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リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し⑷ 環境エナジータウン直方のための政策選択メモ ⑤ 2020.5.9

二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し

では、上記で検討したようなEVの成長性を左右する要因があるとき、それらを受けてEVは現実にどのような展開を見せるでしょうか。自動車ショーの展示が予感させるもの、および政府の現状認識と目標を紹介しておきます。

 ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

 

毎年恒例欧州最大のジュネーブ国際自動車ショーが2019年3月スイスジュネーブで開催されましたが、これまではパワフルな高級レーシングカーや、ガソリンを大量消費するスポーツ用多目的車(SUV)などの新モデルが発表されることが多かったが、2020年からのCO2排出削減目標が厳格化されたため、今回はメーカー各社こぞってEVの出展を充実させたそうです。

 そして、欧州カーオブザイヤーに輝いたのはジャガー初の電気自動車「Iペース(I-Pace)」に贈られています(「ジュネーブ自動車ショー、主役はEV 欧州排ガス規制厳格化を前に各社アピール」、AFP2019年3月6日)

 

また、2年に1度開かれる自動車の祭典、東京モーターショーでも市販予定のEVの展示に力を入れる日系メーカーが目立ち、日本市場にもEVが本格的に普及する時代の到来を予感させると報じられています(「日本市場にEVの時代到来か 東京モーターショー開幕」朝日新聞HP、2019年10月24日)。

 

ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標

では、わが国におけるEV普及の現状や将来の見通しはどうなっているでしょうか。国土交通省経済産業省は「EV/PHV普及の現状」(2019年3月)を公表しています。

 それによりますと、2017年度の新車販売台数(実績)は435万台ですが、そのうちEVは2.4万台で0.55%です(PHVは3.4万台で0.78%です)。そして、2030年度の目標はEVとPHVを一つにまとめていますが、全体の2~3割と20倍前後の目標になっています(図参照)。

 地球温暖化の現状と脱CO2対策について、トランプ政権などの逆方向の動きはありますが、世界の大勢は「電気」が次世代自動車のエネルギーの中心になると理解し、その方向に向けて行動していることは間違いなさそうです。

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国土交通省経済産業省 日本の次世代自動車の普及目標と現状(EV/PHV普及の現状について) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制 電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える(3) 環境エナジータウン直方の政策選択メモ④ 2020.5.3

   ⅱ EU、中国、そして米国におけるCO2排出規制

    今日、自然現象として異常気象と自然災害があること、そしてこの異常気象と自然災害はCO2増による温暖化によってもたらされた気候変動であると受け止めるのが世界の大勢です。米国トランプ政権がパリ協定から離脱して否定していますが、この異常気象に対して適切な対策をとること、その一環としての自動車排気ガスに対する規制強化に反対することは、もはや時代の要請に棹差す非科学的なものと受け取られるようになったと思います。

    したがつて、世界の自動車メーカーは、電動化などCO2フリーな車の開発へと大きく舵を切ったと言えそうですし、リチウムイオン電池はさらに性能をアップさせながらその供給量を増やしていくはずです。

    そこで以下では、EU、中国、そして米国における自動車CO2排出規制の概要を紹介し、上記の認識が間違っていないことを確認します。

    ①EUの排ガス規制

 なんといっても、EUの排ガス規制が強烈な衝撃をもたらしたように思います。Reuterなどの電子版記事の一部を紹介しますと次のようです。

(EUが新車のCO2排出量を削減へ、2030年までに37.5% 、AFPBB News 2019年3月28日。2019年9月15日 欧州自動車メーカー、排ガス規制対応は「待ったなし」Reuters Staffほか)。

 EUの排ガス規制は乗用車の95%分に対し、1キロ走行当たりのCO2排出量を2020年までに現行の120.5グラムから95グラムに削減するよう定めている。21年には全ての新しい乗用車が基準への適合を義務付けられる(注 三井物産戦略研究所によると、ガソリン車の燃費に直すと1リットルあたり24.4キロメートルとなる)。またメーカーは排ガス排出量を25年までに2021年目標比で15%、30年までに37.5%、新車の小型商用車では31%削減することも決定している。

 これに従わなかった場合、メーカー側は最大10億ユーロの巨額の罰金を科される可能性があるが、2018年時点で新車登録にEVが占める割合はわずか1.3%とする調査報告がある。また、ドイツのあるコンサルタント会社の推計によると、排ガス規制の目標達成には21年までにEV乗用車のシェアを3倍の6%に、ハイブリッド車(HV)のシェアを5倍の5%に引き上げる必要があるが、EVとHVを合わせた2019年上半期の販売は前年同期比35%増にとどまっていて、規制基準をクリアするのは困難になっている。 

 

 最後に指摘されている規制が厳格であることの影響については、「独フォルクスワーゲンダイムラーも達成は厳しい。達成できそうなのはトヨタなど日系勢ぐらいだ」との見方を紹介するものもあります(後掲・大西綾他1名)。

 

 ②中国の排ガス規制

中国政府は大気汚染対策として「青空を守る戦い」を実施しており、そのために自動車排ガスによる環境汚染防止に取り組んでいます。中国の自動車に対する環境規制は燃費低減の成果に応じて排ガスを排出できる枠(クレジット)を算出するなどでして簡潔に述べることはできませんが、重要な一部を紹介すると次のようです。

(富岡 恒憲「中国環境規制の強化ショック、間に合うか欧州勢 簡易HEVは実質23年まで」、日経クロステック/日経Automotive 2020.04.08)。

 中国政府は2019年からは中国国内で自動車を3万台以上生産もしくは輸入する企業に対して、一定割合以上の電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)といった新エネルギー車(NEV)の生産と販売を義務付ける制度を導入している。

 なお、中国政府は25年には国内の新車販売に占める新エネルギー車の比率を25%にする目標を掲げていまして、「そのうちEVの割合は8割ほど、つまり新車販売のうち2割がEVになる」との見方を紹介する記事があります(後掲・大西綾他1名)

 

 ③米国の排ガス規制

 EVといえばテスラの名が真っ先に思い浮かぶ米国ですが、ご承知のとおり、環境規制先進地域のカリフォルニア州などとトランプ大統領連邦政府が規制権限の有無をめぐって争っています。この件についてはまだ連邦最高裁での決着はついていないようですが、米国における状況についてある記事は要旨次のように紹介しています。

(大西 綾他 1名「自動車産業に試練の2020年 環境規制が生む世界の分断」、日経ビジネス2020年1月1日)。

 米国では今、燃費規制をめぐってカリフォルニア州とその他14州と米政権が対立している。連邦政府は燃費基準の緩和により、部品開発をはじめとしたコストが不要となり、新車価格が約2000ドル下がると試算。車体価格の値下がりにより米国内の販売台数が2029年までに合計100万台増加するという。また、州が独自に定める燃費基準や省エネルギー車の導入を促すゼロ・エミッション車(ZEV)規制も廃止する。

 環境負荷の低減で先頭に立ってきたカリフォルニア州は、販売数の一定割合をEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)にすることを義務付ける独自規制を持ち、約10州が同様の制度を導入している。カリフォルニア州とそれ以外の13州からなる「反トランプ派」の州は米国市場の約3割を占めると言われ、「トランプ案」阻止のために政府を提訴する意向を表明している。

 自動車メーカーの立場の隔たりも明らかになりつつある。トヨタや米ゼネラル・モーターズGM)などは政権側を支持する方針を表明したが、米フォード・モーターやホンダら4社はカリフォルニア州と排出ガス削減の共同基準の導入で合意した。

 今後、カリフォルニア州は政権方針を支持するメーカーからの公用車購入を停止する意向だ。世界的に見ても電動化の流れは避けられず、中国に次ぐ巨大市場の動向は自動車産業全体の方向性にも関わる。

 (次回、「二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し」に続きます)

電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える⑵ 環境エナジー直方の政策選択メモ③ 2020.4.30

 

(1) リチウムイオン電池

 イ 車載用リチウム電池 (前回) 

  一 EVの成長性を左右する主な要因とその検討 (今回)

  ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

  ⅱ 欧米や中国におけるCO2排出規制 (次回、明日)

 二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し(次々回、明後

  ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

  ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標

 

一  EVの成長性を左右する主な要因とその検討

 EVの成長性を左右する主な要因は、走行距離(航続距離)や充電時間の長さと値段(コスト)、それに欧米や中国のCO2排出量規制と思います。もちろん、ガソリン車やディーゼル車などが排出量規制にどこまで対応できるかや政府による補助金の支援、それに燃料電池自動車(FCV)の普及なども一定程度影響します。これらについて、以下検討します。

 ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

 EVは走行距離(航続距離)や充電時間の長さに課題があり、値段も高いと言われてきました。それは現在も、そして今後も妥当することでしょうか。

  ① EVというと、なんといってもテスラが有名ですが、そのHPを見ると(https://www.tesla.com/ja_jp/models、2020年4月22日)MODEL Sの航続距離(WLTP)は610km、価格は10,450,000円でエコカー減税を受けて9,664,300円です。航続距離が610kmあれば大阪から東京や福岡まで途中充電しなくとも行けるので十分かと思いますが、確かに高額です。なお、テスラ社は「7日以内もしくは走行距離1600km以内(いずれか早い方)であれば、車を返却し全額返金を受けることができます。」と自信を示しています。 

 ② 国内では日産リーフが一番ポピュラーでしょうが、そのHPを見てみますと(2020年4月24日)、62kWhバッテリー搭載車の航続距離は458km(WLTCモード)と570km(JC08モード)でして「航続距離を気にすることなく使用できます」とうたっています(40kWhバッテリー搭載車だとそれぞれ322kmと400kmです)。しかも、バッテリー容量低下の抑制や耐久性の向上などによりバッテリーの高寿命化を実現したということで、バッテリー容量は「8年160,000km」の保証付きです。

 そして、価格は62kWhバッテリー搭載車で約440万から500万(40kWh搭載車だと約330万から420万)です。なお、日産リーフはクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金の対象で、40kWh駆動用バッテリーの場合だと42万の補助があって約291万になるようです。

   ※ この記事をアップした4月30日、明日からは閉鎖するため当分、利用できなくなるテニスコートに行きました。その帰り、私の隣に停まっていたのが日産リーフだったので、利用状況を尋ねてみました。

 すると、バッテリーだけで走れるのはだいたい200km、自宅でも充電できるが、ホームセンタなど充電できるところが近隣に5,6ケ所あり、新車購入のとき日産からもらったカード(毎月2000円必要)を使って充電できるので自宅で充電することはないということでした。50歳台の中年夫婦ですが、奥さんは「県外まで遠出することが時々あるけれど、それを含めて月に2000円しか燃料費がかからないのは随分魅力ですね」と、超満足という感じでした。

 ③ ところで、昨年10月に開催された東京モーターショーで発表された「ホンダe」は2020年秋頃の国内発売が予定されていますが、30分で約80%の充電が可能、航続距離はフル充電で220キロです。また、マツダの「MX―30」は200キロ弱です。そして、車両本体価格はどちらもまだ発表されていないようですが、「ホンダe」は補助金を含めて実質350万円程度、マツダ「MX―30」は420万円程度と推定されています。

 ④ さらに、2020年代前半には製造技術が確立し、30年ごろには1回の充電で現在の2倍以上にあたる1000キロメートルの走行も夢ではないとしてEVについて次のような予想をする新聞記事があります(日本経済新聞2019/12/27)。

203×年の連休初日。あなたは東京から大阪まで旅行することに決めた。電気自動車を自宅の電源につなぐと、わずか10分で80%まで充電できた。あとは大阪まで向かうだけだ。全固体電池を積んだ車体は急速充電ができ、1回の充電で1000キロメートルも走る。電気自動車は充電がわずらわしく、街中でしか乗れないと話していたのが懐かしい。家が停電のときは、電気自動車の電気を使い回す。

 この日経の記事はトヨタやかなりの大学研究者がリチウムイオン電池のさらなる性能アップを目指して研究と開発に取り組んでいることを紹介し、全体の状況について次のようにまとめています。

「次世代のリチウムイオン電池である「全固体電池」が電気自動車(EV)を一変すると期待を集めている。2020年代前半には製造技術が確立する見通しで、30年ごろには1回の充電で現在の2倍以上にあたる1000キロメートルの走行も夢ではない。・・(中略)・・・ある調査によると、全固体電池の市場は35年に2兆7千億円を超える。吉野氏は12月のノーベル賞受賞記念講演で「リチウムイオン電池が電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及する未来社会」を紹介した。全固体電池にかかる期待は大きい。」

 ⑤ 果たして、みなさんが一番気にしている航続距離ですが、多数の人にとっては何キロくらいが必要でしょうか。1度の給油で1000キロ近くを走るハイブリッド車もあるようですが、それが一般多数のニーズでしょうか。

 私の場合、プリウスプラグイン・ハイブリッド(PHV)ですが、1回充電するとだいたい60キロ・市街地で往復2時間の範囲内ですと、電池のみで走れる感じです(電池がなくなると自動的にガソリンで走ります)。なにやかやと野暮用がありほとんど毎日この程度の距離を走っていますが、自宅から40㍍のところにある給油所に行って給油することは半年に一度もないくらいです。普段の行動範囲ではガソリンを消費することがほとんどなく、毎日帰宅後の充電で済んでいるからです。

 ですから、給油所入り口のガソリン価格の掲示我関せずで眼が行きませんし、逆にときどき車内のガソリンメータを見て、「もう半年以上もメーターの位置が変わってないし、ガソリンが劣化する可能性があるから、そろそろ遠出して使い切るほうがいいかもな」と話すくらいです。そういうことですので、満タンにすると50リッター以上入ったと思いますが、この1年くらいは15リッター位しか給油しなくなりました。なお、充電するために電気代が上がったことに気づかない程度でして月に5千円かかっていないことは間違いありません。 

 さて、私の場合は航続距離60キロで足りるのですが、平均70㌔/hで走るとして約3時間走行できる200キロあれば足りないでしょうか。最近は街中近くの大型商業施設 や電気店、ホテルを含め、郊外にある道の駅などあちこちで充電スタンドを見かけます。遠出をするときには、高速道路のSA・PAで2、3時間に1度休憩を兼ねて充電することにできないでしょうか。車両価格が高いというのも、電気代は上記のとおりですから、月に1万円、年に12万円、燃料費は電気自動車の方が安く済むとして、5年で60万円になりますから、それ位で購入時の差額は帳消しできそうです。なお、家庭で充電するための手間は充電プラグを付けたり外したりだけですから合わせて1分くらいです。(つづく)

電気自動車(EV)の車載用リチウム電池とその周辺機器に対する新しい需要を考える⑴ 環境エナジー直方の政策選択メモ② 2020.4.29

4 個々の環境エナジーについて一般人目線で政策選択に役立てたいメモ

 (1) リチウムイオン電池 (以上、前回)

 

イ 車載用リチウム電池

 車載用リチウム電池の代表はもちろん、動力源にリチウムイオン電池を使用している電気自動車(EV)です。そこで、EVの今後の動向を素人なりに占ってみることにします。

 もちろん、どのメーカーのEVがよく売れそうかといった関心からではなく、EV売れ行きの動向がリチウムイオン電池や周辺機器に対する需要に大きな影響を及ぼすからです。もっとハッキリ言うなら、「これからEVが増えていくなら、リチウムイオン電池はもちろんだが、他に周辺機器を含めてどんな新しい需要が生まれるか」を考える問題意識ということです。図1を参照しながら考えたいと思います。

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図1  EVの基本的な仕組み   国立環境研究所HP「環境展望台」・電気自動車(EV)

  なお、私のマイカーは2年前からプリウスプラグイン・ハイブリッド(PHV)です。PHVもリチウムイオン電池を使用していますが、動力源に占めるリチウムイオン電池の比重の大きさという点で、ここではEVに焦点をあてて検討することにします。

 以下の順序と構成ですが、長い検討になっていますので目次として示しておきます。

 明日以降、数回続きます。

 

一 EVの成長性を左右する主な要因とその検討

 ⅰ 走行距離(航続距離)、充電時間の長さや高価格

 ⅱ 欧米や中国におけるCO2排出規制

二 リチウムイオン電池を使用する電気自動車(EV)の見通し

 ⅰ ジュネーブ国際自動車ショーや東京モーターショーにおける展示が予感させるEV時代の到来

 ⅱ 政府が示しているEV普及の現状と2030年度の目標

環境エナジータウン直方が取り組む環境エナジーの個別検討 環境エナジータウン直方の政策選択のためのメモ① 2020.4.21

4 環境エナジータウン直方が取り組む環境エナジーの検討

 このシリーズ初回(4月3日付)で、“環境エナジータウン直方”として取り組みを検討したい環境エナジーを列記しました。それらについての化学と物理、そして電気技術などに関する専門情報はネットなどからでも十分に得ることができます。

 今回からのシリーズは、いわゆる文系人間で上記の専門知識をまったく持たない、ごく普通の一般人が環境エナジータウン直方に取り組み、“政策選択に役立てたい”という問題意識を持って、一つ一つの環境エナジーについての認識を深めていった体験的物語として公表します。

 つまり、「将来的にこの環境エナジーに対する強い需要が見込めるか?」「環境エナジータウン直方として、企業誘致を含め、この環境エナジーを生産し供給するためのインフラ整備に取り組むべきか」といった視点です。

 そのため、化学や物理、そして電気技術などに関する高度な専門知識を駆使した分析とは程遠いものです。正確さに欠けていたり誤解など多々あるかと思います。ご指摘等をいただいて訂正補充等しますのでよろしくお願いします。

 

(1) リチウムイオン電池

 ⅰ 昨年、吉野彰さんがリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞され、改めて(初めて?)リチウムイオン電池の偉大さを知りました。

 その第一は、スマホやノートパソコンなど、使い捨ての乾電池と異なり何百回何千回も充電して繰り返し使うことができるのはリチウムイオン電池が使用されていて、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電が繰り返されるということです。

 そのうえ、充放電の繰り返しによる充電容量の低下が大変小さく、また使用しない時の電圧低下も少ないというのです。しかも、従来からある二次電池に比べて2倍以上のエネルギー密度をもっているため、携帯機器の電源の小型軽量化を実現できたとされています。また、直列につなぐと高電圧、高電流が得られ、大きな出力パワーが得られます。

(ボーイング社787型機が初めて採用したリチウムイオン・バッテリーの特徴を説明するものとして、参照、JAL「リチウムイオン・バッテリー」https://www.jal.com/ja/flight/safety/trouble/boeing787/battery/lithium_ion_battery01.html)

 

ⅱ 吉野さんのノーベル賞受賞記念講演の演題はリチウムイオン電池が電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及する未来社会」でした。

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吉野彰氏ノーベル化学賞受賞記念講演会「リチウムイオン電池が拓く未来社会」のポスター

 新聞報道などによると、吉野さんは「環境問題解決のためのエネルギー革命の時代を迎えている。環境・経済性・利便性のバランスがとれたリチウムイオン電池は電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及し、持続可能な未来社会づくりにおいて中心となる重要な役割を果たす」と話されています。

   ※ 2020年9月9日~11日、関西スマートエネルギーWeek2020が開催され、吉野さんの講演を聞く機会がありました。吉野さんは、ノーベル賞を受賞されたストックホルムの記念講演でも、リチウムイオン電池はこれまでITなどのモバイル電源として活用されてきたが、これからはサステイナブル(持続可能)な未来社会づくりに大いに貢献したいし、それができると強調しました」と話されていました。(2020.9.15追記)

 

 ここでは、リチウムイオン電池再生可能エネルギーを蓄電できること、そして持続可能な未来社会づくりにおいて中心となる重要な役割を果たすとされていることに注目しておきたいと思います。 

 

 ⅲ ノーベル化学賞受賞前の2013年11月の時点ですが、吉野さんはリチウム電池の開発初期からの30年以上を振り返って次のように述べています(―公表の副題は「小型民生用から車載用・大規模蓄電システムへ」です)。

リチウムイオン電池が成長したのは小型民生用で、そのきっかけになったのがいわゆるIT変革です。つまり、これまでは「リチウムイオン電池=IT」だったわけです。しかし、これからは車載用や大規模蓄電システムのような、次のマーケットに向かって進んでいるわけです。そういった意味で第2の出発点なんです。」

 

 ⅳ リチウムイオン電池と言うと、腕時計やスマートフォン・ノートパソコンなどポータブルな電子機器で使われているくらいは知っていましたが、車載用や大規模蓄電システムと言われてもすぐにはピンと来ません。車載用と言われたら、ハイブリッド自動車や電気自動車などで使われているものかなと思うくらいです。そこで、あやふやな私の知識や記憶などあてになりませんから、ネットで「リチウムイオン電池 小型民生用から車載用・大規模蓄電システムへ」などを検索しますと、たくさんの記事等がヒットし、そこからさらに次々と関連情報にたどり着きます。 

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リチウムイオン電池とは 充電で繰り返し使える蓄電池2019/10/9 20:17日本経済新聞 電子版

そこで、以下では吉野さんが指摘されている車載用と大規模蓄電システム、それと私が一人の生活人としてリチウム電池を認識した家庭用蓄電池に大別し、それらについて図や写真を用いて分かりやすい説明であるとか、具体的な使用例を紹介してくれている記事等を整理して適宜紹介するとともに、随時、私の初心者的な体験的認識を述べておくことにしたいと思います。

(つづく)

環境エナジータウン直方の提案! 内発的外部交流型持続的発展モデル探求の結論としての直方のまちづくり将来像⑵  2020.4.4、4.9

2 内発的外部交流型持続的発展モデルの探求が環境エナジータウン直方です。

(1)  私たちふるさと直方フォーラムまちづくりの基本として、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略略」の政策体系なども参照して、“地域のなかに成長・発展の種を見出し(内発的)、外部と交流し外部の良さを取り込みながら、みんなが参加して持続性ある発展モデルを築いていこう”という「内発的外部交流型持続的発展モデル」を掲げていました (http://内発的外部交流型持続的発展モデルの提唱 “地域のなかに未来へとつながる種を見出そう! 外部とも交流し、みんなが参加して持続性ある発展モデルを築いていこう!” 2019.6.24)

そして、この内発的外部交流型持続的発展モデルを直方の状況に当てはめて次のように提案していました。

「人口減少、財政危機、そして持続可能であることに十分留意し、福智山と遠賀川という自然環境に恵まれていること、そして福岡(博多)、北九州や筑豊筑後地区などを結ぶ交通の結節点に位置するという地理的環境にあることを直方の自己アイデンテティとして十分に認識し、これらをみんなの知恵と工夫で活かしていく」です(目標を実現する基本政策や方針の決定②-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(4)ー2019.9.7、9.16、10.9)

 (2) ところで、大塚市長は、「直方に元気を取り戻したい」「今を生きる私たちは、次代に誇れる直方を創り、しっかりと引き継がなければなりません」「このまちに生まれて良かった、住んで良かった、住み続けたいと云われるまちを、市民と共に創っていきたい」と抱負と目標を掲げています。

そして、政策を決定するときの基本方針として、『投資のないところに成長はない』との思いに立って、投資をいかに呼び込むか、どこに投資をしていくのか、民間投資を誘発するにはどうすればよいかを念頭に施策の展開を考えていく。」と述べると共に、基本政策として、『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』の3つを示していました。

さらに、『まちを豊かに』を実施する施策として「立地環境を生かしたまちづくり」に着目し、『人に夢を』を実施する施策の一つとして「夢にチャレンジしこの地で頑張りたいという若者に応えられる働く場を提供することや起業してもらえる環境整備に努めます」とし、また『産業に活力を』を実施する施策の一つ「植木地区の開発について、インターチェンジ近くに位置し、鞍手町と隣接していることなどを踏まえ、本市の産業をリードしていく産業の立地促進を図るため、整備を進めていきます」と述べています。 

※ 福岡市を中心に北九州方面と佐賀方面において、水素で発電して走行する燃料電池小型トラックを使った環境省委託の実証事業が行われていました(スマートエネルギー2020、東京ビッグサイト今年2月下旬開催)。水素システムを使った航続距離は150キロから210キロといいます。また、以前にも2016年から2018年にかけて福岡市天神地区で配送車両として運用実証されていたようです。私が知らなかっただけで、水面下で水素社会に向け着実な努力が展開されていました。しかも東京周辺でなく、福岡市から北九州方面で実証事業が行われているというのは、この地域に水素社会に対する何らかの適性が存在するからのように思われます。 

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スマートエネルギー2020、東京ビッグサイト2月26-28日開催

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福岡市を中心に北九州方面と佐賀方面を結ぶ燃料電池小型トラックを使った環境省委託の実証事業。左の地図上④の横に写真の現物では「直方市」がハッキリ見え、たくさんの人がいる東京ビッグサイトの会場で私は一人嬉しくなっていました。

(3)  ふるさと直方フォーラムも、しっかりとした経済基盤のあることが社会が成り立つ基本として不可欠であることは十分に承知していましたから、大塚市長のこうした抱負や目標などを共有させていただき、それらを実現するための具体的な計画や施策を常に最優先の重要課題として考えてきました。そして、今たどり着いた答えが“環境エナジータウン直方”という次第です。

もちろん、内発的外部交流型の「内発」には、殖産興業時代以来、筑豊炭田として石炭を産出してきたエネルギー産業地としての伝統も組み込まれています。

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“環境エナジータウン直方”に類似して連想できる「水素社会の実現に必要な低炭素水素サプライチェーン環境省HPから

3 福岡水素エネルギー戦略会議に参加してください。

「環境エナジータウン直方」についての提案はエネルギーや化学の分野に関するもので、正直に申しあげてふるさと直方フォーラムを主宰する比山節男にとってはまったくの専門外の話題です。去年の暮れから3ヶ月ほど、2月26日から28日東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek 2020」に出席するなどして勉強してきたのですが、それでもまだまだ理解不足なところや誤解しているところがあると思います。

幸い、福岡県には産学官による「福岡水素エネルギー戦略会議」が平成16年8月3日に設立され、産学官のキーパースンが参加して「水素製造、輸送・貯蔵から利用まで一貫した研究開発、水素人材育成に加え、社会実証、世界最先端の水素情報拠点の構築、水素エネルギー新産業の育成・集積に取り組む「福岡水素戦略(Hy-Lifeプロジェクト)」を推進しています。

願わくば、大塚市長ご自身でやる気のある職員を同道され、「福岡水素エネルギー戦略会議」に出席され、環境エナジータウン直方の将来像を見定めていただきたいと希望します。(続く)

 

※ 気づくのが遅れましたが、「福岡水素エネルギー戦略会議」は随分と早い時機から社会実証を進めていました。

2014年か15年頃、「福岡水素タウン」で1キロワット級の家庭用燃料電池150台を新興住宅地の戸建て住宅に設置したり、北九州市と福岡市の2カ所に水素供給ステーションを設置し、両者間に「水素ハイウェイ」を構築するというものです。ただし、「北九州水素ステーション」は、市内製鉄所で発生する年間5億m3の副生水素を利用するオフサイト型のステーション、一方、福岡市の「九州大学水素ステーション」は水を電気分解して得られる水素を利用しています。そして、「北九州水素ステーション」から約1.2キロメートルの水素パイプラインを敷設し、集合住宅や博物館、ホームセンターなどに設置した14台の定置型燃料電池に副生水素を供給して、効率的な水素供給やパイプラインの耐久性などに関するデータを収集し、技術・運用面での課題の洗い出しを行っています。また、福岡水素エネルギー戦略会議で先見性をもって的確に事務局を担っていたのは、福岡県商工部新産業振興課水素班のようで当時からの関係者の進取性には驚かされます。なお、以上の情報は、銀行業務を中心に金融サービス事業を行っている三井住友フィナンシャルグループのHPに掲載されていることも興味深いことです(「特集 水素社会は本当に実現するのか」 https://www.smfg.co.jp/responsibility/report/topics/detail108.html)。

環境エナジータウン直方の提案! 内発的外部交流型持続的発展モデル探求の結論としての直方のまちづくり将来像①  2020.4.3、5.16

 (前回の末尾で政策パッケージをお示しするとしていましたが、個別施策等に関する提案を4つほどですが先に済ませてからにします。個別施策等に関する提案は8月頃まで続く可能性があります。) 

〔提案趣旨〕

新型コロナウイルス感染が拡大を続け、外出自粛要請や政府の金融措置などでてんやわんやですが、こんなときにも・こんなときこそ、次世代30年後くらいを見据えた社会構想を描き深めておかなければ、結局のところ全体の流れに埋没してしまうと思います。

そこで、今日から10回くらいの連載予定で、ふるさと直方フォーラムは心底から万感の思いを込め、“環境エナジータウン直方”の提案をします。産業経済分野だけにとどまらず、直方が大きな「投資」をして目指す、未来志向のまちづくりビジョンの話です。

 

1 環境エナジーに着目します

(1)  ここでいう環境エナジーは、エネルギー源として「持続性」があって化石燃料原子力ではないものを指しています。たとえば次のようなものです

 ※ 化学や産業から見た専門的体系的なものではありません。後に生活体験などに即して詳しく説明します。なお、エナジーは普通には「エネルギー」という方が耳慣れているかもしれません。発音としては、エナジー(energy)は英語、エネルギー(energie)はドイツ語ですが、もちろん同じ意味です。

イ スマホや腕時計などに使用されている小型でも大容量の電気を充電することができ、充電・放電を繰り返しても劣化しにくいリチウムイオン電池

 

ロ 自家消費型太陽光発電システムにおいて太陽光パネルと組み合わせて使用される太陽光発電向けの家庭用蓄電池

 ※ 家庭用蓄電池には、太陽光発電と連携するタイプと連携せずに電力会社から買電した電気を蓄電する機能のみを有するタイプ(スタンドアローン)の2種類の方式があるということなので、ここでは太陽光発電と連携するタイプのものを指していることになる。なお、現在市場に流通している家庭用蓄電池の主流はリチウムイオン蓄電池が主流です。

 

ハ 再生可能エネルギーを産み出す代表格である太陽光発電システムにおける太陽光パネルとパワーコンディショナー

 ※ パワーコンディショナー(パワコン)は太陽光パネルで発電した電気を家で使ったり売電できるように変換・調節する電気機器

 

ニ 燃料電池車に装備される燃料電池や家庭用燃料電池エネファーム

 ※ 燃料「電池」というと、乾電池のような使いきりの電池を連想しやすいのですが、そうではありませんで、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気をつくっています。より専門的に言うと、「燃料電池(Fuel Cell)」とは、水素を燃料にして空気中の酸素と電気化学反応させる際に生まれる電気エネルギーを使って発電する装置、などと説明されています。そして、燃料電池車はガソリンなどを燃料とするエンジンではなく、電気で動くモーターを使って走行します。家庭用燃料電池エネファーム」と併せて後に詳しく説明します。

 

ホ 太陽光パネルで発電された電気を利用して水を電気分解し水素を発生させる、水素の製造と水素貯蔵のための施設、および、再生可能エネルギー由来の水素を燃料電池車などに供給する水素ガスステーションその他の再生可能エネルギー由来の水素の供給に関連するサプライチェーンビジネス全般

 

 以上、イからホの「環境エナジー」を生産・供給する環境ビジネスをイメージ図として示したいと思ってネットでいろいろ探したのですが、いくらでもあるようで、なかなかピッタリするものが見つかりません。下図は、関西国際空港島内で燃料電池フォークリフト導入や水素供給施設などのインフラ整備を進める「水素グリッドプロジェクト」に関するもので、なんと早くも2014 年5月に発表されたものの一部です。リチウムイオン蓄電池は含まれていませんが、「環境エナジー」イメージ図としてはこれがもっとも近いので勝手ながら引用させていただきます。

 

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「水素グリッドプロジェクト」 関西国際空港島HPより

 

(2)  環境エナジータウンは、上記した環境エナジーを中心とする環境ビジネスの創生と展開に挑戦的に取り組む産業コミュニティを意味します。

 上の図は環境エナジーを取り扱う環境ビジネスが集積する場のイメージ図ですが、さらに、一般の人々が暮らしている地域を含む、環境エナジータウン直方のイメージを図で示すと下の図の感じです。

 

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水素と燃料電池(蓄電池のように電気を貯めておくのではなく、装置内で水素と酸素を化学反応させて電気を継続的に創り出す発電装置)を活用する社会に取組む豊田通商HPから

 

そして、環境エナジータウン直方と同じような視点から自治体等が企画・実施しているまちづくりの先行例を求めてネット閲覧すると、なんといっても「いわきバッテリーバレー構想」(下図参照)に関する情報提供が圧倒的に多く、次いで「やまなし水素・燃料電池バレー」です。

 

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「いわきバッテリーバレー構想」HPで示されているイメージ図と取組んでいる3つの施策

その他、水素や燃料電池のキーワードでグーグル検索をすると、「福島新エネ社会構想」、「山口県周南市における水素を活用したまちづくり」、「中山間地型水素社会の構築による 100%エネルギー自給自足のまち八百津プロジェクト」および「とやま水素エネルギービジョン」などがあります

 ※ 参照「とやま水素エネルギービジョン」資料編、平成30年3月27日http://www.pref.toyama.jp/cms_pfile/00019040/01326400.pdf))。また、再生可能エネルギーで検索すると、「室蘭グリーンエネルギータウン構想 - 室蘭市」「鳥取市スマートエネルギータウン構想」が見つかります。「北九州次世代エネルギーパーク-北九州市」も出てきます。ただし、これはまちづくり構想ではなく、「エネルギー施設を見学したり、エコタウンセンター別館内にある展示コーナーでエネルギーについて学んだりする」ための見学学習施設です。

 

さらに、「Suitaサスティナブル・スマートタウン(Suita SST)」のまちづくり構想もありますが、これは自治体ではなくパナソニック大阪府門真市)が大阪府吹田市で2020年春に着工、2022年春にまちびらきを予定する多世代居住型健康スマートタウンです。ただし、街区全体の消費電力を実質再生可能エネルギー100%で賄う、日本初の「再エネ100タウン」を目指すとしていて公共性の高いものです。

 

このように、それぞれの狙いと目標を込めたネーミングがされています。直方の場合も、取り組む環境エナジーの種類や重点の置き所などを総合考慮し、直方の地理的位置や伝統を含めて環境ビジネスとしての成立可能性なども踏まえ、若い感覚で発信力のあるネーミングを決めてもらえればと思います。(続く)