ふるさと直方フォーラム

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4⑶ 小規模分散電源を束ねるアグリゲーターとVPP(仮想発電所)についての学習と提携  2023.9.8

 ⅰ 家庭や事業所に設置された太陽光発電で発電した電気を売り買いする「地域新電力」として活動し、電気の地産地消を実現したいと述べましたが、電気の売り買いという活動を行うには、電気を物理的に管理制御する能力が必要です。パンなどの有形の商品であれば、生産者から納品してもらい、それを小売店舗などで販売することができますが、電気はそういう訳にいかず、発電場所から電気を必要とする需要家まで、地域全体の電気需給の均衡を保持しつつ、電線などを使って送配電することが必要になるからです。 

 ⅱ 太陽光発電システムは、従来の大規模発電所とは異なり一般の住宅や事業所など身近なところでも発電しているので、一般に分散型エネルギー源(DER、Distributed Energy Resources)と言われています。そして、分散した場所で発電した電気を売買する「地域新電力」としての事業活動を遂行するには、分散した家庭や事業所などの小規模分散電源を集め束ねる作業が必要となります。

 この小規模分散電源を集め束ねて大量に管理することが煩雑極まることは容易に想像できます。また、時には蓄電池を設置していることもある個人の側で電気を出し入れして売買することは、実際にはほとんど不可能です。このため、家庭や事業所が持つ電気を積極的に活用してビジネスとして成り立たせようとすることはこれまでほとんどありませんでした。

 ところが、ICTとかIoT※1という高度なエネルギーマネジメント技術が実用化されるようになって、小規模分散電源を集め (束ね)※2、遠隔・統合制御することが可能になり、電力の需給バランスを崩さないようにすることができるようになったと言われています※3。具体的には、再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給、その他時間帯や季節ごとの電力需要格差を縮小する負荷の平準化です。

    ※1 少し前まで、デジタル社会、情報社会の到来が言われ、そこで求められるIT技術などと言われてきました。 IT(Information Technology)はデジタル機器で用いられている情報技術全般を指していますが、代表的な具体例はパソコンやスマートフォンです。そして、ITの中にICTとIoTが含まれています。ICTは「Information and Communication Technology」の略語で「情報通信技術」「情報伝達技術」IoTは「Internet of Things」の略語で、いろんなモノをインターネットでつなぐ技術全般を指しています。

   ※2 小規模分散電源を集める(束ねる)ことを英単語では「アグリゲート(aggregate)」と言い、その事業者は「アグリゲーター」と呼ばれています。

  ※3 資源エネルギー庁の補助事業として、豊田市太陽光発電や蓄電池、HEMSなどを導入した新築住宅67戸を対象に、電力需給に合わせた蓄電池充放電の遠隔操作を行ってエネルギーの地産地消とVPP機能を実証することが行われている(2019)。

 ⅲ 家庭や事業所に設置されている小規模分散電源の電気をアグリゲートし、あたかも一つの発電施設であるかのように機能させようとしているのがVPP(Virtual Power Plant)と言われる考え方です。仮想発電所とも呼ばれています。

 下図は、小規模分散電源とアグリゲーター企業、およびVPP(仮想発電所)や大手電力系統の一般送配電事業者などとの関係についてのイメージ図(資源エネルギー庁HP)です。 

小規模分散電源とアグリゲーター企業およびVPP(仮想発電所)や大手電力系統の送配電事業者などの関係イメージ図

 ⅳ  以上で述べたアグリゲーターは、小規模分散電源と直接契約を締結して制御を行うリソースアグリゲーターを指しています。しかし、上の資源エネルギー庁HP図では、さらにリソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者をアグリゲーションコーディネーターと呼んで区別しています。二つの役割を兼ねる事業者も存在しているようですが、大手の系統電力会社がアグリゲーションコーディネーターの役割を果たすのか、またその例があるのかは不明ですが、中部電力のHPで、アグリゲーションコーディネーターのことを「親アグリゲータ(電力会社)」としています。

 ⅴ この図からも窺えるのですが、従来は大手電力会社が「需要に合わせて電力供給を集中管理でコントロール」していましたが、分散電源時代では「供給に合わせて需要を分散管理する」形に変わるといわれています。

 そして、小規模分散電源を集める(束ねる)リソースアグリゲーターは、大手電力と分散している小規模の発電設備との間で「電気の需給バランスを束ねる中間事業者」などと説明されることがあります。私たちは電気の需給管理を勉強し、自分で電気の需給管理機能を遂行することができないわけではないのですが、やはりここはICTとIoTに関する高度な専門ノウハウを有して、VPP(仮想発電所)として求められる機能を確実に実践できる専門のアグリゲーター企業と提携することが必要になるようです。

ⅴ 地産地消型のVPP(仮想発電所)を目指している私たちとしては、地産地消型VPP(仮想発電所) を実現し、環境エナジータウンを創るという私たちの目標に理解を示してくれるアグリゲーター企業を見つけ、提携のための交渉をすることが重要で必要な作業となります

 資源エネルギー庁のHPを見ると、57社にのぼるアグリゲーター企業の情報が掲載されています(「特定卸供給事業者一覧」2023年8月6日時点)

 なお、資源エネルギー庁は次のような告示を出しています。アグリゲーターは特定卸供給事業者と呼ばれ、届出が必要になっています。

 「2022年4月より、特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度が開始します。特定卸供給事業に該当する事業者は、事業を実施する30日前に経済産業大臣への届出を行う必要があります。・・・2022年4月1日時点で、既に特定卸供給事業に該当する事業を行っている場合は、制度開始以降も、継続して事業実施が可能です。その際は、2022年6月30日までに届出が必要です。」