ふるさと直方フォーラム

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「電池サプライチェーン協議会」の設立に思うこと 「環境エナジータウン直方の提案」の機は熟した❣ ② 2021.4.5

  先日来、“環境エナジータウン直方”の提案が正しかったことを裏付けるニュースを二つ見かけています。“環境エナジータウン直方”の提案を実行に移す機が熟したことを確信させるものです。本題に入る前に、今日はそれを紹介しておきたいと思います。 

1⃣ 一つは、読売新聞 2021/03/08付け「EV電池安定確保へ、官民30社がタッグ…中国に対抗」の記事です。 

 ⑴ それによりますと、電池製造大手GSユアサや、トヨタ自動車パナソニック合弁会社、原材料を供給する住友金属鉱山などが、電池分野で中国の存在感が高まる中、国際的な競争力を強化する狙いで、一般社団法人「電池サプライチェーン協議会」を設立するということです。

 この記事は、「電気自動車(EV)などに使う車載用電池を安定的に生産・供給するため、官民を挙げた取り組みが始まる。国内の関連企業約30社が新たな協議会を設置し、経済産業省と連携して戦略を練る」と述べています。 

 ※1 大変、興味を引くテーマですので「電池サプライチェーン」でウエブ検索してみました。すると、上記関連企業などがそれぞれのHPで同様の発表をしています。また、ITの専門誌ITmedia材料や原料を含めた電池のサプライチェーンにおいて健全な発展と国際競争力の強化を図る」もので、「政策提言タスクフォース」と「標準化タスクフォース」の二つが主な活動になると紹介しています

    ※2 関連して、2035年までに国内の乗用車の新車販売をすべて電動車にする目標の実現に向けての課題や支援策を話し合う経済産業省国土交通省の共同検討会で議論が始められたとの記事もあります。

    集合住宅への充電設備の普及や電動車を購入した人への優遇策を検討すべきだといった意見が出ていますが、車の電動化には蓄電池を安く大量に生産する態勢づくりが欠かせないとして、政府による支援策を議論していくべきだという指摘も出ています。(NHK、“2035年までに新車販売をすべて電動車に” 国の検討会初会合、2021年3月8日)

 

 ⑵ ところで、わが国では今日改めてサプライチェーンの提案をするまでも なく、かっては関西の大阪湾岸域に、サプライチェーンに類似する「バッテリーベイ」と呼ばれたバッテリーの生産供給態勢があったのです。下記、2020年9月7日付けを参照。 

 しかし、中国や韓国の国をあげての追い上げにあい、2010年代の10年の間に「リチウムイオン電池分野における日系企業の世界シェア推移」が中国や韓国の後塵を拝す状況に陥り、大阪湾岸域のバッテリーベイはほとんど消滅してしまったようです。

 

  ⑶  ただし、バッテリーに関する日本企業の可能性が完全に消滅してしまったかいうと、けしてそんなことではないようです。

 電気自動車などに使われる電池技術に関連する特許の世界的な出願状況について、欧州特許庁とIEA=国際エネルギー機関が公表した報告書をNHKのニュース記事が報じています(NHK「電気自動車などの“電池技術” 特許で日本が世界をリード」2020年9月24日)。

 記事によりますと、2018年に出願された上記特許は、世界全体でおよそ7000件、日本は2300件余りとおよそ3分の1を占めている。また、おととしまでの19年間で、こうした特許の出願件数が最も多かった企業10社のうち、7社が日本の企業だった
 同時に、中国市場での電気自動車の販売台数が去年、110万台と、世界全体の半分を占めたのに対し、日本は2%ほどで、電池技術関連特許での世界でのリードが、日本国内の電気自動車市場の規模の拡大につながっていない

 そして、リチウムイオン電池開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが次のようにコメントしていると紹介しています。 

 「電池技術の用途が、スマートフォンなどのモバイル関連から電気自動車へと向かう中で、日本の自動車メーカーが技術開発をリードしている。技術開発を、産業にどう生かしていくかは次なる課題で、日本は技術開発は一生懸命やっていても、実際のビジネスで負けているという意見もあり、技術開発とビジネス化の両面から見ていく必要がある」 

 

 ⑷ 上記⑵と⑶は何を意味しているのでしょうか。

2020年9月7日付けの結語で私は川上から川下まで、関連企業が国内に集積し、お互いに切磋琢磨していることが、最終製品の競争力の源泉にもなっている」との指摘はきわめて正しいように思えると述べていました。しかし、そこで紹介していました日系企業の国際的競争力の源泉」と題する指摘は現実には活かされなかったということでしょう。

しかし、「過去から培われてきた生産技術や関連企業とのすり合わせ」が日本製品の競争力の源泉になっているとの指摘は今日なお傾聴すべきと思われます。以下に再度、引用しておきます。 

 

  ※ 日系企業の国際的競争力の源泉 (考察⑷ 競争力の源泉は関連企業が集積し切磋琢磨することにあるー部素材別シェアの推移と関係企業の動向-2020.9.7 環境エナジータウン直方創造のための市民目線からの政策選択メモ ⑲ - ふるさと直方フォーラム)

 競争力の背景 (2011年ものづくり白書117頁)

   リチウムイオン電池分野における日系企業の競争力は、技術面での優位性に支えられている。最終製品については、日本製品の「安全性」と「高容量化」の高レベルな両立が市場で評価されているといわれる。

 一方、部素材についてはこれに加え、最終製品メーカーにおける生産工程に配慮した品質特性の付与(耐久性、加工性など)、生産技術(均質かつ高品質な大量生産技術、試作から量産への切り替えや他品種生産への切り替え等の生産ラインの柔軟性など)、信頼できる素材メーカーとのすり合わせにも言及があった。

 過去から培われてきた生産技術や関連企業とのすり合わせは、海外企業から簡単に模倣されるものではなく、日本製品が高い評価を維持している一因である。川上から川下まで、関連企業が国内に集積し、お互いに切磋琢磨していることが、最終製品の競争力の源泉にもなっているといえる。

 

 ⑸ 上記のように考えていましたから、「電池サプライチェーン協議会」設立のニュースは喜ばしい限りです。リチウムイオン蓄電池という科学技術の最先端に関わる話ですし、その上、すさまじい世界的競争の中でしのぎを削る個別企業の合従連衡に関わることですから、門外漢の素人が気楽に期待するような訳には行かないことは理解できます。 

   それでも、ノーベル賞を受賞された吉野さんが指摘されているように、再生可能エネルギーを蓄電できるリチウムイオン電池が、今年とか来年といった目先ではなく、少なくとも10年から30年先の目指すべき持続可能な未来社会づくりにおいて中核となる役割を果たすのだという強い使命感で、なんとか困難や障害を乗り越えてほしいと心から願うのです。 

   そういうわけですから、関係者が連携して「電池サプライチェーン」の設立に至ったというのは、日系企業の国際的競争力の源泉につながる砦を築くことができたことになると思われます。これが大いに機能して日系企業の突破口となることを期待したいと思います。

 

 ⑹ 一昨日のことですが、GAFAの一つで巨大IT企業の米アップル社がカリフォルニア州にバッテリーを使った再生可能エネルギーの蓄電施設建設を発表したという記事を見かけました。

 アップルといえば、「iPhone」「iPad」、「Mac」といったハードウェアだけでなく、OSやアプリケーションを開発して提供している企業ですから、まったくの異業種分野への進出かとびっくりします。

 記事によりますと、現在、カリフォルニア州の同社全施設にエネルギーを供給している太陽光発電所近くに上記蓄電施設を建設する予定らしく、240メガワット時のエネルギー(約7000世帯が1日に使用する電力に相当)を蓄電するようです。

 特に注目したいのは、アップルはEV車の米テスラ社からバッテリーパックの供給を受けることで、テスラのリチウムイオン蓄電システム「メガパック」85基を設置するようです。すでに大きな成功を収めているIT巨大企業がさらなる前進を図って異業種間で連携し、未来社会の基盤を構築しようとしていることに感嘆します。

 

 ⑺ 以上の記事を“環境エナジータウン直方”の創造に引き付けて考えますと、再生可能エネルギーリチウムイオン電池、その他、関連する産業が「集積し、お互いに切磋琢磨」できるような地理的環境を整えて提供するということになるかと思います。

    直方市内の関係する当事者が尽力するのはもちろんのことですが、大事業ですから、昔の筑豊炭田を抱えていた飯塚・田川・中間などの隣接自治体や政府、そして産業経済省などの関係機関とも十分に協議し、連携して進めていってほしいと思います。このことを特に強調して、“環境エナジータウン直方”に関心をお持ちの皆様にお願いしておきたいと思います。 (続く)