⑷ イ 連携中枢都市圏構想に乗っかり、関係する重要な事務処理を連携中枢都市である北九州市にお任せし、第三者所有方式で太陽光パネル等を設置するというのは、直方市が自分で必要な事務を遂行することに比べ、はるかに気楽で効果的効率的かもしれません。
しかし、独立した自治体としての未来ビジョンに関わる事務処理を安易に連携中枢都市に依存するというのであれば、そもそもなんのために市役所内に企画室であるとか経営戦略室、あるいは環境政策課などの組織を置いているのか問われることになると思います。ひいては、自治体として、団体自治と住民自治に関する基本的権能が認められているのに、それらを活用しない・できないというのであれば、人件費などの公金を使って首長や自治体専属の議会などを置いておく意義までもが問われることにもなりかねません。
連携中枢都市圏の形成は、圏域内の自治体を合併に誘うものとなる可能性があり、「ステルス(隠れた)合併」とも揶揄されているとの指摘があります(本多滝夫「連携中枢都市圏構想からみえてくる自治体間連携のあり方」月刊『住民と自治』 2016年4月号 )。自治体としての存在が認められているのに、なんのために、また、どのように連携し、それでも独立した自治体としてのアイデンティティ(独自性)を保持していくかは、直方市だけでなく連携市町村すべてが真剣に考えなければならない課題ですが、直方の市長と議会はしっかり議論して考えてほしいと思います。
ロ 「直方市SDGs未来都市計画 未来へつなぐ「ひと・まち・自然~RoadTo2030Team NOGATA~」は、第3次直方市環境基本計画(2023年3月策定予定)について「脱炭素化に向けてバックキャスティングの観点から計画すると述べています。
バックキャスティング※は確かに注目すべき計画策定に関する概念だとは思います。しかし、同時に、まだ誰もほとんど実践したことがなく、もちろん身に付いていないと思います。そこで、ようやく一般的になってきた戦略論の思考方法を活かすとすれば、まずは直方市が目指す将来の姿(ビジョン)をみんなでしっかり議論して目標を明らかにすべきでしょう。
※バックキャスティングというのは、仮説・検証するPDCAサイクルの作業を、現在から未来に向かって始めるのではなく、未来の目標を達成するときから始めて現時点に至り、それぞれの時点で何をなすべきかを思考するもののようです。計画策定に関する注目すべき概念だとは思いますが、バックキャスティングであるとか、反対のフォアキャスティングなどといったことは、目指す将来の姿(ビジョン)をしつかり描き出した後に、その目標をどうやって実現するかを考えるときに選択する方法論だと思います。
ハ これからの直方市の施策を考えるときに大事なことは、まずは直方が目指す将来の姿(ビジョン)をみんなでしっかり議論して明らかにし、それをたとえば定住自立圏構想における中心市宣言として発表し、それをいつもみんなで確認し共有することができるようにすることだと思います(飯塚市は平成29年12月22日付で中心市宣言書7頁を公表しています)。
そして、戦略論の方法論を適用して取り組むというのであれば、まず目指すべき将来の姿(ビジョン)を明示した後、目標を実現するための方策を「目標の明示--目標を実現する政策の体系--施策の列挙--事業プロジェクトの実施」として策定しなければいけません。そして、このそれぞれについて、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAサイクルに即し、随時、品質の管理(マネジメント)のための作業を行うことになります。
ニ 上記した基本姿勢を具体例に即してハッキリ申し上げます。
現時点で公共施設一カ所に太陽光発電施設を設置するときも、少なくとも一世代30年後の直方の未来像を具体的に描き出したうえで、その未来像のなかに明確に位置付けたうえで実施すべきです。環境改善のSDGsに取り組むなどというのは、持続可能な未来都市を創造する地方創生の計画とは言えないと確信します。(了)