二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し
では、上記で検討したようなEVの成長性を左右する要因があるとき、それらを受けてEVは現実にどのような展開を見せるでしょうか。自動車ショーの展示が予感させるもの、および政府の現状認識と目標を紹介しておきます。
ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来
毎年恒例欧州最大のジュネーブ国際自動車ショーが2019年3月スイスジュネーブで開催されましたが、これまではパワフルな高級レーシングカーや、ガソリンを大量消費するスポーツ用多目的車(SUV)などの新モデルが発表されることが多かったが、2020年からのCO2排出削減目標が厳格化されたため、今回はメーカー各社こぞってEVの出展を充実させたそうです。
そして、欧州カーオブザイヤーに輝いたのはジャガー初の電気自動車「Iペース(I-Pace)」に贈られています(「ジュネーブ自動車ショー、主役はEV 欧州排ガス規制厳格化を前に各社アピール」、AFP2019年3月6日)
また、2年に1度開かれる自動車の祭典、東京モーターショーでも市販予定のEVの展示に力を入れる日系メーカーが目立ち、日本市場にもEVが本格的に普及する時代の到来を予感させると報じられています(「日本市場にEVの時代到来か 東京モーターショー開幕」朝日新聞HP、2019年10月24日)。
ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標
では、わが国におけるEV普及の現状や将来の見通しはどうなっているでしょうか。国土交通省と経済産業省は「EV/PHV普及の現状」(2019年3月)を公表しています。
それによりますと、2017年度の新車販売台数(実績)は435万台ですが、そのうちEVは2.4万台で0.55%です(PHVは3.4万台で0.78%です)。そして、2030年度の目標はEVとPHVを一つにまとめていますが、全体の2~3割と20倍前後の目標になっています(図参照)。
地球温暖化の現状と脱CO2対策について、トランプ政権などの逆方向の動きはありますが、世界の大勢は「電気」が次世代自動車のエネルギーの中心になると理解し、その方向に向けて行動していることは間違いなさそうです。