このシリーズ初回(4月3日付)で、“環境エナジータウン直方”として取り組みを検討したい環境エナジーを列記しました。それらについての化学と物理、そして電気技術などに関する専門情報はネットなどからでも十分に得ることができます。
今回からのシリーズは、いわゆる文系人間で上記の専門知識をまったく持たない、ごく普通の一般人が環境エナジータウン直方に取り組み、“政策選択に役立てたい”という問題意識を持って、一つ一つの環境エナジーについての認識を深めていった体験的物語として公表します。
つまり、「将来的にこの環境エナジーに対する強い需要が見込めるか?」「環境エナジータウン直方として、企業誘致を含め、この環境エナジーを生産し供給するためのインフラ整備に取り組むべきか」といった視点です。
そのため、化学や物理、そして電気技術などに関する高度な専門知識を駆使した分析とは程遠いものです。正確さに欠けていたり誤解など多々あるかと思います。ご指摘等をいただいて訂正補充等しますのでよろしくお願いします。
(1) リチウムイオン電池
ⅰ 昨年、吉野彰さんがリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞され、改めて(初めて?)リチウムイオン電池の偉大さを知りました。
その第一は、スマホやノートパソコンなど、使い捨ての乾電池と異なり何百回何千回も充電して繰り返し使うことができるのはリチウムイオン電池が使用されていて、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電が繰り返されるということです。
そのうえ、充放電の繰り返しによる充電容量の低下が大変小さく、また使用しない時の電圧低下も少ないというのです。しかも、従来からある二次電池に比べて2倍以上のエネルギー密度をもっているため、携帯機器の電源の小型軽量化を実現できたとされています。また、直列につなぐと高電圧、高電流が得られ、大きな出力パワーが得られます。
(ボーイング社787型機が初めて採用したリチウムイオン・バッテリーの特徴を説明するものとして、参照、JAL「リチウムイオン・バッテリー」https://www.jal.com/ja/flight/safety/trouble/boeing787/battery/lithium_ion_battery01.html)
ⅱ 吉野さんのノーベル賞受賞記念講演の演題は「リチウムイオン電池が電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及する未来社会」でした。
新聞報道などによると、吉野さんは「環境問題解決のためのエネルギー革命の時代を迎えている。環境・経済性・利便性のバランスがとれたリチウムイオン電池は電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及し、持続可能な未来社会づくりにおいて中心となる重要な役割を果たす」と話されています。
※ 2020年9月9日~11日、関西スマートエネルギーWeek2020が開催され、吉野さんの講演を聞く機会がありました。吉野さんは、ノーベル賞を受賞されたストックホルムの記念講演でも、「リチウムイオン電池はこれまでITなどのモバイル電源として活用されてきたが、これからはサステイナブル(持続可能)な未来社会づくりに大いに貢献したいし、それができると強調しました」と話されていました。(2020.9.15追記)
ここでは、リチウムイオン電池で再生可能エネルギーを蓄電できること、そして持続可能な未来社会づくりにおいて中心となる重要な役割を果たすとされていることに注目しておきたいと思います。
ⅲ ノーベル化学賞受賞前の2013年11月の時点ですが、吉野さんはリチウム電池の開発初期からの30年以上を振り返って次のように述べています(―公表の副題は「小型民生用から車載用・大規模蓄電システムへ」です)。
「リチウムイオン電池が成長したのは小型民生用で、そのきっかけになったのがいわゆるIT変革です。つまり、これまでは「リチウムイオン電池=IT」だったわけです。しかし、これからは車載用や大規模蓄電システムのような、次のマーケットに向かって進んでいるわけです。そういった意味で第2の出発点なんです。」
ⅳ リチウムイオン電池と言うと、腕時計やスマートフォン・ノートパソコンなどポータブルな電子機器で使われているくらいは知っていましたが、車載用や大規模蓄電システムと言われてもすぐにはピンと来ません。車載用と言われたら、ハイブリッド自動車や電気自動車などで使われているものかなと思うくらいです。そこで、あやふやな私の知識や記憶などあてになりませんから、ネットで「リチウムイオン電池 小型民生用から車載用・大規模蓄電システムへ」などを検索しますと、たくさんの記事等がヒットし、そこからさらに次々と関連情報にたどり着きます。
そこで、以下では、吉野さんが指摘されている車載用と大規模蓄電システム、それと私が一人の生活人としてリチウム電池を認識した家庭用蓄電池に大別し、それらについて図や写真を用いて分かりやすい説明であるとか、具体的な使用例を紹介してくれている記事等を整理して適宜紹介するとともに、随時、私の初心者的な体験的認識を述べておくことにしたいと思います。
(つづく)