ふるさと直方フォーラム

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基本政策を実施する施策の立案 ①の2-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(6) 2019.9.24

(前回からの続きです)

イ. 「『まちを豊かに』-立地環境を生かしたまちづくり」は「基本政策―施策 (Program)」の上下ないし包摂の関係にあるものとして体系的に適切か(体系性)

 

基本政策である『まちを豊かに』は、最終目標である「直方市に元気を取り戻したい」を政策として一段前に進める上下ないし包摂の関係にあるものとしては頭に入ってきにくいのに対し、「『まちを豊かに』-立地環境を生かしたまちづくり」は、理屈抜きでスーと頭に入ってくる気がします。「空港や新幹線へのアクセスにも恵まれ」ているというのはそこまで断定できるほどのものか自信ありませんが、直方市の特徴は、他の自治体に比べ公共交通の結節点がまちの中心となっていることにあります。」という認識は、かなりうなづけるのではないでしょうか。

 ただし、福岡市と北九州市だけでなく飯塚と田川との位置関係も含めて把握すべきでしょうし、さらに、行橋や苅田港方面とのつながりアップに取り組む土台になっていいように思います

 

ロ. 施策「立地環境を生かしたまちづくり」は基本政策を的確に実現できるか(有効性)

 実証的に論述するだけの情報を持っていないので、図中の〔狙いと意図〕を通して、有効性について簡単にコメントします。以下の1)から5)は図中のそれに対応しています。

 

1)  中心市街地の活性化に取り組むこと、そして「中心市街地に必要な機能は何なのか、どういった機能があればまちは活性化していくのか、好循環に至るための必要十分条件は何なのか等考えながら、まちづくりを進め」ること自体にまったく異議はありません。

 しかし、それらは「直方に元気を取り戻したい」という目標や『まちを豊かに』という基本政策とはすぐにつながるのですが、施策である「立地環境を生かしたまちづくり」とは直ちに結びつかないように思われます。

 

2)  「定住促進に応えるべく、まち中へスーパーなど最寄品の買い物ができる状況を作っていきたい。」という考え自体にもまったく異議はありません。しかし、これも基本政策「『まちを豊かに』と包摂関係にあると思いますが、施策である「立地環境を生かしたまちづくり」とはなかなか結びつかないように思われます。

 

3)  若い人たちにとって魅力ある働く場の創出、 IT産業等をはじめ、まち中での雇用機会の創出に努めることにより、まち中の昼間人口を増やし、就業者の生産性のより高い職種への転換やUIJターンによる高技能を持つ人材の転入につなげ、新しい産業を、稼ぐ力の大きな産業として、まち中に活性化をもたらすような取り組みを強化したい。」は、手段と目的の関係の理解が適切か疑問があります。

 

つまり、「若い人たちにとって魅力ある働く場の創出、 IT産業等をはじめ、まち中での雇用機会の創出」は手段ではありえず、なんらかの施策を講じて初めて実現できる目的であるように思います。ですから、手段であれば、外注に出したり、どこかでお金を出して購入することなどもできるでしょうが、手段ではないのでそれはできません。

 

そして、まち中の昼間人口を増やすなどは全国の多くの自治体で、就業者の生産性のより高い職種への転換は国レベル、経済産業省レベルで取り組んでいることで、地方の一小都市が単独でどうこうできる問題ではないように思います。UIJターンによる人材の転入だけは、直方市単独でもある程度の方策が見つかると思っていますが、そうした実現可能性のある道を探求してほしいと思います。

 

4)  「保健福祉センターについて中心市街地の活性化に寄与できるよう駅周辺への立地可能性を早急に探」るというのも、1) 2)と同じで「直方に元気を取り戻したい」という目標とはつながりますが、施策である「立地環境を生かしたまちづくり」から直ちに出てくるものではないし、逆に立地環境を生かしたまちづくり」とは結びつかなくても中心市街地の活性化に寄与すると判断できるなら、決定につなげていいと思います。もちろん、事業予算の出所や後に実施される政策評価における目的達成の度合いにも影響してきます。

 

なお、「ソフト面でも文化・芸術の振興を通じてまちの魅力づくりを進め」ることは基本政策『まちを豊かに』には包摂されると思いますが、「立地環境を生かしたまちづくり」とは直ちにつながりにくく、保健福祉センターと同様、立地環境を生かしたまちづくりとは結びつかなくても、まちの魅力づくりの観点から決定することが許される場合もあると思います

 

5)  ハードとソフトの両面からの地域コミュニティの再構築は具体的にどののようなものか、なかなかイメージが湧きません。また、「子供からお年寄りまで、安全安心で豊かさを実感できるまちづくり」は、確かに基本政策『まちを豊かに』に包摂して理解できます。

 ただ、それら安全安心や豊かさは普通は最終目標か、一つ落として基本政策で取り上げるのが一般ですから、施策である「立地環境を生かしたまちづくり」の〔狙いと意図〕で取り上げるというのはよく分かりません。したがつて、4)と同じで、事業予算の出所や後に実施される政策評価との関係で問題が生じます

基本政策を実施する施策の立案①-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(5)ー 2019.9.24

前回、「直方市に元気を取り戻したい」という目標と、それを政策として一段前に進めるはずの『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』の三つは、「まちを豊かに』や『人に夢を』は目標と同じレベルか、より上位に位置づけられる可能性があるなどの理由から、政策過程において目標を一段前に進める基本政策として、あまり素直に頭に入ってこないと申し上げました。

 

もちろん、基本政策はその後に施策の決定や事務・事業と続きますから、それら政策過程の全体が趣旨と目的を明確にして首長一貫したものになっているかなどを観察してからでないと、三つの基本政策のそれぞれが目標との関係で適切かどうかについても最終的な結論は出せません。それで、最終的な結論は大塚市長が発表している施策と事務・事業を含めた政策過程の全体を検討した後に判断することになります。

 そこで、最終的な結論を出す前の準備作業的なものになりますが、今回は初めに、「基本政策その1『まちを豊かに』を実施する施策 (Program) の立案」を取り上げます。大塚市長が発表している所信表明や抱負を下に図示していますのでご参照ください。

 

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ここでは、図で示しています『まちを豊かに』-立地環境を生かしたまちづくり」が、イ.「基本政策―施策 (Program)」の上下ないし包摂の関係にあるものとして体系的に適切か(体系性)、そして、ロ.そこで示されている施策を実施することにより基本政策を的確に実現することができるか(有効性)を検討します。

 

イの体系性基準は、第一次的には『まちを豊かに』-立地環境を生かしたまちづくり」が「基本政策―施策 (Program)」の上下ないし包摂の関係にあるかを見るものですが、体系的に美しく整っているかだけで終わる問題ではありません。つまり、最終目標―基本政策―施策と視野を広げて見ることにより、施策の意義や狙いがいっそう明確になります。これは施策を直接担当する職員にとっては「何のためにこの施策に取り組んでいるのか」という目的意識が明確になり、職務遂行能率のアップにもつながることでしょう。また、最後に的確な政策評価を実施するときの確固とした視点や基準を提供することにもなります。

 

ロの有効性基準は正・不正であるとか善悪などの規範的な価値基準ではなく、直方の実情に対する正しい理解を踏まえた社会常識的な判断になると思います。つまり、学者がするように十分な論証をしてあれこれ議論するというより、現時点での事実認識は最低踏まえますが、やや直感的に判断することになるように思われます。(続く)

目標を実現する基本政策や方針の決定②-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(4)ー2019.9.7、9.16、10.9

前回、「直方市に元気を取り戻したい」という目標と、それを政策として一段前に進めるために掲げられている『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』の三つが、政策過程における体系としてスムーズに頭に入ってこないと述べました。しかし、抽象論を重ねるだけではなかなかイメージを深めることができないと思います。

 

ちなみに、人口減少と少子高齢化に直面する現在の自治体が『目標とそのための施策』を策定しようとするとき、もっとも参考になるのは、究極の目標として『まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立』を目指している「まち・ひと・しごと創生総合戦略略」(平成 28 1222閣議決定。以下、創生総合戦略略という)でしょう。そこで、総合戦略を参照して大塚市長の真意を正しく反映できる基本政策と方針を考えることにしたいと思います。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/honbukaigou/h29-12-22-shiryou1.pdf

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上の二つの図は、創生総合戦略が示している政策体系を、原典を必ずしも正確忠実に再現していませんが、一つは、目標(現状認識と課題も)、政策の狙いと意図、政策の企画・実行に当たっての5つの原則、および政策の企画・実行に当たって克服すべき5つの課題を、もう一つは目標(現状認識と課題も)、政策の狙いと意図、政策(の「基本目標」) 、および施策(政策とパッケージになっている)を示したものです。(二つの図はできれば一つの図として示したかったのですが、単にスペースの関係でそれができなかったので、二つに分けています)

 

これを見ると、目標に基づいて政策を確定するとき、「人口減少、東京一極集中」の現状認識、「人口減少と地域経済縮小の克服」という課題はもちろんのこと、「政策の狙いと意図」も次のようにしっかり確認されています。すなわち、「地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を 呼び込む好循環を確立し、地方への新たな人の流れを生み出すこと、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻し、人々が安心して生活を営み、子供を産み育てられる社会環境をつくり出す」というものです。

 

このように、究極の目標である『まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立』を設定するさい、現状認識と課題、政策の狙いと意図、政策の基本目標がしっかりと確認されています。そして、究極の目標に関係する政策要素がしっかりと把握され明示されていると、市長だけでなく担当する職員の間でも問題意識や目的意識を共有しやすくなり、最終的に施策が的確に実施されることにつながると期待できます

 

大塚市長の場合、「国や県をはじめ他都市との連携を基本に、『投資のないところに成長はない』との思いに立ち、民間投資の呼び込み、投資対象の選定、民間投資の誘発を念頭に施策の展開を考えるとの基本方針だけから、『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』の三つ政策を導き出していますので、この点は極めて大きな違いです。そして、この違いが政策を適切に表現できていない理由になっているように思われます。

 

そこで、漠然とした提案になりますが、前に目標を設定するときに示した結論を現時点におけるスタートラインとし、そこから目標を実現する基本政策と方針を導き出して表現するというのはどうでしょうか。

 つまり、人口減少、財政危機、そして持続可能であることに十分留意し、福智山と遠賀川という自然環境に恵まれていること、そして福岡(博多)、北九州や筑豊筑後地区などを結ぶ交通の結節点に位置するという地理的環境にあることを直方の自己アイデンテティとして十分に認識し、これらをみんなの知恵と工夫で活かしていくことを基本政策と方針として表現するです(目標(Goal)の設定と現状認識、原因分析、課題の発見―公共政策の定石から見る大塚市長の所信表明や抱負(2)、2019.8.22)詳しくは後日、大塚市長の施策と事務・事業を紹介した後、検討します。

 

 

 

 

 

 目標を実現する基本政策や方針の決定①-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(3)ー2019.9.6、9.16

大塚市長の所信表明や抱負が公表されていますので、公共政策を進めるときの定石を踏まえ、検討を加えコメントしています。大塚市長が所信表明や抱負で明らかにしている未来につながる元気な直方を創りたいという最終目標に強く共鳴していますので、コメントする基本姿勢は、目標(Goal)が定まった以後の政策過程(Policy Process)について、より建設的で目標を実現できる政策形成や政策を実施する施策(Program)を提案することです初めは、目標に形を付けるというか外枠を示すなどして、目標を実現する基本政策と方針を検討します。

 

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ここでは2点、指摘します。

一つは、「直方市に元気を取り戻したい」という目標と、それを政策として一段前に進めるはずの『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』の三つが、目標とそれを一段前に進める基本政策の関係にあるものとして、あまり素直に頭に入ってこないのです。つまり、目標に始まり、基本政策と施策の決定、事務・事業の実施、そして政策評価と続く政策過程の全体の中で、上記三つの基本政策は、最初に設定した目標の実現に向かうスターターとして適切か、正直、疑問を感じます。

 

大塚市長の意図や狙いを正しく理解できていなければ申し訳ないのですが、『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』それぞれに対する賛否はさておき、おそらくは、「まちを豊かに』や『人に夢を』は目標と同じレベルか、もしかしたらより上位に位置づけられる可能性があるように思います。

 

逆に『産業に活力を』は政策より下位の施策段階に位置づけ、目標と『産業に活力を』との間にもう一段、たとえば「市民の所得をアップさせる」など、二つをつなぐ政策レベルの提案を置く必要があるかもしれません。

 

もちろん、基本政策の後に施策や事務・事業と続きますので、最終的な結論はその政策過程の全体が、目的と趣旨が明確で首長一貫しているかどうかを見て判断しなければいけません。

 

もう一つは、政策を決定するときの基本方針についてです。『投資のないところに成長はない』との思いに立って、投資をいかに呼び込むか、どこに投資をしていくのか、民間投資を誘発するにはどうすればよいかを念頭に施策の展開を考えていく。」と述べています。

 

『投資のないところに成長はない』という考え方自体が間違っているとは思いませんが「投資」と言うと「利益を見込んでお金を注ぎ込む」という印象が強いので、少し違和感を覚えます。現状認識等を踏まえて目標を設定し、目標実現のために、人、モノ、カネのリソースを大胆に投入するということはあると思いますが、もちろんそれは明治政府による殖産興業政策や官営八幡製鉄所の創業(1901年)のように、行政が民間の経済活動をリードするということではありません。

 

また、グローバル化しハイテク化した経済競争を生き抜いている民間活動を、地方小都市の行政が適切にリードしたりウインウインの関係になるよう誘導する能力を備えることができるとも思えません。せいぜい、民間活動の邪魔をしないようにするか、一方の利益が他方の損失になるゼロサムの関係に陥ることなく企業が活動しやすい環境を整えることしかできないと思います

 

もちろん、今回の市長選挙で大塚市長は、「直方市に元気を取り戻したい」を目標に掲げ、その方策として「投資のないところに成長はない」を信念に、『まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』を訴えて当選されたのでしょうから、これを実施する資格があることに疑いはありません。

 

しかし、ことは「直方を元気にできるか」に関わっています。それで無理を承知でお願いしたいのですが、現実の政策運営では思い込みや先入観を排し、その時々に存在するさまざまな政策要素を過不足なく客観的に把握し、自然で、かつ合理的な政策プロセスの流れになっているか、そして着実に設定した目標の実現に向かって進行しているか、柔軟な姿勢で日々を振り返りながら前に進んでいただきたいと思います。(続く)

 

 

 

目標(Goal)の設定と現状認識、原因分析、課題の発見 ―大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(2)ー2019.8.23、9.16

f:id:FurusatoDosouForum2015:20190823131134p:plain1. 目標は素晴らしいの一言に尽きます。また、『このまちに生まれて良かった、住んで良かった、住み続けたいと云われるまちを、市民と共に創っていきたい』は『直方市に元気を取り戻したい』と表現は異なっていますが、同じ一人の人間の中にある『直方を愛する』気持ちを、角度を変え別の言い方で分かりやすく表わしているだけで究極の中身は同じかと思います

 また、目標を生み出す動機のようなものですから、目標そのものではなく小さいポイントでカッコ書きにして示していますが、(今を生きる私たちは、次代に誇れる直方を創り、しっかりと引き継がなければなりません)も、シニアな立場にいる者の覚悟として大変素晴らしいと思います。

 まったく異議はなく、こんな人が新しい市長になってくれたことがとても嬉しく感じられます。よく、「来た時よりも美しく」(Make it more beautiful than when we came.)と言いますが、小中高の間ずっと、そして大学生や社会人になってからも帰省するたび、元気をくれた“直方”を、私たちシニア世代は若い世代に干からびて渡すのではなく、「来た時よりも美しく」の精神でバトンタッチしたいものです!! 

 

2. しかし、直方市に元気を取り戻したいという目標が生まれる基礎・基盤を構成している大塚市長の判断には、以下の通り若干の疑問を感じます。

 イ 上記した図「現状認識と原因の分析、課題の発見」の1)で、この4年間、財政問題などを理由に様々な事業が見直され、機会の損失をもたらしたというのは、なかなか公式には確認できませんがそうした傾向はあったように感じています。

 私たちが提案している“道の駅” 構想が検討された様子はありませんし、たとえば、勘六橋の付け替え工事はようやく完了したようですが、私は二中に通学する頃から、勘六橋西・新町から門前町・百合野方面への道を通っていましたから、道幅が狭くいつも危険を感じていました。そのため安全対策に主眼を置いた道路拡幅工事をしてほしいなとずっと思っていたのですが、それも壬生市長の判断で止まっていると聞いたことがあります。

 

 ロ  上記した図の2)で、直方市が地域の活力を取り戻していくためには、「唯一、国・県はもとより民間の活力などを如何に呼び込んでいくかです」「国や県の制度の中でしか生きてはいけません」というのは、今日、過去の遺物になっているはずの20世紀型中央集権と高度成長時代の発想にとらわれすぎのように思います。

 内閣府の地方創生担当室であればいくぶん雰囲気も変わってきているのでしょうが、多くは縦割り行政と機関委任事務時代からの発想を払拭できないでいる国や県が、一つ一つの自治体の事情に合わせて親身になって考え応援してくれるなんてことがありえないことは、皆さん、経験から十分に分かっておられるはずです。

 

 今日求められている地方創生の基本は、自立しようとする地方がその個性をしっかりと自覚し、独自性を生かす道をまずは自力で探り出し、そうした作業の結果として、自治体としての目標、目標を実現するための政策および実施する施策や事業という政策プロセスをはっきりと提示することだと思われるのです。政府の地方創生施策は頑張る自治体を支援するというだけであり、他力本願で依存してくる自治体を応援するなどは予定されていません。

 

 たしかに、「直方市は絶海の孤島ではなく他都市との関係性の中でしか存立しません」というのはその通りだと思います。しかし、他都市との関係性をマイナス(負)要因として認識し、他都市に依存し助けてもらおうというようなことでは、「次代に誇れる直方を創る」ことなどけしてできないと思います。

 そうではなく、交通の結節点にあるという直方市の特性を十分正しく認識し、それを成長し発展するためのプラス要因として活かしていくことこそ、未来に向けた道であると信じています。

 

 ハ  上記した図の3)のまちづくりの方向性とサンリブなど事業者の経営判断への影響は、きっとそうだと同感です。一方、西鉄バスセンター跡地を保健福祉センター事業として活用することや筑豊電鉄の延伸については、視野を広げたまちづくりと社会環境の変化を踏まえ、現在の社会環境においてはどうするのがベストか、もう一度考え直してみたいと思っています。

 

3 一方、大塚市長が所信表明や抱負で明確に押さえていないことに言及します。

 

当フォーラムはかねてより、直方市がこれからの政策形成や政策選択を考えるときに避けることのできない大きな前提要因として、高齢化と若者の流出による人口減少と財政危機の二つがあることを繰り返し指摘しています。また、高度経済成長の夢は終わっているし再現を期待できないこと、そして地球規模で温暖化が急速に進行して異常気象が頻発していることを念頭に、中央政府だけでなくすべての個人と自治体も、政策要因として「持続可能」であることをけして無視できないと考えています

 

ですから、結論は、人口減少、財政危機、そして持続可能であることに十分留意し、福智山と遠賀川という自然環境に恵まれていること、そして福岡(博多)、北九州や筑豊筑後地区などを結ぶ交通の結節点に位置するという地理的環境にあることを直方の自己アイデンテティとして十分に認識し、これらをみんなの知恵と工夫で活かしていくような政策プロセスを提示したいということになります。

 

以上、直方に元気を取り戻したいという目標には賛成ですが、目標が生まれる基礎というか基盤を構成している大塚市長の判断には若干の疑問を感じていることを述べました。この「賛成と疑問」が今後どのように展開していくか、長くなりましたので今日はここまでにし、次回以降、目標を実現するための基本政策や方針、基本政策を実施する施策や事務・事業という政策プロセスに関する議論の中で、議論を深めていきたいと思います。

公共政策を進めるときの定石 ー大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(1)ー 2019.8.21

前回、大塚市長の所信表明や抱負が公共政策を進めるときの定石に従っていることを積極的に評価する旨述べた。それはもちろん、所信表明や抱負を発言する方法というかスタイルを積極的に評価しているというのであって、発言内容について賛成とか反対しているわけではない。公共政策を進めるときの定石に従っているから、思想信条やイデオロギーに関わる議論とは異なり、賛成するにしろ反対するにしろ、議論の焦点が定まりやすくなるだろうし、噛み合った意見交換や質疑応答ができるから歓迎するというだけのことである。

 

もちろん、市長や職員は、担当する現在進行中の職務を、常に政策過程全体の流れとの関係で客観的に捉えて冷静に評価することができるだろう。また、議員や市民、外部のマスメディアなども市政全般との関わりで、個別の施策や事業の展開状況を正しく理解することが容易になると期待できる。かくして、市政に関心あるすべての者が政策の意図や効果などについて建設的に意見を交わすことができるし、行政評価の段階を追加すれば、おのずから望ましい修正も生まれてきそうである。

 

そこで、公共政策の定石という視点から見るとき、大塚市長の所信表明や抱負がどのように見えるか、パワーポイント計7頁を準備してみた。これを使って、ふるさと直方フォーラムの立場からの感想や希望を述べていくことにしたい。

 

なお、以下の図表は、パワーポイントで作成したものをピクチャーとして保存し、それをこのブログに挿入するという方法を用いていますので、若干、判読しにくいかもしれません。もちろん、大塚市長の所信表明や抱負の正しい原文は、直方市のホームページに入って見ることができますから、そちらでご確認ください。また、パワーポイントを作成するに当り、大塚市長の所信表明や抱負を善解して作成したつもりですが誤解による不良品はありえます。そのさいはお手数ですがご指摘ください。ご指摘と併せ、訂正して公表します。

 

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さて、今日における公共政策の到達点は、細かい異論はありえるが、およそ公共政策は、最終目標(Goal)の設定、現状認識と課題の発見、課題分析を踏まえての基本政策(Policy)の確定、基本政策を実施する施策 (Program) の立案、施策を具体化する事務・事業(Project)の実施という手順を踏んで実行されるというものである。近時、政策過程としてはこれに政策評価が加えられ、一巡すると、経験に基づく情報が最終目標(Goal)の設定、再び同じ作業を繰り返すことになる(目標の設定以外の基本政策や方針の確定、施策の立案、事務・事業の実施のそれぞれにおいても、「現状認識、原因分析、課題の発見」が意識的かどうかに関係なく不定期に行われ、それぞれの枠内でフィードバックされることを否定するものではない)

 

さらに、以上すべてのプロセスについて、主体(誰が策定するか)、住民・市民・NPO等の関与(Public Involvement)をどうするか、情報の公開や説明責任をどう果たすかなどの論点が平行して存在する。なお、以上のすべてを行政計画として総合計画的なものにまとめることがある。 (続く)

大塚市長の所信表明と「市長の部屋」を訪問して はじめに 2019.8.16

関東から神戸の自宅に引き上げる作業などに手間取り、それを8月初めに完了してしばらくぶりに直方市のホームページに入り、大塚市長の所信表明に接した。また、「市長の部屋」も訪問し、「直方市に元気を取り戻したい」との抱負も読ませていただいた。4月の市長選挙から4ヶ月が過ぎようとしている今、選挙の興奮も一段落し、お盆を過ぎて来年度の予算編成作業などの実務に追われるのであろうが、所信表明や抱負を読んでの感想や希望を述べておきたい。動機はもちろん、未来につながる直方を創るためである。 

 

さて、所信表明や抱負の中身についてあれこれ言う前に、今日は大塚市長の所信表明や抱負が公共政策を進めるときの定石に従っていることを積極的に評価しておきたい。公共政策を進めるときの定石については次回詳しく述べるが、簡単に言うと、現状を認識して課題を発見しつつ目標(Goal)を設定する。つぎに、目標を実現する政策(Policy)や方針を明らかにする。そして、政策を実施する施策 (Program) を立案するとともに、事務・事業(Project)として施策を実施するという手順である。

 

そこで大塚市長の信表明であるが、「直方市の現状認識とそれらを踏まえた基本姿勢から申し上げ、次に目指したい直方市の目標と施策、そして市政運営にあたっての基本的考え方について述べさせていただきます。」という構成である。また、「市長の部屋」では、「まちを豊かに』『人に夢を』『産業に活力を』という3つの政策を柱に、市民と共にスピード感を持って直方市に元気を取り戻したいと思います」と述べている。

 

思い出すと、4年前、壬生前市長は自民や民主(当時)、公明各党の推薦を得るとともに河野前々市長の政策を継承するとして立候補し、他方で、公平公正で透明な政治を実現するなどと訴えていた。そして、教育、文化、企業誘致、農業、中央省庁との人事交流などの個別施策を展開した。

 

しかし、壬生氏の最終目標自体が明らかでないため、それとの関係における「政策」以降の「施策」や個別の「事業」の位置づけ、そして、施策や事業の実施により最終目標との関係でどのような成果を実現できたかなど、公共政策に関する定石を踏まえた議論ができず、単発で賛成と反対の主張をするのが精一杯になり、結局、外部からは全体像が分からず見えないままに4年間が過ぎてしまった気がする。

 

20世紀の終わり頃まで、政治家は選挙のときだけ、政策ではなく、「公約」を掲げ、当選後はそれが空手形に終わっても、政治家本人も国民もそんなもんだと少しも気にしなかった気がする。そんな時代と比べると、地方の小都市である直方市の政治と行政にも随分と変化の兆しがうかがえそうだし、望ましい方向への変化であり大いに期待したい。(続く)