ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

「住みたい田舎」ランキング人口10万人未満部門で豊後高田市1位から学ぶべきは何だろう!?

「住みたい田舎」ランキングが発表され、8年連続ベスト3に入っている大分県豊後高田市が今年は人口10万人未満の部門で1位に選ばれたそうです。

直方市にとって、30年後の課題の多くは人口減少に起因すると私は考えていますが、地方の過疎化が続く中、豊後高田市は4年連続で、およそ300人という高水準の移住が続いているそうです。

日テレNEWS24の記事によると、豊後高田市には次のような特徴があるようです。どこを真似したらいいか、みんなで意見交換したいですね!

https://www.msn.com/ja-jp/news/video/%e9%9b%bb%e8%bb%8a%e3%82%82%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%91%e3%81%a9%e3%80%8c%e4%bd%8f%e3%81%bf%e3%81%9f%e3%81%84%e7%94%b0%e8%88%8e%e3%80%8d%ef%bc%91%e4%bd%8d%e3%81%ae%e3%83%af%e3%82%b1/ar-BBZ36R8

 

 1. 豊後高田市には、吉野家スターバックスなど大手飲食店は軒並み未進出。電車も通っていない。

 2. 学校給食は中学校まで無料。

 3. 東京から移住して5年の、嶋さんの家の敷地は全体で“1万平米ぐらい”。庭は野球場のグラウンドに匹敵する広さ。購入金額は、築100年以上の古民家と1万平米の土地合わせて2000万円。

 4. 現在、豊後高田市は、こうした古民家を76軒紹介中。例えば、築35年5DKの住宅は、家賃3~4万円。

 5. 豊後高田市の地域活力創造課大塚佳代係長によると、「リフォームに関しては半分で上限40万円、荷物の片付けに関しては10万円まで補助」

 6. 高校卒業までは医療費が無料。豊後高田市としては、今後も子育て環境をより充実させ移住の促進を図る。

係長クラスの方にRESAS(地域経済分析システム)を活用した企画を提案してもらう戦略対応人事を! 公共政策の定石から見る大塚市長の所信表明や抱負(19) 2019.12.29

(続き)  2 (3)の補論

 「共感・共働・共創」からは市民感覚になじみやすい施策が生まれてくるように思いますが、それと整合性を保ちつつ、実務的な実用可能性を兼ね備えた企画を提案できるのは、必ずしも実証的な意見ではないのですが、係長クラスの方たちではないかと思います。課長以上になると、どうしても市長や部局長などの上司や議員との関係を優先して行動せざるをえなくなり、施策や事業の原案を “どう通すか”といった政治的思惑に左右されされやすいように思われるからです。

 ところで、「OJTを中心として人材育成に努める」と言われていますが、それは業務を成功裡に遂行する手法が確立している民間で妥当する話だと思います。官公庁では、前例踏襲と指示待ちが隅々まで浸透しているのが現実ですから、以前の通達に代わった「通知」や必携の業務処理手順がない未知の領域に立ち入って未来志向の施策を企画立案するためには、人口や財政の推移状況など重要な事実を正確に踏まえたうえで独創的で挑戦的な取組みを提案できる人材が求められていると思います。

 そこで提案です。大塚市長が掲げる最終目標や重要施策、あるいは「共感・共働・共創」の実践から生まれた提案などについて、係長クラスの方たちに、前に紹介したリーサス(RESAS:地域経済分析システム、2019.11.21第(11)回参照)を活用して、問題に関する全体状況や具体的な実施案を企画してもらい、提出されたものの中から大塚市長が積極評価できる企画を採用し作成者を登用する人事政策はどうでしょうか。

 つまり、旧来の単に人を管理するライン型の人事管理の場合はOJTが適切かもしれませんが、目標―政策―施策―事業の実施―評価―見直しのサイクルで未来に挑戦しようというときには、それに相応しいスタッフ型の戦略対応人事への転換が必要であるように思います。(了)

 

(お知らせ)

 次回は、以上17回の検討を踏まえて大塚市長の所信表明とふるさと直方フォーラムからの提案を合体させ、いいとこ取りした政策パッケージ方式の最終提案を正月過ぎ、来春の4月にずれ込むかもしれませんが、発表を予定しています。乞うご期待です。

 以上17回分を含め、これまで読んでいただき、お礼申し上げます。素直に感謝です。誤解に基づく一方的な批判をしているなどと思われた箇所もあるかと思います。お気づきの点がありましたら、どうぞコメントをお寄せください。次回、ふるさと直方フォーラムからの提案に反映させていただきますし、質問や疑問に正面からお答えしたいと思います。

 みなさま、どうぞよい年をお迎えください。

市政運営の基本的考え方・・・共感・共働・共創を基本として市民と一緒に取り組みます  公共政策の定石から見る大塚市長の所信表明や抱負(18) 2019.12.28

 

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誰が策定するか(主体)、住民・市民・NPO等の関与(Public Involvement)をどうするか

1 大塚市長の市政運営の基本的考え方は「共感・共働・共創」を基本として市民と一緒に取り組むというものです。そして、市行政が公務サービスの提供の面を有することに着目して、顧客である市民の満足度の向上に向け努力するということですから、理由付けも立派ですし、尊敬するだけで終わってしまいそうです。とにかく直方に元気を取り戻したいという最終目標と併せ、この市政運営の基本的考え方を強く支持したいと思います。

ですから、これまで述べてきたこと、これから述べることに、大塚市長の所信表明や抱負に疑問を呈したり批判することがあった・あるとしても、それは最終目標と市政運営の基本的考え方という大きな枠組みに賛同したうえで、それが上手く進行して最終目標が見事、達成されることを願っての、方法論レベルでの建設的な提案だと受止めていただければと思います。そういう前提で、いくつかコメントします。

 

2 大塚市長の市政運営の基本的考え方の大きな特徴を再確認すると、「共感・共働・共創」、国や県との連携はもちろん近隣自治体との連携、そして、中間の管理監督者層を重視する組織運営をすることです。

(1)「共感・共働・共創」をこれほど明確に、しかも前面に打ち出している首長はそんなに多くないと思います。そして、直方市民の皆さんがいろんな立場から、元気な直方つくりのために献身的に頑張っておられるようで、最近特にそうした方たちの活動を取り上げる新聞やネットの情報を頻繁に見かけることが多くなったように感じています

   チューリップ祭りに関わってこられたボランティアの方たちや協賛してくださっている地元企業や団体。夏の『直活祭(ノオカツサイ)』や12月に須崎町公園で開催されている『餅つき大会』で有名な直活会、遠賀川河川敷で開催された「お月見ヨガ」であるとか「おはようサイクリング」♪のおがた星空バル』を主催しているのおがたわくわく実行委員会は言うまでもありません。

   他にも、源氏物語へのお誘い」ほか多様なイベントを主催している直方を熱くする会てであるとか、「千人茶会」や「陵江会展」を盛大に実行された方たち、直方駅舎の保存に奮闘された直方の文化を考える会のみなさん、直方ちょっくらラジオに関わる方たち、さらに、河川環境保全のために頑張っているNPO法人直方川づくりの会、平成筑豊鉄道を元気にする会、など、直方への熱い思いがひしひしと感じられます。

   直方を明るく元気にするために、他人ごとではない自分ごととして献身される方たちの活動と成果を市行政に積極的に取り込みながら、もっとも賢明な方法で「共感・共働・共創」を実践していただけたらと思います。きっと中央省庁との人事交流や職員の省庁派遣からでは得られない懸命さが市政に反映されると思いますし、そうしたことの積み重ねが公務サービスの改善と顧客である市民の満足度の向上につながると信じます。

 

(2) 近隣自治体との連携も是非積極的に進めていただきたいと思います。直方市が真剣に地方創生に取り組もうとするとき、国の法律などによる制約があってなかなか思うような活動を展開できないことがあるでしょう。そんなとき一自治体の力だけではなかなか改善要望の声が中央に届かないでしょうから、立場と境遇を同じくする自治体と連携して取り組み、効果をあげてほしいと思います。

   上記は自治体が市町村レベルで連携して県に働きかけ、さらに国を動かしていく場合をイメージしていますから、大塚市長が言われる「財源も含め限られた地域経営資源の中で、行政サービスの最大化を図る」ために国や県と連携するというのとはやや異なるかもしれません。

  しかし、一自治体としてしっかり“自立”していくためにも、立場と境遇を同じくする自治体と連携して声を大きくする必要性は同じだと思います。また、同じような立場と境遇でありながら、ピンチをチャンスに変えることにチャレンジしている自治体にこそ、本省庁への人事交流や職員派遣よりも学ぶべきことが多いというのが現代の実相かもしれません。

 

(3) 「共感・共働・共創」の精神を掲げていますが、現実に日々、首長を支え、首長の手足となって行動できるのは補助機関である市の職員ですから、職員がもっている潜在能力を最大限発揮してもらうことはきわめて重要です。ですから、トップダウンでもなく、ボトムアップでもなくミドルアップ・アンド・ダウンといった中間の管理監督者層の役割」を重視して「活力ある組織」を創造したいと述べておられるところに大塚市長の本気度を感じます。

   その反面、「財政の脆弱な直方市財政の健全化を目指す観点から、行財政改革を推進します」と言われていることには、率直に言ってあまり覚悟と迫力を感じることができません。直方市の人口が減少傾向にあること、それにより財政歳入がいっそう先細りしていくことを現実にどう受止め、克服していくか、大変大きな課題ですが、いっそうの取り組みをお願いしたいと思います。(続く)

『産業に活力を』のまとめ(各回で述べたことの要旨) 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(17)ー2019.11.29

以上、大塚市長の3つ目の基本政策である『産業に活力を』について検討しました。大塚市長の、市民所得を向上させるため産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨きたいという狙いと、直方市で特に外貨を稼ぐ可能性があるのは製造業という前提に即して検討しましたが、結論は、製造業を強化することにより直方市の地域経済循環率を1(=100%)に近づけようとする努力は、適切で効果的な施策とはなりそうにないというものです。

しかし、域内経済循環に着目してこれをしっかりしたものにしたいという狙い自体は極めて正しい目標であることも確認していますし、“直方に元気を取り戻したい”という最終目標は不変です。

そこで、次回は“直方に元気を取り戻したい”という最終目標を実施する人的体制について取り上げますが、そのあとでは大塚市長も重視されている、直方が交通の結節点に位置するという立地環境を生かしたまちづくりを基軸にして、“直方に元気を取り戻したい”という最終目標を実現する施策をありったけの力を振り絞って考えたいと思います。その検討結果は、ふるさと直方フォーラムからの心を込めた提案でもあります。どうぞ皆様のご意見もお寄せください。

 

『産業に活力を』については、第9回から第16回の長い連載になりましたので、各回で述べたことの要旨を「まとめ」として、以下にあげておきます。

 

 

大塚市長の3つ目の基本政策は『産業に活力を』です。産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨き、それにより市民所得を向上させるという狙い、および、製造業を含む産業を強化して域内経済循環をしっかりしたものにしたいという狙いについて、それら二つの狙いはそれぞれ社会経済的見地から見たときに根拠を有する合理的なものであるか、また、製造業を強化することに施策のエネルギーを注入することで、果たして域内経済循環を確立できるか、そして、究極的に“直方に元気を取り戻したい”という最終目標の実現につながるか、考えます(第9回2019.11.15)

 

産業を活性化させて市民所得の向上につながる社会基盤や経済基盤を見出すことは今日なかなかに容易でない。大塚市長の思いと狙いは理解できるし業界団体や商工会議所との適切な連携は必要だが、あくまでもそれら団体が主体的に取り組むべきであるし、最終的には個別の企業が独自に決断して成し遂げるべき課題です(第10回2019.11.19)

 

これからの地域政策やまちづくりを考えていくうえでは、経済産業省内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が地方創生の様々な取り組みを情報面から支援する目的で、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化して提供している地域経済分析システム(リーサス)を利用することが必須ですし有用です(第11回2019.11.21)。

 

直方市全体の付加価値産出額において製造業が占める割合は33.3% (2016年)ですが、製造業をさらに8つに区分した企業単位・中分類の業種で言うと、一番割合の大きい生産用機械器具製造業にしても5.8%です。大塚市長のいう製造業が鉄鋼業を念頭に置いているなら鉄鋼業の付加価値額の割合は3.2%であり、鉄鋼業の強化に少々成功したとしても市全体の稼ぐ力に及ぼす影響は限定的です。

それに、8つに区分される製造業はどれもITやAIを含め専門技術化が著しく、公益を追求する自治が公共性を確保しつつ適切な強化策を提案できる体制を用意することは無理な相談です。加えて、第2次産業の移輸出入収支額は0を割っていてマイナス25億円でして、差し引きすると地域の外からお金(所得)を稼いではいません。産業連関表を正確に読めば製造業に限定した移出入収支額を読み取れるでしょうが、大きな傾向は変わらないと思われます。

以上の検討から、直方市で特に外貨を稼いでいる、あるいは外貨を稼ぐ可能性があるのは製造業という前提は、ハッキリ間違っているとまでは言いませんが、正しいと断言できるデータはありません(第12回2019.11.22)。

 

地域経済循環を確認する最大の意義は、生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で、地域外にお金が流出しているかどうかを把握することにあります。そして、三段階のどこかで地域外にお金が流出していると必ずや生産(付加価値額)が縮小し、それが繰り返されていくと、将来的に地域の生産力と地域経済はジリ貧的に縮小していくことを予測できます。

そうしますと、生産(付加価値)、分配(所得)と支出の額は同一であることが望ましいし、3つが同額ながらも少しずつ増えている状態が理想的でして、そのとき地域経済には活気が生まれてきそうです(第13回2019.11.23)。

 

“直方を元気にしたい”を実現するために、政策ないし施策を実施するさいの目標として位置づけられる「域内経済循環の確立」は、政府の地方創生が提唱している、地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立するという、“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”と究極的には同じです。

 域内経済循環を確立させることこそ、自治のまちづくり政策ないし施策の本丸ですし、“直方を元気に! ”と直結します。そして、ふるさと直方フォーラムが掲げる目標スローガンは“人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう であったのです(第14回2019.11.27)。

 

直方市の地域経済循環率は92.6%であり、支出面に着目すると「民間消費額」は他地域から379億円流入していますが、「民間投資額」では73億円流出し、その支出流出入率は-24.8%で全国1,106位です。

なすべきは、市内での投資が増えるよう、投資対象としての直方の魅力を向上させる、市民の側に着目すると、市民が当事者意識をもって積極的に参加する気持ちになるような投資の機会と場を市内に創り出すことでしょう。あるいは、人口増の傾向を作り出し、地域としての成長力を増やすなども広くはこれに含まれるかもしれません。

では、製造業を強化すると、投資対象としての直方の魅力が向上して市内への投資が増加し、それにより民間投資が地域外へ流出する状況を改めることができるかというと、強化された製造業自身による市内での投資が増えなければなりませんが、なかなかそれについて現実味あるイメージを描くことができません(第15回2019.11.27)

 

市役所が実施する公共事業による地域外への支出にしろ、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字にしろ、他地域へ443億円が流出している現状を改善する即効薬を見出すのは困難なようです(第16回2019.11.28)

製造業を強化することが地域経済循環率を1(=100%)以上にする効果的な取組みになるか  基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(16)ー2019.11.28

ⅵ 「その他支出」では他地域に443億円流出し、その支出流出入率は-84.6%です。これをどう評価すればいいか。そして、他地域へ443億円流出の現状を改善する有効な方策はなにか。果たして製造業を強化することが地域経済循環率を1(=100%)以上にする効果的な取組みになるか

 

 ①「その他支出」とは、政府支出と地域産業の移輸出入収支額等が含まれており、市役所や国の出先機関等からの発注額などもこの項目に含まれるとされています。政府支出というと随分、硬くて漠然とした響きがありますが、市役所や国の出先機関等が行う発注額などもこの項目に含まれるということですので、公共事業や物品調達による支出をイメージすればいいと思います。

 ②地域産業の移輸出入収支額というのも分かりにくい言葉ですが、「支出」欄外の【注記】では移輸出入収支額は「地域内産業の移輸出-移輸入」により計算されるとしています。

 つまり、「移輸出入収支額とは、域外への移出に伴う収入額から域外からの移入に伴う支出額を差し引いたもの」(前掲・米山知宏)です。結局、「その他支出」で地域外への流出が多いということは、「地域外に対して商品・サービスを移出する以上に地域外からそれを移入している、つまり、地域として貿易赤字状態である」ことを意味しています 

直方市の場合、その他支出の支出流出入率が-84.6%であるということは、地域外への流出を構成する二つの要素の支出が地域内への支出を大きく上回っていることを意味します。

 そして、前に引用しましたように、「この値がマイナスの場合は、地域で稼ぎ、地域で得た所得が他地域へ漏れていることになり、企業の新たな生産販売活動に繋がらず、地域の経済循環がうまく機能していない可能性があります。地域が地域内外の消費、投資をより多く受け止め、稼ぐ力を付けて、付加価値を高めることが重要です。結果として、地域の労働生産性も向上していきます」が当てはまります。 

④しかし、地域外への流出を構成する上記二つの要素、つまり、市役所が実施する公共事業による地域外への支出と、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字の額という二つの内訳はリーサスでは明らかにされていないようです。

 ただし、直方市役所であればリーサスや総務省経産省と県から提供される産業連関表などにより、二つの要素の詳しい内訳を入手できているはずです。そこで、二つの要素の内訳を明らかにしていただいたうえで「その他支出」の支出流出入率を改善してプラスに近づけるための方策を考えなければいけません。 

⑤では、製造業を強化することにより、「その他支出」の支出流出入率を改善できるかという関心からしますと、市役所が実施する大型の公共事業については入札と受注資格に関する制限がありますから市外大手の受注が多く、そのため地域外への支出額を減らすことは難しいかもしれません

 それに、大型の公共事業はほとんど建設業に関係しているでしょうから、製造業を強化できたとしても、直方市内の製造業者が公共事業を受注することにはならず、したがつて、市役所が実施する公共事業による地域外への支出額が減って「その他支出」の支出流出入率が改善されるという関係にはならないと思われます。 

⑥物品調達に関しては、市役所が地域外への発注を減らして市内から調達するということは、随意契約に関する規制などがありますが、ある程度可能かもしれません。

 もちろん、製造業を強化することにより技術力が高度化して、生産する商品・サービスの質が向上するとともに量も増加する結果、生産する商品・サービスに対する地域内外からの需要が増え、地域外に対する商品・サービスの移出が増えたり、あるいは地域内で物品調達されることが増え、その分地域外からの移入が減る、結局、移輸出入収支が改善されるという可能性はありえるでしょう。 

 しかしこれも、直方市内の付加価値生産における製造業を含む第2次産業の比重は全体の41.7%(595÷(151+595+682))であり、製造業はさらに23の多業種に分類されていましたから、1,2の業種の製造業を強化できたとしても、市内の生産と付加価値額が大幅に改善し、さらに移輸出入収支も大きく改善されることにはならないように思われます。 

さらに、より影響する要因ですが、以前にリーサスの下図を示して検討しましたように、「その他支出」における産業別の移輸出入収支額において、第2次産業の移輸出入収支額は0を割ってマイナス25億円で、生産額の構成割合は41.4%でした。

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直方市産業別の移輸出入収支額(2013年)

 すると、「その他支出」における他地域への流出は443億ですから、第2次産業、あるいは第2次産業に含まれる製造業の移輸出入収支を0に近づけるとか、もっと改善できたとしても、「その他支出」における地域外への流出を大きく減らすことは難しいと推測されます。 

(結論) 結局のところ、市役所が実施する公共事業による地域外への支出にしろ、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字にしろ、1,2の業種の製造業を強化しても他地域へ443億円が流出している「その他支出」の現状を大きく改善することは困難なようです。

 

※補足 RESASメニューから「地域経済循環マップ>生産分析」と辿ると、移輸出入収支額を産業別に表示したものを確認できます。しかし、前掲・米山知宏では、産業別でなく、下図のような、より細かい業種別の移輸出入収支額と全体に占める構成割合が示されています。そのような業種別の移輸出入収支額を示すデータを利用できると、より具体的な検討が可能になりますので、その時点でこの箇所を訂正して書きなおします。 

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前掲・米山知宏が示している、業種別の移輸出入収支額と全体に占める構成割合を示すデータ図

 

製造業を強化すると投資対象としての直方の魅力が向上して市内での投資が増加するか!? 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(15)ー2019.11.27

ハ 以上で明らかになりましたように、域内経済循環を確立することは決定的に重要です。ですから、地域経済循環率92.6%については、宮若市116.7%、福岡市111.8%を除き、直方市の周辺自治体にはもっと憂慮される自治体があることを認識しつつも、直方市の地域経済循環率が1を割る(=100%を切る)原因を明らかにして、果たして製造業を強化することがこれを1(=100%)以上にする適切で効果的な取組みになるかを検討します。

 

ⅰ 初めに、地域経済循環図(2013年)の「支出」の欄にある「詳細に見る」をクリックすると下の図を見ることができます。

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https://resas.go.jp/regioncycle/#/map/40/40204/2/2013 注 上の図の中にある【グラフと表の見方】が途中までしかピクチャできていないのですが、末尾の「・・・地域内に支」に続いて、以下の文章が続きます。 (・・・地域内に支)出された金額が多い場合は、その差額が赤色のグラフとして表示され、支出が地域外から流入していることを意味します。上記の表は、地域内の住民・企業等が支出した金額に対する流出入額の比率を示す「支出流出入率」を把握することができます。 表に記載されている順位は、都道府県単位では全国47都道府県、市区町村単位は全国1,719市区町村におけるランキングとなっています。

ⅱ つぎに、「詳細に見る」をクリックして見ることができる支出」の詳細図の棒グラフと表が意味していることについて、上の図の中にある【グラフと表の見方】を参照してください。以下にコピーして貼り付けていますが、文章中の次の箇所が重要です。

 

支出」では、地域内の住民・企業等に分配された所得がどのように使われたかを把握することができます。・・・各棒グラフは、地域内で消費・投資された金額を示しています。地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が少ない場合は、その差額がグラフでは空白の四角で表示され、支出が地域外に流出していることを意味します。逆に、地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が多い場合は、その差額が赤色のグラフとして表示され、支出が地域外から流入していることを意味します。

上記の表は、地域内の住民・企業等が支出した金額に対する流出入額の比率を示す「支出流出入率」を把握することができます。表に記載されている順位は、都道府県単位では全国47都道府県、市区町村単位は全国1,719市区町村におけるランキングとなっています。

 

ⅲ 簡易解説さらに詳しく次のように説明しています(簡易解説の「③支出の分析」(4/15頁)は例を用いて解説していますが、以下ではその解説が直方市の状況に妥当するよう、解説中の数字等については、リーサス中の直方市の地域経済循環図・支出(2013年)に記載されている数字等と置き換えて示しています。また、文字の色は原文はすべて黒色です)

 

棒グラフは地域での「民間消費額」、「民間投資額」、「その他支出」の額を示したものです。「その他支出」とは、政府支出と地域産業の移輸出入収支額等が含まれており、市役所や国の出先機関等からの発注額などもこの項目に含まれます。この棒グラフの青い部分は、消費や投資など、地域に支出された金額を示しています。直方市の場合は、「民間消費額」が1022億円、「民間投資額」が223億円、「その他支出」が81億円となります。

 

一方、青い部分の上部にある点線に囲まれた部分は、他地域への流出額を示しています。直方市の場合では「民間消費額」は他地域から379億円流入しており、「民間投資額」では73億円流出しており、「その他支出」では他地域へ443億円流出していることになります。

 

次に、棒グラフと併せて表示される表の「支出流出入率」とは、地域内に支出された金額に対する地域外から流入・地域外に流出した金額の割合を示します。この値がマイナスの場合は、地域で稼ぎ、地域で得た所得が他地域へ漏れていることになり、企業の新たな生産販売活動に繋がらず、地域の経済循環がうまく機能していない可能性があります。地域が地域内外の消費、投資をより多く受け止め、稼ぐ力を付けて、付加価値を高めることが重要です。結果として、地域の労働生産性も向上していきます。

 

ⅳ 大変、示唆に溢れた文章ですが、重要な点を確認し、教訓を整理しておきたいと思います。

①初めに、直方市の地域経済循環率が92.6%であることを支出面に着目して具体的に示すと、「民間消費額」が他地域から379億円流入し、「民間投資額」では73億円流出、「その他支出」も他地域に443億円流出しています。そして、表の「支出流出入率」を併せ見ますと直方市の地域経済循環率92.6%が意味するところをより深く知ることができます。

 

②すると、直方市の「民間消費の支出流出入率(地域外からの流入379÷支出(地域内ベース) 1,022」は37.1%で全国1,719市区町村中なんと80位とトップ100にランクインする優秀さです。

 市内に居住する比較的若い世代を中心に博多に出かけて買物したり、市外でレジャーを楽しんでいますから若干意外ですが(これらは本来、分子の要素である「地域外に流出した消費の額」として計上すべきかと思いますが、どうもここでは無視されているようです。果たしてそうなのか、なぜ無視していいのかなど、後日分かれば訂正します)、地域外から多額の消費需要が流入しているなんて大変結構なことです。

 

ただ、地域外から多額の消費需要が流入しているというのは、市内の商店街における消費というよりは、郊外の直方イオン、明治屋もち吉などで、地域外からの個人や企業による消費が貢献しているということではないかと推測されます。そのため、「郊外型店舗が地域内にあっても、消費の場が郊外に分散することで、消費者が滞留し回遊する時間が減ると、消費の水準が低下することがデータ上明らかになっています。」(前掲、地域経済循環分析解説11頁)との指摘もあり、まちづくりの観点からは留意しておかなければいけません。

 

③しかし、民間投資の支出流出入率((地域外への流出+地域外から流入した金額)÷支出(地域内ベース))は-24.8%(この計算式は、-73÷223=-32.7となるのではと思いますが、なぜか-24.8と表示されています。ただし、今日は専門家であるリーサスの表示に従っておきます。)で全国1,106位、その他支出の支出流出入率((地域外への流出+地域外から流入した金額)÷支出(地域内ベース))は-84.6%(ここも-443÷81=-5.469で-546.9%となるのではと思うのですが、上記と同様の対応です。)で全国1,151位です。

 

民間投資が地域外へ流出しているというのは、市民や企業が直方市で稼いだ所得を使って他地域の何かに投資しているということでしょう。具体的に主なものは、株式や金融商品あるいは市外の不動産等を投資目的で購入しているなどでしょうか。そうだとすれば、それは市民や企業の合理的な経済判断によるものでしょうから、やむをえないことで抑制することはできないかもしれません。

 

なすべきは、市内での投資が増えるよう、投資対象としての直方の魅力を向上させる、市民の側から見ると、市民が当事者意識をもって積極的に参加する気持ちになるような投資の機会と場を市内に創り出すことでしょう。あるいは、人口増の傾向を作り出し、地域としての成長力を増やすなども広くはこれに含まれるかもしれません。

 

④ では、製造業を強化すると、投資対象としての直方の魅力が向上して市内への投資が増加し、それにより民間投資が地域外へ流出する状況を改めることができるでしょうか。

 強化された製造業自身による市内での投資が増えなければなりませんが、なかなかそれについて現実味あるイメージを描くことができません「イヤ、現実性があるんだ」というご意見があれば、是非とも聞かせてください。

地域経済循環を確立する意義 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(14)ー2019.11.27

ⅲ そこで、地域経済循環を確立する意義について確認します。

簡易解説は「地域経済循環率は・・・域内で生み出された所得がどの程度域内に環流しているかを把握するもの」(5/15頁)であると説明しています。また、さきほどⅰで、地域経済循環率は地域経済の自立度を示しておりその値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高いことを意味すると述べました。 

 

ⅴ 直方に限らず、地域を元気にするという最終目標との関係では、私はこの域内の経済循環を確立できるかどうかが決定的に重要と考えています。ですから、製造業を強化することで域内での経済循環をしっかりしたものにしたいということで、域内の経済循環に着目し、そこに目標を置いている大塚市長の判断はきわめて正しいと思います。

 

情緒的な理由になりますが、私たちが中、高校生だった昭和の40年代、直方駅前から須崎町、古町、殿町の商店街で賑わいを眼にしていましたが、あの頃はきっと、滞りや流出のない経済循環があったのではないかと思います。

 つまり、市民の多くが直方市内の企業や商店で働いて稼ぎ、市内で消費し、支出して、お金が市内を周っていたように思うのです。また、そうした域内の経済循環が確立されていたから、直方という地域の経済と文化はそれなりのものとして存続していたと思うのです。域内の経済循環がほころびているのに、それには無頓着で行政が文化を先導するなんて、危なっかしいのはもちろんですが、面白くもなんともありません。

 

ⅵ そして、私たちが求めている“直方を元気にしたい”は、語弊をおそれずに言いますと、お金が市内を周っている≒域内で経済が循環していることではないかと思います。逆に、いくら産業活動が盛んになり、生産(付加価値額)が大きく増えて稼ぐ力が付いても、分配(所得)あるいは支出の段階でお金が域外に流出してしまい、お金が市内を周っていない=域内の経済循環がない状態では、到底、直方に元気が戻ったとは言えません。

 

ちなみに、政府の地方創生は、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを最終目的としていますが、そこに至るためには “まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”が必須であると考えています。

 

すなわち、政府の地方創生が提唱する“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”は、地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、・・・その好循環を支える「まち」に活力を取り戻し、人々が安心して生活を営み、子供を産み育てられる社会環境をつくり出すことを目指しています。 

 そこでいう「好循環を確立し」というのは、経済的側面に着目して表現すると域内経済循環が確立されることを意味していると思います。つまり、政府の地方創生は、域内経済循環を確立できたなら地方創生はほとんど達成されると考えているのです。それをただ、“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”と表現しているだけです。

 

そうしますと、“直方を元気にしたい”を実現するために、政策ないし施策を実施するさいの目標として位置づけられる「域内経済循環の確立」は、表現は少し違っていますが、政府の地方創生が追い求めているものと究極的には同じということになります。

域内経済循環を確立させることこそ、自治体の政策ないし施策の本丸であり、“直方を元気に! ”と直結するものというわけです。

そして、うっかり忘れていましたが、私たち「ふるさと直方フォーラム」が掲げる目標スローガンは “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう であったのです。

 

 

(つづく)