では、上記で検討したようなEVの成長性を左右する要因があるとき、それらを受けてEVは現実にどのような展開を見せるでしょうか。自動車ショーの展示が予感させるもの、および政府の現状認識と目標を紹介しておきます。

 ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

 

毎年恒例欧州最大のジュネーブ国際自動車ショーが2019年3月スイスジュネーブで開催されましたが、これまではパワフルな高級レーシングカーや、ガソリンを大量消費するスポーツ用多目的車(SUV)などの新モデルが発表されることが多かったが、2020年からのCO2排出削減目標が厳格化されたため、今回はメーカー各社こぞってEVの出展を充実させたそうです。

 そして、欧州カーオブザイヤーに輝いたのはジャガー初の電気自動車「Iペース(I-Pace)」に贈られています(「ジュネーブ自動車ショー、主役はEV 欧州排ガス規制厳格化を前に各社アピール」、AFP2019年3月6日)

 

また、2年に1度開かれる自動車の祭典、東京モーターショーでも市販予定のEVの展示に力を入れる日系メーカーが目立ち、日本市場にもEVが本格的に普及する時代の到来を予感させると報じられています(「日本市場にEVの時代到来か 東京モーターショー開幕」朝日新聞HP、2019年10月24日)。

 

ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標

では、わが国におけるEV普及の現状や将来の見通しはどうなっているでしょうか。国土交通省経済産業省は「EV/PHV普及の現状」(2019年3月)を公表しています。

 それによりますと、2017年度の新車販売台数(実績)は435万台ですが、そのうちEVは2.4万台で0.55%です(PHVは3.4万台で0.78%です)。そして、2030年度の目標はEVとPHVを一つにまとめていますが、全体の2~3割と20倍前後の目標になっています(図参照)。

 地球温暖化の現状と脱CO2対策について、トランプ政権などの逆方向の動きはありますが、世界の大勢は「電気」が次世代自動車のエネルギーの中心になると理解し、その方向に向けて行動していることは間違いなさそうです。

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国土交通省経済産業省 日本の次世代自動車の普及目標と現状(EV/PHV普及の現状について) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制 電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える(3) 環境エナジータウン直方の政策選択メモ④ 2020.5.3

   ⅱ EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制

    今日、自然現象として異常気象と自然災害があること、そしてこの異常気象と自然災害はCO2増による温暖化によってもたらされた気候変動であると受け止めるのが世界の大勢です。米国トランプ政権がパリ協定から離脱して否定していますが、この異常気象に対して適切な対策をとること、その一環としての自動車排気ガスに対する規制強化に反対することは、もはや時代の要請に棹差す非科学的なものと受け取られるようになったと思います。

    したがつて、世界の自動車メーカーは、電動化などCO2フリーな車の開発へと大きく舵を切ったと言えそうですし、リチウムイオン電池はさらに性能をアップさせながらその供給量を増やしていくはずです。

    そこで以下では、EU、中国、そして米国における自動車CO2排出規制の概要を紹介し、上記の認識が間違っていないことを確認します。

    ①EUの排ガス規制

 なんといっても、EUの排ガス規制が強烈な衝撃をもたらしたように思います。Reuterなどの電子版記事の一部を紹介しますと次のようです。

(EUが新車のCO2排出量を削減へ、2030年までに37.5% 、AFPBB News 2019年3月28日。2019年9月15日 欧州自動車メーカー、排ガス規制対応は「待ったなし」Reuters Staffほか)。

 EUの排ガス規制は乗用車の95%分に対し、1キロ走行当たりのCO2排出量を2020年までに現行の120.5グラムから95グラムに削減するよう定めている。21年には全ての新しい乗用車が基準への適合を義務付けられる(注 三井物産戦略研究所によると、ガソリン車の燃費に直すと1リットルあたり24.4キロメートルとなる)。またメーカーは排ガス排出量を25年までに2021年目標比で15%、30年までに37.5%、新車の小型商用車では31%削減することも決定している。

 これに従わなかった場合、メーカー側は最大10億ユーロの巨額の罰金を科される可能性があるが、2018年時点で新車登録にEVが占める割合はわずか1.3%とする調査報告がある。また、ドイツのあるコンサルタント会社の推計によると、排ガス規制の目標達成には21年までにEV乗用車のシェアを3倍の6%に、ハイブリッド車(HV)のシェアを5倍の5%に引き上げる必要があるが、EVとHVを合わせた2019年上半期の販売は前年同期比35%増にとどまっていて、規制基準をクリアするのは困難になっている。 

 

 最後に指摘されている規制が厳格であることの影響については、「独フォルクスワーゲンダイムラーも達成は厳しい。達成できそうなのはトヨタなど日系勢ぐらいだ」との見方を紹介するものもあります(後掲・大西綾他1名)。

 

 ②中国の排ガス規制

中国政府は大気汚染対策として「青空を守る戦い」を実施しており、そのために自動車排ガスによる環境汚染防止に取り組んでいます。中国の自動車に対する環境規制は燃費低減の成果に応じて排ガスを排出できる枠(クレジット)を算出するなどでして簡潔に述べることはできませんが、重要な一部を紹介すると次のようです。

(富岡 恒憲「中国環境規制の強化ショック、間に合うか欧州勢 簡易HEVは実質23年まで」、日経クロステック/日経Automotive 2020.04.08)。

 中国政府は2019年からは中国国内で自動車を3万台以上生産もしくは輸入する企業に対して、一定割合以上の電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)といった新エネルギー車(NEV)の生産と販売を義務付ける制度を導入している。

 なお、中国政府は25年には国内の新車販売に占める新エネルギー車の比率を25%にする目標を掲げていまして、「そのうちEVの割合は8割ほど、つまり新車販売のうち2割がEVになる」との見方を紹介する記事があります(後掲・大西綾他1名)

 

 ③米国の排ガス規制

 EVといえばテスラの名が真っ先に思い浮かぶ米国ですが、ご承知のとおり、環境規制先進地域のカリフォルニア州などとトランプ大統領連邦政府が規制権限の有無をめぐって争っています。この件についてはまだ連邦最高裁での決着はついていないようですが、米国における状況についてある記事は要旨次のように紹介しています。

(大西 綾他 1名「自動車産業に試練の2020年 環境規制が生む世界の分断」、日経ビジネス2020年1月1日)。

 米国では今、燃費規制をめぐってカリフォルニア州とその他14州と米政権が対立している。連邦政府は燃費基準の緩和により、部品開発をはじめとしたコストが不要となり、新車価格が約2000ドル下がると試算。車体価格の値下がりにより米国内の販売台数が2029年までに合計100万台増加するという。また、州が独自に定める燃費基準や省エネルギー車の導入を促すゼロ・エミッション車(ZEV)規制も廃止する。

 環境負荷の低減で先頭に立ってきたカリフォルニア州は、販売数の一定割合をEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)にすることを義務付ける独自規制を持ち、約10州が同様の制度を導入している。カリフォルニア州とそれ以外の13州からなる「反トランプ派」の州は米国市場の約3割を占めると言われ、「トランプ案」阻止のために政府を提訴する意向を表明している。

 自動車メーカーの立場の隔たりも明らかになりつつある。トヨタや米ゼネラル・モーターズGM)などは政権側を支持する方針を表明したが、米フォード・モーターやホンダら4社はカリフォルニア州と排出ガス削減の共同基準の導入で合意した。

 今後、カリフォルニア州は政権方針を支持するメーカーからの公用車購入を停止する意向だ。世界的に見ても電動化の流れは避けられず、中国に次ぐ巨大市場の動向は自動車産業全体の方向性にも関わる。

 (次回、「二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し」に続きます)

電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える⑵ 環境エナジー直方の政策選択メモ③ 2020.4.30

 

(1) リチウムイオン電池

 イ 車載用リチウム電池 (前回) 

  一 EVの成長性を左右する主な要因とその検討 (今回)

  ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

  ⅱ 欧米や中国におけるCO2排出規制 (次回、明日)

 二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し(次々回、明後

  ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

  ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標

 

一  EVの成長性を左右する主な要因とその検討

 EVの成長性を左右する主な要因は、走行距離(航続距離)や充電時間の長さと値段(コスト)、それに欧米や中国のCO2排出量規制と思います。もちろん、ガソリン車やディーゼル車などが排出量規制にどこまで対応できるかや政府による補助金の支援、それに燃料電池自動車(FCV)の普及なども一定程度影響します。これらについて、以下検討します。

 ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

 EVは走行距離(航続距離)や充電時間の長さに課題があり、値段も高いと言われてきました。それは現在も、そして今後も妥当することでしょうか。

  ① EVというと、なんといってもテスラが有名ですが、そのHPを見ると(https://www.tesla.com/ja_jp/models、2020年4月22日)MODEL Sの航続距離(WLTP)は610km、価格は10,450,000円でエコカー減税を受けて9,664,300円です。航続距離が610kmあれば大阪から東京や福岡まで途中充電しなくとも行けるので十分かと思いますが、確かに高額です。なお、テスラ社は「7日以内もしくは走行距離1600km以内(いずれか早い方)であれば、車を返却し全額返金を受けることができます。」と自信を示しています。 

 ② 国内では日産リーフが一番ポピュラーでしょうが、そのHPを見てみますと(2020年4月24日)、62kWhバッテリー搭載車の航続距離は458km(WLTCモード)と570km(JC08モード)でして「航続距離を気にすることなく使用できます」とうたっています(40kWhバッテリー搭載車だとそれぞれ322kmと400kmです)。しかも、バッテリー容量低下の抑制や耐久性の向上などによりバッテリーの高寿命化を実現したということで、バッテリー容量は「8年160,000km」の保証付きです。

 そして、価格は62kWhバッテリー搭載車で約440万から500万(40kWh搭載車だと約330万から420万)です。なお、日産リーフはクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金の対象で、40kWh駆動用バッテリーの場合だと42万の補助があって約291万になるようです。

   ※ この記事をアップした4月30日、明日からは閉鎖するため当分、利用できなくなるテニスコートに行きました。その帰り、私の隣に停まっていたのが日産リーフだったので、利用状況を尋ねてみました。

 すると、バッテリーだけで走れるのはだいたい200km、自宅でも充電できるが、ホームセンタなど充電できるところが近隣に5,6ケ所あり、新車購入のとき日産からもらったカード(毎月2000円必要)を使って充電できるので自宅で充電することはないということでした。50歳台の中年夫婦ですが、奥さんは「県外まで遠出することが時々あるけれど、それを含めて月に2000円しか燃料費がかからないのは随分魅力ですね」と、超満足という感じでした。

 ③ ところで、昨年10月に開催された東京モーターショーで発表された「ホンダe」は2020年秋頃の国内発売が予定されていますが、30分で約80%の充電が可能、航続距離はフル充電で220キロです。また、マツダの「MX―30」は200キロ弱です。そして、車両本体価格はどちらもまだ発表されていないようですが、「ホンダe」は補助金を含めて実質350万円程度、マツダ「MX―30」は420万円程度と推定されています。

 ④ さらに、2020年代前半には製造技術が確立し、30年ごろには1回の充電で現在の2倍以上にあたる1000キロメートルの走行も夢ではないとしてEVについて次のような予想をする新聞記事があります(日本経済新聞2019/12/27)。

203×年の連休初日。あなたは東京から大阪まで旅行することに決めた。電気自動車を自宅の電源につなぐと、わずか10分で80%まで充電できた。あとは大阪まで向かうだけだ。全固体電池を積んだ車体は急速充電ができ、1回の充電で1000キロメートルも走る。電気自動車は充電がわずらわしく、街中でしか乗れないと話していたのが懐かしい。家が停電のときは、電気自動車の電気を使い回す。

 この日経の記事はトヨタやかなりの大学研究者がリチウムイオン電池のさらなる性能アップを目指して研究と開発に取り組んでいることを紹介し、全体の状況について次のようにまとめています。

「次世代のリチウムイオン電池である「全固体電池」が電気自動車(EV)を一変すると期待を集めている。2020年代前半には製造技術が確立する見通しで、30年ごろには1回の充電で現在の2倍以上にあたる1000キロメートルの走行も夢ではない。・・(中略)・・・ある調査によると、全固体電池の市場は35年に2兆7千億円を超える。吉野氏は12月のノーベル賞受賞記念講演で「リチウムイオン電池が電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及する未来社会」を紹介した。全固体電池にかかる期待は大きい。」

 ⑤ 果たして、みなさんが一番気にしている航続距離ですが、多数の人にとっては何キロくらいが必要でしょうか。1度の給油で1000キロ近くを走るハイブリッド車もあるようですが、それが一般多数のニーズでしょうか。

 私の場合、プリウスプラグイン・ハイブリッド(PHV)ですが、1回充電するとだいたい60キロ・市街地で往復2時間の範囲内ですと、電池のみで走れる感じです(電池がなくなると自動的にガソリンで走ります)。なにやかやと野暮用がありほとんど毎日この程度の距離を走っていますが、自宅から40㍍のところにある給油所に行って給油することは半年に一度もないくらいです。普段の行動範囲ではガソリンを消費することがほとんどなく、毎日帰宅後の充電で済んでいるからです。

 ですから、給油所入り口のガソリン価格の掲示我関せずで眼が行きませんし、逆にときどき車内のガソリンメータを見て、「もう半年以上もメーターの位置が変わってないし、ガソリンが劣化する可能性があるから、そろそろ遠出して使い切るほうがいいかもな」と話すくらいです。そういうことですので、満タンにすると50リッター以上入ったと思いますが、この1年くらいは15リッター位しか給油しなくなりました。なお、充電するために電気代が上がったことに気づかない程度でして月に5千円かかっていないことは間違いありません。 

 さて、私の場合は航続距離60キロで足りるのですが、平均70㌔/hで走るとして約3時間走行できる200キロあれば足りないでしょうか。最近は街中近くの大型商業施設 や電気店、ホテルを含め、郊外にある道の駅などあちこちで充電スタンドを見かけます。遠出をするときには、高速道路のSA・PAで2、3時間に1度休憩を兼ねて充電することにできないでしょうか。車両価格が高いというのも、電気代は上記のとおりですから、月に1万円、年に12万円、燃料費は電気自動車の方が安く済むとして、5年で60万円になりますから、それ位で購入時の差額は帳消しできそうです。なお、家庭で充電するための手間は充電プラグを付けたり外したりだけですから合わせて1分くらいです。(つづく)

電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える⑴ 環境エナジー直方の政策選択メモ② 2020.4.29

4 個々の環境エナジーについて一般人目線で政策選択に役立てたいメモ

 (1) リチウムイオン電池 (以上、前回)

 

イ 車載用リチウム電池

 車載用リチウム電池の代表はもちろん、動力源にリチウムイオン電池を使用している電気自動車(EV)です。そこで、EVの今後の動向を素人なりに占ってみることにします。

 もちろん、どのメーカーのEVがよく売れそうかといった関心からではなく、EV売れ行きの動向がリチウムイオン電池や周辺機器に対する需要に大きな影響を及ぼすからです。もっとハッキリ言うなら、「これからEVが増えていくなら、リチウムイオン電池はもちろんだが、他に周辺機器を含めてどんな新しい需要が生まれるか」を考える問題意識ということです。図1を参照しながら考えたいと思います。

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図1  EVの基本的な仕組み   国立環境研究所HP「環境展望台」・電気自動車(EV)

  なお、私のマイカーは2年前からプリウスプラグイン・ハイブリッド(PHV)です。PHVもリチウムイオン電池を使用していますが、動力源に占めるリチウムイオン電池の比重の大きさという点で、ここではEVに焦点をあてて検討することにします。

 以下の順序と構成ですが、長い検討になっていますので目次として示しておきます。

 明日以降、数回続きます。

 

一 EVの成長性を左右する主な要因とその検討

 ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

 ⅱ 欧米や中国におけるCO2排出規制

二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し

 ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

 ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標