ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制 電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える(3) 環境エナジータウン直方の政策選択メモ④ 2020.5.3

   ⅱ EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制

    今日、自然現象として異常気象と自然災害があること、そしてこの異常気象と自然災害はCO2増による温暖化によってもたらされた気候変動であると受け止めるのが世界の大勢です。米国トランプ政権がパリ協定から離脱して否定していますが、この異常気象に対して適切な対策をとること、その一環としての自動車排気ガスに対する規制強化に反対することは、もはや時代の要請に棹差す非科学的なものと受け取られるようになったと思います。

    したがつて、世界の自動車メーカーは、電動化などCO2フリーな車の開発へと大きく舵を切ったと言えそうですし、リチウムイオン電池はさらに性能をアップさせながらその供給量を増やしていくはずです。

    そこで以下では、EU、中国、そして米国における自動車CO2排出規制の概要を紹介し、上記の認識が間違っていないことを確認します。

    ①EUの排ガス規制

 なんといっても、EUの排ガス規制が強烈な衝撃をもたらしたように思います。Reuterなどの電子版記事の一部を紹介しますと次のようです。

(EUが新車のCO2排出量を削減へ、2030年までに37.5% 、AFPBB News 2019年3月28日。2019年9月15日 欧州自動車メーカー、排ガス規制対応は「待ったなし」Reuters Staffほか)。

 EUの排ガス規制は乗用車の95%分に対し、1キロ走行当たりのCO2排出量を2020年までに現行の120.5グラムから95グラムに削減するよう定めている。21年には全ての新しい乗用車が基準への適合を義務付けられる(注 三井物産戦略研究所によると、ガソリン車の燃費に直すと1リットルあたり24.4キロメートルとなる)。またメーカーは排ガス排出量を25年までに2021年目標比で15%、30年までに37.5%、新車の小型商用車では31%削減することも決定している。

 これに従わなかった場合、メーカー側は最大10億ユーロの巨額の罰金を科される可能性があるが、2018年時点で新車登録にEVが占める割合はわずか1.3%とする調査報告がある。また、ドイツのあるコンサルタント会社の推計によると、排ガス規制の目標達成には21年までにEV乗用車のシェアを3倍の6%に、ハイブリッド車(HV)のシェアを5倍の5%に引き上げる必要があるが、EVとHVを合わせた2019年上半期の販売は前年同期比35%増にとどまっていて、規制基準をクリアするのは困難になっている。 

 

 最後に指摘されている規制が厳格であることの影響については、「独フォルクスワーゲンダイムラーも達成は厳しい。達成できそうなのはトヨタなど日系勢ぐらいだ」との見方を紹介するものもあります(後掲・大西綾他1名)。

 

 ②中国の排ガス規制

中国政府は大気汚染対策として「青空を守る戦い」を実施しており、そのために自動車排ガスによる環境汚染防止に取り組んでいます。中国の自動車に対する環境規制は燃費低減の成果に応じて排ガスを排出できる枠(クレジット)を算出するなどでして簡潔に述べることはできませんが、重要な一部を紹介すると次のようです。

(富岡 恒憲「中国環境規制の強化ショック、間に合うか欧州勢 簡易HEVは実質23年まで」、日経クロステック/日経Automotive 2020.04.08)。

 中国政府は2019年からは中国国内で自動車を3万台以上生産もしくは輸入する企業に対して、一定割合以上の電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)といった新エネルギー車(NEV)の生産と販売を義務付ける制度を導入している。

 なお、中国政府は25年には国内の新車販売に占める新エネルギー車の比率を25%にする目標を掲げていまして、「そのうちEVの割合は8割ほど、つまり新車販売のうち2割がEVになる」との見方を紹介する記事があります(後掲・大西綾他1名)

 

 ③米国の排ガス規制

 EVといえばテスラの名が真っ先に思い浮かぶ米国ですが、ご承知のとおり、環境規制先進地域のカリフォルニア州などとトランプ大統領連邦政府が規制権限の有無をめぐって争っています。この件についてはまだ連邦最高裁での決着はついていないようですが、米国における状況についてある記事は要旨次のように紹介しています。

(大西 綾他 1名「自動車産業に試練の2020年 環境規制が生む世界の分断」、日経ビジネス2020年1月1日)。

 米国では今、燃費規制をめぐってカリフォルニア州とその他14州と米政権が対立している。連邦政府は燃費基準の緩和により、部品開発をはじめとしたコストが不要となり、新車価格が約2000ドル下がると試算。車体価格の値下がりにより米国内の販売台数が2029年までに合計100万台増加するという。また、州が独自に定める燃費基準や省エネルギー車の導入を促すゼロ・エミッション車(ZEV)規制も廃止する。

 環境負荷の低減で先頭に立ってきたカリフォルニア州は、販売数の一定割合をEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)にすることを義務付ける独自規制を持ち、約10州が同様の制度を導入している。カリフォルニア州とそれ以外の13州からなる「反トランプ派」の州は米国市場の約3割を占めると言われ、「トランプ案」阻止のために政府を提訴する意向を表明している。

 自動車メーカーの立場の隔たりも明らかになりつつある。トヨタや米ゼネラル・モーターズGM)などは政権側を支持する方針を表明したが、米フォード・モーターやホンダら4社はカリフォルニア州と排出ガス削減の共同基準の導入で合意した。

 今後、カリフォルニア州は政権方針を支持するメーカーからの公用車購入を停止する意向だ。世界的に見ても電動化の流れは避けられず、中国に次ぐ巨大市場の動向は自動車産業全体の方向性にも関わる。

 (次回、「二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し」に続きます)