ふるさと直方フォーラム

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補遺2 中国も戦略的に大規模「太陽光発電+蓄電池」を重視している! 2021.4.29

中国も大規模「太陽光発電+蓄電池」を重視しています。中国の蓄電池生産が日本を追い越していることについては前に(2020.9.7付け)紹介しました。また、中国の太陽光発電生産は世界一と発表されています。ただしこれまでは中国の蓄電池生産と太陽光発電の生産を一体として捉える情報はなかったように思います。

しかし、その中国で、蓄電池生産と太陽光発電の生産を一体として捉える政策が展開されつつあるようです。今日はそうした傾向を伝える二つの記事を紹介します。「中国も戦略的に蓄電池生産に取り組んでいる!」ということが今日の話の結論です。

 

最初は「中国、見渡す限り太陽光パネル 温室ガスゼロへの実現度」というタイトルの朝日新聞記事(2021年3月12日)です。 

この記事は、中国の古都・西安市から100キロ余りにある農村地帯に、山の尾根や谷間を太陽光パネルが埋め尽くす異観が広がり、谷間のパネルは5キロ以上先まで続き、終わりを見通すこともできないほどだと描写して始まっています(以下、記事を引用・紹介するときの太字や色付きは比山による)。

 

そして、現時点で中国は国別の太陽光発電の設備容量で世界トップを独走し、中国企業はパネル出荷量で世界の上位をほぼ独占すると確認しています。また、習近平国家主席が昨年、「2030年までに風力・太陽光の設備容量を計12億キロワットに引き上げる」と言明した。19年時点の数字は約4億キロワットで、日本の7倍ほどの規模だが、さらに3倍にする計画であると指摘しています。

 

以上の状況を踏まえて記事は、次のように述べています。

    中国エネルギー政策研究院の院長が「設備容量の拡大は企業に任せられる段階になった。政府の次の役割は、生み出した電気を無駄なく消費するための技術やインフラへの投資だ」と発言していること、

   そして投資の対象として、太陽光で生んだ電気を曇りの日などに使うための大規模な蓄電設備や、複数の住宅のパネルで生み出された電気を融通し合う「スマートグリッド」の電力網を挙げていることを紹介しています。 

    また、エネルギー政策を担う国家発展改革委員会は、蓄電池スマートグリッドの設置を全土で推し進めるよう通知しており、各省でも新たな電力網の整備計画が次々と発表されている。 国有会社「国家電網」傘下のシンクタンクも、蓄電池の設備容量は2019年現在の170万キロワットから60年には約250倍の約4億2千万キロワットに引き上げる構想であることを紹介して、記事を締めくくっています。                                              

 

 もう一つは、「中国「脱炭素」投資、今後40年で1000兆円規模に CICCが予想。投資先は「太陽光+蓄電」が最有力」(2021/04/08)というタイトルの東洋経済onlineの記事です(http:// https://toyokeizai.net/articles/-/420906ただし、この記事は「財新財新 Biz&Tech」の白宇潔記者によるもので、 原文の配信は3月26日とされています)。 

 中国の習近平国家主席は去年9月の国連総会のビデオ演説で、二酸化炭素の排出量について「2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」と表明していますが、それを機に中国では新たな国家目標に対応する動きが活発になっているとして、太陽光、風力、水力、原子力などの「カーボンフリー電源」をめぐる最近の状況と関係者の発言を紹介しています。 

   それによりますと、中国の投資銀行大手の中国国際金融(CICC)は「カーボンニュートラル」を主題にしたフォーラムを北京で開催し、それに合わせて、中国のマクロ経済や産業に与える影響を分析した研究レポートを発表しています。

   そして、CICCの研究レポートをまとめた主席アナリストの劉俊氏は「今後40年の間に、カーボンニュートラルの推進は総額60兆元(約1000兆円)の関連投資を生み出す。そのうち太陽光発電への投資が20兆元(約333兆4000億円)を占めるだろう」と予想していることを紹介しています。

 特に注目したいのは、劉氏が電力分野でカーボンニュートラルを実現する手段として、太陽光発電と蓄電システムの組み合わせが最適解であるとの見方をしていることです。このときの中国国内の太陽光発電の設備容量は2060年には現在の40倍の9500GW(ギガワット)に拡大するとも予想しています。

   

 ※追記2021.5.15   中国電力企業連合会(中電連)は423日、中国の風力や太陽光など再生可能エネルギー(再エネ)による発電容量が今年初めて石炭火力発電を超えると予測するとともに、今年1~3月期の発電設備への投資総額は795億元(約1兆3200億円)で前年同期比31.3%増を記録し、うち再エネ発電投資が91%を占めるとの レポートを発表しています。

 具体的には、中国全土の再エネ発電容量は2021年3月末で10億kW(キロワット)、総発電容量に占める割合は44.9%であったが、2021年には11.2億kWに達し、総発電容量に占める割合は47.3%まで伸びるとともに、再エネ発電は規模も割合も石炭火力を超えることになると見込んでいます。なお、石炭火力の発電容量は2021年3月末で10.9億kWで総発電容量に占める割合は48.8%まで減少しています。

 

   以上二つの記事から、中国が2060年までのカーボンニュートラルを国家目標として掲げていること、それを実行するためにカーボンフリー電源への巨額の投資が計画されていること、その中心は太陽光発電で、特に「太陽光+蓄電」への投資を最有力視する向きがあることなどを知ることができます。

   先日、オンライン形式で開催された米国主催の気候変動サミットでも、習近平国家主席二酸化炭素(CO2)排出量を2060年までに実質ゼロにする目標を再確認したと伝えられていますから、上記記事の内容は信憑性が高いと思います。

 

そして、今日の結論として確認しておきたいことは、若干私の独断になりますが、

   中国が以上の政策を実行しようというのは、なにも中国が環境に優しいグリーンな国になっているからではないと思います。なにより中国における大気汚染と健康被害が早急な対応を求められる深刻な状況になっていることによる不可避の政策選択と見るべきでしょう。

 もちろん、石炭に代わるカーボンフリー電源を確保できることになり、パリ協定の国際的な約束と義務を遵守できるからでしょうし、産業経済社会の生命線である電気エネルギーを調達できるという計算も大いにあると思います。

 そして、なによりも強調したいことは、中国は、カーボンニュートラルがいずれ初期投資コストを上回るベニフィット便益をもたらし、環境政策としてだけでなく産業経済政策としても十分にペイできるとの深い読みがあってのことだろうということです。

 環境エナジータウン直方を目指す関心からしますと、コスト便益判断に基づき戦略的に施策を展開する、中国の先見性としたたかさを大いに見習いたいと思います。 以上