ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

製造業を強化することが地域経済循環率を1(=100%)以上にする効果的な取組みになるか  基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(16)ー2019.11.28

ⅵ 「その他支出」では他地域に443億円流出し、その支出流出入率は-84.6%です。これをどう評価すればいいか。そして、他地域へ443億円流出の現状を改善する有効な方策はなにか。果たして製造業を強化することが地域経済循環率を1(=100%)以上にする効果的な取組みになるか

 

 ①「その他支出」とは、政府支出と地域産業の移輸出入収支額等が含まれており、市役所や国の出先機関等からの発注額などもこの項目に含まれるとされています。政府支出というと随分、硬くて漠然とした響きがありますが、市役所や国の出先機関等が行う発注額などもこの項目に含まれるということですので、公共事業や物品調達による支出をイメージすればいいと思います。

 ②地域産業の移輸出入収支額というのも分かりにくい言葉ですが、「支出」欄外の【注記】では移輸出入収支額は「地域内産業の移輸出-移輸入」により計算されるとしています。

 つまり、「移輸出入収支額とは、域外への移出に伴う収入額から域外からの移入に伴う支出額を差し引いたもの」(前掲・米山知宏)です。結局、「その他支出」で地域外への流出が多いということは、「地域外に対して商品・サービスを移出する以上に地域外からそれを移入している、つまり、地域として貿易赤字状態である」ことを意味しています 

直方市の場合、その他支出の支出流出入率が-84.6%であるということは、地域外への流出を構成する二つの要素の支出が地域内への支出を大きく上回っていることを意味します。

 そして、前に引用しましたように、「この値がマイナスの場合は、地域で稼ぎ、地域で得た所得が他地域へ漏れていることになり、企業の新たな生産販売活動に繋がらず、地域の経済循環がうまく機能していない可能性があります。地域が地域内外の消費、投資をより多く受け止め、稼ぐ力を付けて、付加価値を高めることが重要です。結果として、地域の労働生産性も向上していきます」が当てはまります。 

④しかし、地域外への流出を構成する上記二つの要素、つまり、市役所が実施する公共事業による地域外への支出と、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字の額という二つの内訳はリーサスでは明らかにされていないようです。

 ただし、直方市役所であればリーサスや総務省経産省と県から提供される産業連関表などにより、二つの要素の詳しい内訳を入手できているはずです。そこで、二つの要素の内訳を明らかにしていただいたうえで「その他支出」の支出流出入率を改善してプラスに近づけるための方策を考えなければいけません。 

⑤では、製造業を強化することにより、「その他支出」の支出流出入率を改善できるかという関心からしますと、市役所が実施する大型の公共事業については入札と受注資格に関する制限がありますから市外大手の受注が多く、そのため地域外への支出額を減らすことは難しいかもしれません

 それに、大型の公共事業はほとんど建設業に関係しているでしょうから、製造業を強化できたとしても、直方市内の製造業者が公共事業を受注することにはならず、したがつて、市役所が実施する公共事業による地域外への支出額が減って「その他支出」の支出流出入率が改善されるという関係にはならないと思われます。 

⑥物品調達に関しては、市役所が地域外への発注を減らして市内から調達するということは、随意契約に関する規制などがありますが、ある程度可能かもしれません。

 もちろん、製造業を強化することにより技術力が高度化して、生産する商品・サービスの質が向上するとともに量も増加する結果、生産する商品・サービスに対する地域内外からの需要が増え、地域外に対する商品・サービスの移出が増えたり、あるいは地域内で物品調達されることが増え、その分地域外からの移入が減る、結局、移輸出入収支が改善されるという可能性はありえるでしょう。 

 しかしこれも、直方市内の付加価値生産における製造業を含む第2次産業の比重は全体の41.7%(595÷(151+595+682))であり、製造業はさらに23の多業種に分類されていましたから、1,2の業種の製造業を強化できたとしても、市内の生産と付加価値額が大幅に改善し、さらに移輸出入収支も大きく改善されることにはならないように思われます。 

さらに、より影響する要因ですが、以前にリーサスの下図を示して検討しましたように、「その他支出」における産業別の移輸出入収支額において、第2次産業の移輸出入収支額は0を割ってマイナス25億円で、生産額の構成割合は41.4%でした。

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191128161730p:plain

直方市産業別の移輸出入収支額(2013年)

 すると、「その他支出」における他地域への流出は443億ですから、第2次産業、あるいは第2次産業に含まれる製造業の移輸出入収支を0に近づけるとか、もっと改善できたとしても、「その他支出」における地域外への流出を大きく減らすことは難しいと推測されます。 

(結論) 結局のところ、市役所が実施する公共事業による地域外への支出にしろ、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字にしろ、1,2の業種の製造業を強化しても他地域へ443億円が流出している「その他支出」の現状を大きく改善することは困難なようです。

 

※補足 RESASメニューから「地域経済循環マップ>生産分析」と辿ると、移輸出入収支額を産業別に表示したものを確認できます。しかし、前掲・米山知宏では、産業別でなく、下図のような、より細かい業種別の移輸出入収支額と全体に占める構成割合が示されています。そのような業種別の移輸出入収支額を示すデータを利用できると、より具体的な検討が可能になりますので、その時点でこの箇所を訂正して書きなおします。 

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191128180414p:plain

前掲・米山知宏が示している、業種別の移輸出入収支額と全体に占める構成割合を示すデータ図

 

製造業を強化すると投資対象としての直方の魅力が向上して市内での投資が増加するか!? 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(15)ー2019.11.27

ハ 以上で明らかになりましたように、域内経済循環を確立することは決定的に重要です。ですから、地域経済循環率92.6%については、宮若市116.7%、福岡市111.8%を除き、直方市の周辺自治体にはもっと憂慮される自治体があることを認識しつつも、直方市の地域経済循環率が1を割る(=100%を切る)原因を明らかにして、果たして製造業を強化することがこれを1(=100%)以上にする適切で効果的な取組みになるかを検討します。

 

ⅰ 初めに、地域経済循環図(2013年)の「支出」の欄にある「詳細に見る」をクリックすると下の図を見ることができます。

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191127222837p:plain

https://resas.go.jp/regioncycle/#/map/40/40204/2/2013 注 上の図の中にある【グラフと表の見方】が途中までしかピクチャできていないのですが、末尾の「・・・地域内に支」に続いて、以下の文章が続きます。 (・・・地域内に支)出された金額が多い場合は、その差額が赤色のグラフとして表示され、支出が地域外から流入していることを意味します。上記の表は、地域内の住民・企業等が支出した金額に対する流出入額の比率を示す「支出流出入率」を把握することができます。 表に記載されている順位は、都道府県単位では全国47都道府県、市区町村単位は全国1,719市区町村におけるランキングとなっています。

ⅱ つぎに、「詳細に見る」をクリックして見ることができる支出」の詳細図の棒グラフと表が意味していることについて、上の図の中にある【グラフと表の見方】を参照してください。以下にコピーして貼り付けていますが、文章中の次の箇所が重要です。

 

支出」では、地域内の住民・企業等に分配された所得がどのように使われたかを把握することができます。・・・各棒グラフは、地域内で消費・投資された金額を示しています。地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が少ない場合は、その差額がグラフでは空白の四角で表示され、支出が地域外に流出していることを意味します。逆に、地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が多い場合は、その差額が赤色のグラフとして表示され、支出が地域外から流入していることを意味します。

上記の表は、地域内の住民・企業等が支出した金額に対する流出入額の比率を示す「支出流出入率」を把握することができます。表に記載されている順位は、都道府県単位では全国47都道府県、市区町村単位は全国1,719市区町村におけるランキングとなっています。

 

ⅲ 簡易解説さらに詳しく次のように説明しています(簡易解説の「③支出の分析」(4/15頁)は例を用いて解説していますが、以下ではその解説が直方市の状況に妥当するよう、解説中の数字等については、リーサス中の直方市の地域経済循環図・支出(2013年)に記載されている数字等と置き換えて示しています。また、文字の色は原文はすべて黒色です)

 

棒グラフは地域での「民間消費額」、「民間投資額」、「その他支出」の額を示したものです。「その他支出」とは、政府支出と地域産業の移輸出入収支額等が含まれており、市役所や国の出先機関等からの発注額などもこの項目に含まれます。この棒グラフの青い部分は、消費や投資など、地域に支出された金額を示しています。直方市の場合は、「民間消費額」が1022億円、「民間投資額」が223億円、「その他支出」が81億円となります。

 

一方、青い部分の上部にある点線に囲まれた部分は、他地域への流出額を示しています。直方市の場合では「民間消費額」は他地域から379億円流入しており、「民間投資額」では73億円流出しており、「その他支出」では他地域へ443億円流出していることになります。

 

次に、棒グラフと併せて表示される表の「支出流出入率」とは、地域内に支出された金額に対する地域外から流入・地域外に流出した金額の割合を示します。この値がマイナスの場合は、地域で稼ぎ、地域で得た所得が他地域へ漏れていることになり、企業の新たな生産販売活動に繋がらず、地域の経済循環がうまく機能していない可能性があります。地域が地域内外の消費、投資をより多く受け止め、稼ぐ力を付けて、付加価値を高めることが重要です。結果として、地域の労働生産性も向上していきます。

 

ⅳ 大変、示唆に溢れた文章ですが、重要な点を確認し、教訓を整理しておきたいと思います。

①初めに、直方市の地域経済循環率が92.6%であることを支出面に着目して具体的に示すと、「民間消費額」が他地域から379億円流入し、「民間投資額」では73億円流出、「その他支出」も他地域に443億円流出しています。そして、表の「支出流出入率」を併せ見ますと直方市の地域経済循環率92.6%が意味するところをより深く知ることができます。

 

②すると、直方市の「民間消費の支出流出入率(地域外からの流入379÷支出(地域内ベース) 1,022」は37.1%で全国1,719市区町村中なんと80位とトップ100にランクインする優秀さです。

 市内に居住する比較的若い世代を中心に博多に出かけて買物したり、市外でレジャーを楽しんでいますから若干意外ですが(これらは本来、分子の要素である「地域外に流出した消費の額」として計上すべきかと思いますが、どうもここでは無視されているようです。果たしてそうなのか、なぜ無視していいのかなど、後日分かれば訂正します)、地域外から多額の消費需要が流入しているなんて大変結構なことです。

 

ただ、地域外から多額の消費需要が流入しているというのは、市内の商店街における消費というよりは、郊外の直方イオン、明治屋もち吉などで、地域外からの個人や企業による消費が貢献しているということではないかと推測されます。そのため、「郊外型店舗が地域内にあっても、消費の場が郊外に分散することで、消費者が滞留し回遊する時間が減ると、消費の水準が低下することがデータ上明らかになっています。」(前掲、地域経済循環分析解説11頁)との指摘もあり、まちづくりの観点からは留意しておかなければいけません。

 

③しかし、民間投資の支出流出入率((地域外への流出+地域外から流入した金額)÷支出(地域内ベース))は-24.8%(この計算式は、-73÷223=-32.7となるのではと思いますが、なぜか-24.8と表示されています。ただし、今日は専門家であるリーサスの表示に従っておきます。)で全国1,106位、その他支出の支出流出入率((地域外への流出+地域外から流入した金額)÷支出(地域内ベース))は-84.6%(ここも-443÷81=-5.469で-546.9%となるのではと思うのですが、上記と同様の対応です。)で全国1,151位です。

 

民間投資が地域外へ流出しているというのは、市民や企業が直方市で稼いだ所得を使って他地域の何かに投資しているということでしょう。具体的に主なものは、株式や金融商品あるいは市外の不動産等を投資目的で購入しているなどでしょうか。そうだとすれば、それは市民や企業の合理的な経済判断によるものでしょうから、やむをえないことで抑制することはできないかもしれません。

 

なすべきは、市内での投資が増えるよう、投資対象としての直方の魅力を向上させる、市民の側から見ると、市民が当事者意識をもって積極的に参加する気持ちになるような投資の機会と場を市内に創り出すことでしょう。あるいは、人口増の傾向を作り出し、地域としての成長力を増やすなども広くはこれに含まれるかもしれません。

 

④ では、製造業を強化すると、投資対象としての直方の魅力が向上して市内への投資が増加し、それにより民間投資が地域外へ流出する状況を改めることができるでしょうか。

 強化された製造業自身による市内での投資が増えなければなりませんが、なかなかそれについて現実味あるイメージを描くことができません「イヤ、現実性があるんだ」というご意見があれば、是非とも聞かせてください。

地域経済循環を確立する意義 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(14)ー2019.11.27

ⅲ そこで、地域経済循環を確立する意義について確認します。

簡易解説は「地域経済循環率は・・・域内で生み出された所得がどの程度域内に環流しているかを把握するもの」(5/15頁)であると説明しています。また、さきほどⅰで、地域経済循環率は地域経済の自立度を示しておりその値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高いことを意味すると述べました。 

 

ⅴ 直方に限らず、地域を元気にするという最終目標との関係では、私はこの域内の経済循環を確立できるかどうかが決定的に重要と考えています。ですから、製造業を強化することで域内での経済循環をしっかりしたものにしたいということで、域内の経済循環に着目し、そこに目標を置いている大塚市長の判断はきわめて正しいと思います。

 

情緒的な理由になりますが、私たちが中、高校生だった昭和の40年代、直方駅前から須崎町、古町、殿町の商店街で賑わいを眼にしていましたが、あの頃はきっと、滞りや流出のない経済循環があったのではないかと思います。

 つまり、市民の多くが直方市内の企業や商店で働いて稼ぎ、市内で消費し、支出して、お金が市内を周っていたように思うのです。また、そうした域内の経済循環が確立されていたから、直方という地域の経済と文化はそれなりのものとして存続していたと思うのです。域内の経済循環がほころびているのに、それには無頓着で行政が文化を先導するなんて、危なっかしいのはもちろんですが、面白くもなんともありません。

 

ⅵ そして、私たちが求めている“直方を元気にしたい”は、語弊をおそれずに言いますと、お金が市内を周っている≒域内で経済が循環していることではないかと思います。逆に、いくら産業活動が盛んになり、生産(付加価値額)が大きく増えて稼ぐ力が付いても、分配(所得)あるいは支出の段階でお金が域外に流出してしまい、お金が市内を周っていない=域内の経済循環がない状態では、到底、直方に元気が戻ったとは言えません。

 

ちなみに、政府の地方創生は、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを最終目的としていますが、そこに至るためには “まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”が必須であると考えています。

 

すなわち、政府の地方創生が提唱する“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”は、地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、・・・その好循環を支える「まち」に活力を取り戻し、人々が安心して生活を営み、子供を産み育てられる社会環境をつくり出すことを目指しています。 

 そこでいう「好循環を確立し」というのは、経済的側面に着目して表現すると域内経済循環が確立されることを意味していると思います。つまり、政府の地方創生は、域内経済循環を確立できたなら地方創生はほとんど達成されると考えているのです。それをただ、“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”と表現しているだけです。

 

そうしますと、“直方を元気にしたい”を実現するために、政策ないし施策を実施するさいの目標として位置づけられる「域内経済循環の確立」は、表現は少し違っていますが、政府の地方創生が追い求めているものと究極的には同じということになります。

域内経済循環を確立させることこそ、自治体の政策ないし施策の本丸であり、“直方を元気に! ”と直結するものというわけです。

そして、うっかり忘れていましたが、私たち「ふるさと直方フォーラム」が掲げる目標スローガンは “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう であったのです。

 

 

(つづく)

 

 

製造業を強化することで域内での経済循環をしっかりしたものにするという選択と判断は正しいか!?  基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(13)ー2019.11.23

ⅰ 初めに、直方市経済循環の状況を確認したいと思います。下のリーサス地域経済循環図・直方市をご覧ください。画面左上に「地域経済循環率 92.6%」と明記されています。この地域経済循環率は「生産(付加価値額)÷分配(所得)」により算出され、地域経済の自立度を示すとされています。つまり、その値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高いことを意味すると説明されています直方市の場合は、1704(8+472+1224)÷1841(955+699+187)≒ 92.6です。数字の単位は億です。

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191123230632p:plain

リーサス、地域経済循環図・直方市2013年

ⅱ 地域経済循環率92.6%をどう評価すべきでしょうか。直方市の92.6%は1を割っているから単純に喜ぶことはできないのでしょうが、参考に他都市の地域経済循環率をいくつか調べて見ますと、高いほうから、東京都154.2%、宮若市116.7%、福岡市111.8%、北九州市97.2%、福岡県95.5%、そして直方市の周辺自治体である田川市が85.4%、飯塚市85.2%、行橋市70.1%、宗像市69.3%、中間市は65.7%です。他都市との比較だけで評価するのは適切でないかもしれませんが、宮若市の116.7%を除いた直方市の周辺自治体よりは多少良い線を行っているなと、度量が狭いのでしょうが嬉しくなってしまう気もします。

 

ⅲ そこで、地域経済循環を把握する意義について確認します。

簡易解説は「地域経済循環率は・・・域内で生み出された所得がどの程度域内に環流しているかを把握するもの」(5/15頁)であると説明しています。また、さきほどⅰで、地域経済循環率は地域経済の自立度を示しておりその値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高いことを意味すると述べました。 

 

それらは具体的にはどのようなことを意味しているのでしょうか。簡易解説は要旨、以下のとおり分かりやすく明快な説明をしています (簡易解説1/15頁。ただし、一部入れ替え等しています。原文に太字等はありません)。

 

「地域経済循環マップ」は都道府県・市町村の自治体単位で、地域のお金の流れを生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で「見える化」することで、地域経済の全体像と、各段階におけるお金の流出・流入の状況を把握可能にします。これにより、地域の付加価値額を増やし、地域経済の好循環を実現する上で改善すべきポイントを検討することができます。

 

つまり、地域内企業の経済活動を通じて「生産」された付加価値は、労働者や企業の所得として「分配」され、消費や投資として「支出」されて、再び地域内企業に還流します。このいずれかの過程で地域外にお金が流出した場合、地域経済が縮小する可能性があるため、上記の地域経済の循環を把握し、どこに課題があるのかを分析する必要があります。そうすることにより、地域の付加価値額を増やし、地域経済の好循環を実現する上で改善すべきポイントを検討することができます。

 

具体的には、地域で稼いだお金が地域の住民や企業等の所得や、地域住民の消費や地域の企業の投資に回っていないこと、そして、そのような消費や投資がさらに生産や販売に回っていかないこともあります

 

ⅳ 以上のとおり、地域経済循環を確認する最大の意義は、生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で、地域外にお金が流出しているかどうかを把握することにあります。そして、三段階のどこかで地域外にお金が流出していると必ずや生産(付加価値額)が縮小し、それが繰り返されていくと、将来的に地域の生産力と地域経済はジリ貧的に縮小していくことを予測できるということかと思います。

 

そうしますと、生産(付加価値)、分配(所得)と支出の額は同一であることが望ましいし、3つが同額ながらも少しずつ増えている状態が理想的で、そのとき地域経済に待望の活気が生まれてきそうです。「手引き」もまとめで次のように述べています。

 

地域の経済循環を活性化するということは、循環の環を閉じて自給自足経済を目指すものではなく、地域間の交易も含めて所得の巡りをより太くより活発にすることです。各々の持てるポテンシャルを最大限活用して付加価値を高め、他地域への必要以上の所得漏出を減らし、地域で消費し地域に投資をしたくなるような魅力ある「場」をつくることとも言えます(72頁)。 (ⅴにつづく)

直方市で特に外貨を稼いでいるのは製造業という前提は正しいか!? 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(12)ー2019.11.22

イ 直方市で特に外貨を稼いでいるのは製造業という前提は正しいか

 ⅰ 大塚市長が言う「外貨を稼ぐ」に関して、地域経済は、下記に引用していますように、地域外を主な市場とする域外市場産業と地域内を主な市場とする域内市場産業に分けて説明することが一般的であるようです。この説明によりますと、製造業は農業や観光業と同様の域外市場産業として、日用品小売業や対個人サービス業などの域内市場産業とは対照的に、本来的に域外を市場とする性質を有しているとされています。したがいまして、製造業が「外貨を稼ぐ」というのは、一般的には正しいと思われます。

 

(以下の段落は、たしか地域経済循環に関する県の報告文書からの引用です。後日、確認して明記します)

地域経済は、地域外を主な市場とする「外市場産業(製造業、農業、観光)」と地域内を主な市場とする「域内市場産業(日用品小売業、対個人サービス業)」に分けて考えることができる。 お金の流れに注目すると、例えば、製造業の会社が地域外に製品を販売し、売上を得る、会社が従業員に給料を支払う、地域住民が地元のスーパーで買い物をする、スーパーが従業員に給料を支払う、その後➂➃を繰り返して、域内需要が拡大する、という地域経済の模式図(構造)が浮かび上がる。域外から資金を流入させる域外市場産業は、地域経済の心臓部とも言え、域外から資金を稼いでくる産業の集積を促進し、競争力を強化することが重要。

 

ⅱ では、直方市においても製造業は外貨を稼いでいるのでしょうか。リーサスではそれを直接示す情報は見当たらないようですので、初めに、直方市全体の付加価値産出額を産業別に見た下の図①と、直方市全体の産業において製造業(企業単位・大分類)がどのような位置にあるかを示す下の図②を見てみます。 

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191122232938p:plain

図① https://resas.go.jp/regioncycle/#/map/40/40204/2/2013

そうしますと、2013年の直方市全体の付加価値額に占める製造業を含む第2次産業の付加価値額の割合は27.7%(472÷(8+472+1224)。単位百万円)で4分の1強です。

 

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191122233155p:plain

図② https://resas.go.jp/industry-all/#/map/40/40204/2016/2/4/1/-

そして、図②(企業単位・大分類)で見ますように、卸売業・小売業、医療・福祉、建設業、サービス業、宿泊業・飲食サービス業、不動産業・物品賃貸業などを含めた13の業種のなかでは製造業の付加価値額が一番多く、割合で示すと33.3%(25,494÷76,652)です。

製造業を含む第2次産業の付加価値額の割合は27.7%だったのに、13の業種のなかで製造業の割合が33.3%というのは一見おかしいのですが、後者は2016年の統計であり、3年の時間が経過するうちに変化があったのかもしれません。

 いずれにしろ、以上から言えることは、直方市全体の付加価値産出額において製造業が大きな位置を占めていることは事実ですが(2016年は33.3%)、圧倒的とか決定的というjまでの比重を有してはいません。

 

次に、付加価値産出額(企業単位・中分類)に関する下の図③を見ます。すると、大分類で一口に製造業といっても、企業単位では20に分かれる中分類では、額の大きい順に、生産用機械器具製造業4位、食料品製造業7位、金属製品製造業8位、輸送用機械器具製造業,9位、はん用機械器具製造業10位、 プラスチック製品製造業(別掲を除く)12位、鉄鋼業13位、 電子部品・デバイス・電子回路製造業15位となっています。

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191122234052p:plain

図③https://resas.go.jp/industry-all/#/map/40/40204/2016/2/4/2/-

これから言えることは、付加価値産出額において製造業は大きな位置を占めていますが(2016年は33.3%)、製造業をさらに8つに区分した企業単位・中分類の業種で言うと、一番割合の大きい生産用機械器具製造業にしても、5.8%(4,463÷76,652)の比重です。

製造業というと、50年、60年前からになりますが、私など、小学生の頃から同級生の家庭が複数、鉄工所を営んでいてその看板をよく見かけていましたから直方市内では鉄鋼業を思い浮かべます。それでですが、大塚市長のいう製造業が鉄鋼業をさしているなら、鉄鋼業の付加価値額の割合は3.2%(2,436÷76,652)と一段と小さくなります。ですから、鉄鋼業の強化に少々成功したとしても、市全体の稼ぐ力に及ぼす影響は、残念ながら限定的です。

 

そういうわけですから、大塚市長のいう製造業がどの業種をさしているのか、特定して明示していただかなければなりません。あるいは、上記した製造業のすべてを強化するという意味かもしれませんが、きっとそれぞれの業種ごとに有効な強化策は異なってくるでしょうから、ITやAIを含め専門技術化が著しいそれぞれの業界について、公益を追求する自治体が公共性を確保しつつ適切な強化策を提案できる体制を用意するなど、無理な相談だと思います。

 

ⅲ ところで、地域の産業の移輸出額から移輸入額を差し引いて得られる「移出入収支額」を分析すると、地域の外からお金(所得)を稼いでいる産業を把握できます。そこで、移輸出入収支額に関する下のリーサスの図④を見てみます(不鮮明で申し訳ないのですが、図で濃い青は「移輸出入収支額」、薄い青は「生産額の構成割合」を示しています。また、左から縦に、1次産業、2次産業、3次産業と書いてあります。)。

f:id:FurusatoDosouForum2015:20191122234659p:plain

図④https://resas.go.jp/regioncycle-production/#/balance-industry/8.946418959795157/33.53711514/130.8218368/40/40204/2/2013/4/1/-/-/-

そうしますと、第2次産業の移輸出入収支額は0を割っていてマイナス25億円でして、地域の外からお金(所得)を稼いではいません(生産額の構成割合は41.4%です)。ただ、第3次産業の移輸出入収支額はマイナス406億円ですから(生産額の構成割合は58.1%です)、第2次産業、第3次産業とも地域の外からお金(所得)を稼いではいません。言えることは、第2次産業は、第3次産業ほど、地域の外にお金(所得)を流出していないというだけです。

 

もちろん上記は、産業別に見た「移出入収支額」ですから製造業に限定して見る場合、事情は若干異なるかもしれません。産業連関表を正確に読めば製造業に限定した移出入収支額を読み取れるかもしれませんが、おそらく大きな傾向は変わらないように思われます。(この点の正確な情報に基づくご意見等ありましたら、是非ご指摘ください)

 

以上、ⅰからⅲの検討から、直方市で特に外貨を稼いでいる、あるいは外貨を稼ぐ可能性があるのは製造業という前提は、ハッキリ間違っているとまでは言いませんが、正しいと断言できるデータはないように思われます。(続く)

地域経済分析システム(RESAS:リーサス)を活用しよう!! 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(11)ー2019.11.21

2 製造業を含む産業を強化して域内経済循環をしっかりしたものにしたいという狙いは社会経済的見地からの根拠を有する合理的な考えか

 

大塚市長は、「本市の産業連関分析からしますと、特に外貨を稼いでいるのは、やはり製造業であり、本市の産業の特徴でもあります。ここを一定強化しながら域内での経済循環をしっかりしたものとすることが肝要」と述べています。

 

商品やサービスを新しく作り出して稼ぐことは格別難しいでしょうから、すでにある産業を強化するという考え方は実際問題としても合理的な選択だと思います。そして、これにより域内の経済循環をしっかりしたものにするという方向の見定めもきわめて正しいと思います。

 

 それでも、直方市で「特に外貨を稼いでいるのは、やはり製造業である」という前提、そして、「(製造業を)強化することが域内での経済循環をしっかりしたもの」にするという選択は、直方を元気にするという最終目的に照らしたとき正鵠を射る適切なものかは、製造業に関する事実の正しい把握や域内の経済循環を確立する意義の確認を含め、もう少し検討を加えてから結論を出す必要があるように思います。そこで、この前提と選択について検討を加えてみます。

 

検討を始める前に、以下で頻繁に引用する文献について説明しておきます。

大塚市長が前提の根拠としている産業連関表については、「わがまちの経済 産業連関表で見える地域 福岡県60市町村表試案」、福岡県自治体問題研究所編(税込3000円)などがありますが、ネットで簡単に閲覧できるものは見当たらないようです。また、行列方式に基づく産業連関表はなじみがないためか、どうしても親しめず解釈するのも一苦労です。

 

そこで代わりに、地方創生の様々な取り組みを情報面から支援する目的で、経済産業省内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供している地域経済分析システム(RESAS:リーサスhttps://resas.go.jp/#/13/13101 以下、リーサスという。)を利用します。

 

リーサスの地域経済分析システムは「産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化するシステム」でして、これからの地域政策やまちづくりを考えていくうえで最優先される必須のツールになる可能性が大きいと考えられますが、産業連関表の仕組みや数値を取り入れています※。まだ利用されていない方に知っていただくため、以下に少し詳しく紹介しておきます。

 

※ リーサスの地域経済分析システムで示されている地域経済循環図は、「どこから所得を稼ぎ、地域で稼いだ所得がどのように分配されているか、その所得をどこに使っているかというお金の流れの概要を把握することができるもので、産業連関表をコンパクトにまとめたものといえる。」と説明されています(米山知宏「政策立案におけるRESASの活かし方(下)」http://www.dh-giin.com/article/20160926/6875/print/)。 

 環境省も、地域経済循環分析は市町村毎の産業連関表を中心的に活用する分析であるとして次のように説明しています(http://www.env.go.jp/policy/circulation/index.html)。

「地域経済循環分析は、市町村毎の「産業連関表」と「地域経済計算」を中心とした複合的な分析により、「生産」、「分配」及び「支出」の三面から地域内の資金の流れを俯瞰的に把握するとともに、産業の実態(主力産業・生産波及効果)、地域外との関係性(移輸入・移輸出)等を可視化する分析手法です。」

 

 また、リーサスの「地域経済循環図」に併せてアップされています「地域経済循環マップについて」地域経済循環分析(簡易解説書)(全15頁)および「地域経済循環マップの概要」 (全13頁) (いずれも平成27年12月18日内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局。以下、それぞれ簡易解説および概要という。https://resas.go.jp/regioncycle/#/map/40/40204/2/2013)も、地域経済分析システムに対する基本的な理解を容易にしてくれますので、しばしば引用しています。是非ご参照ください。

 

もう一つ、株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)が発行している「地域経済循環分析解説書・地域経済循環分析の手引き」(以下、手引きという)があります。これも、地域経済分析システムに対する理解を一段深めるうえで有用ですので時折、引用します。(つづく)

『産業に活力を』で直方に元気を取り戻すことができるか!? その2 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長所信表明抱負を公共政策の定石から考える(10)ー2019.11.19&25

1 産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨くことにより市民所得を向上させるという狙いは社会経済的見地から見たとき、根拠ある合理的な考えか

 (1) 所得の向上というと、私たち団塊の世代なら、岸信介の後を継いで首相になった池田勇人所得倍増計画を提唱したのを覚えているでしょう。当時の社会状況は1960年の安保騒動できわめて対立的でしたから、池田勇人の笑顔や穏和な表情は、政治的思想的なことなどまったく理解していない子ども心にもなんとなく安らぎを感じさせて好感を抱いたことを記憶しています。

 

さて、池田勇人10年の間に国民総生産を2倍以上に引き上げることによって国民所得を倍増させることが可能になると考えていたようです。そうすると、産業を活性化させることにより市民所得を向上させたいという大塚市長の考えは、若干大げさかもしれませんが、かっての池田勇人ばりの経済政策、社会政策ということになるかもしれません。

 

しかし、1960年代は日本が高度成長を成し遂げた時代でしたから所得倍増計画は実現して成功したと評価されているようですが、他方、今日では、安定成長はありえても「高度成長の夢よ再び」と考える人は皆無です。

 また仮に先端技術や最新の設備を導入して運よく生産性と付加価値の向上を図ることができたとしても、米中貿易摩擦やイギリスのEU離脱をめぐる混乱の影響で世界経済の減速傾向が強まり、日本でも輸出が落ち込み製造業を中心に地方経済もその影響を受けざるをえない現在の状況を考えますと、生産性の向上が必ずしも付加価値の増加と市民所得の向上につながらないことも大いに考えられることです。

 

そして、大塚市長は、所得の倍増でなく市民所得の向上とトーンを下げていますが、先端技術や最新の設備を導入して生産性の向上を図ることができたとしても、産業を活性化させて市民所得の向上につなげる社会基盤や経済基盤を見出すことは、今日なかなかに容易でないというのが客観的な社会状況だと思います。

 

(2) 見落とすことができないのは、一次産業であれ二次産業であれ、先端技術や最新設備、あるいはIT 先進技術などの導入の要否や時機と内容を判断する主体はあくまで民間だということです。

現在は明治のような殖産興業政策の時代ではありませんから、産業育成を担当する農水省経産省であれば若干別論かもしれませんが、経営(判断と活動)に対する行政の過剰な関与の弊害を反省して行政改革規制緩和の取組みを余儀なくされた後でもありますし、経営責任を負わない・負えない一自治体が原則、民間の経営判断に口出しすべきではありません。

 

あるいは、現在は機関委任事務の時代ではなく地方分権の時代であるから、自治体が地域の課題として民間の経営に関与する必要性があるとの見解もありえるかもしれません。

 しかしながら、現代の企業は、国内事情だけでなく世界レベルの状況も十分に把握して生産量を調整しています。また、さまざまな利害得失要因を冷静に判断したうえで、新しい工場を建設したり、内外の市場に進出し、また随時撤退するなどの経営判断を行っています。

 ですから、キツイ言い方で申し訳ありませんが、地方の自治体に厳しい経営判断を下している現代の企業を的確に誘導する能力はないと思います。せいぜい、地元の中小企業が取引先の大中企業から不当な取引条件を強いられているとき等、公正取引委員会その他の政府関係機関に適切な対応を要請するなどが限度かと思います。

 

逆に言いますと、直方市の企業誘致に応じて進出してくる企業が直方市を元気にすることにどれほどに貢献してくれるのか、実際に誘致費用に見合う成果をもたらしてくれているのか、直方市の今日の状況を見るといささか疑問です。

 壬生市長時代にも数千万円を投資して企業誘致していますが、すでに過去の経験に基づいて企業誘致の是非を判断できるだけの十分な事例の蓄積があるはずです。少なくとも30年ほどのスパンで実績を観察したうえでないと施策としての有効性を的確に判断することはできません。なるべく早い機会に、過去30年分ほどの企業誘致に関する十分な決算資料を作成し公表していただいたうえで企業誘致の是非を判断してほしいと思います。

 

そして以上で述べたことは、農業がブランド化、六次産業化により付加価値の向上を図ることにも妥当します。すなわち、ブランド化、六次産業化自体は必要な方向だと思いますが、その進路は、農家と農協が自身の問題として誇りと覚悟を持って選択すべきです。

 ちなみに、地域経済循環マップ・シナリオ事例集(10頁)では、「地域資源の6次産業化による投資額の増加」として、「地域資源の6次産業化を促進するために、農家、食料加工業者、研究機関等が地域外のファンドから資金調達をして、設備投資をする。」「投資された企業・団体が6次産業化に取り組み、付加価値額が増加する。」と述べていますが、行政が関与する事態を想定していません。

 

日本の各地で成功が伝えられている農業経営の実践例もあるように思いますが、それらは行政の助けに依存しての成功例ではなく、断固とした自立心と独立心で状況を打開してきたがゆえの成果だと思います。

 

以上、産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨くことにより市民所得を向上させたいという大塚市長の思いと狙いは理解できますし、業界団体や商工会議所との適切な連携は必要でしょうが、あくまでもそれら団体が主体的に取り組むべきであるし、最終的には個別の企業が独自に決断して成し遂げるべき課題であると申し上げました。 

 

〔補遺〕 企業誘致について、政治的・思想的レベルではいろんな見解を見かけることがありますが、政策論レベルでの実務的な意見に出くわすことはあまりありません。そうしたなかで、たまたまですが、昨日、域内経済循環と企業誘致などに言及する以下に紹介する文献に出会いました。以下の引用は事実認識だけですが、最後まで(73頁)まで読めば、もっと積極的な見解が示されていると期待できます。政策業務に携わる議員さんや市の職員の方には是非、その全部をお読みいただき、研究してほしいと思います。

 

これまで、地方では地域活性化のための企業誘致等を進めてきましたが、誘致に成功しても域内の企業との取引が少なく地域の経済が思ったほど活性化しなかったり、誘致した企業が撤退してしまうといった事例もあります。また、大規模商業施設を誘致したものの、中心市街地の商店街が郊外の大型ショッピングセンター等との競争に勝てず、商業施設の雇用が増える一方で中心市街地の衰退・空洞化が進む等、新たな問題が発生することにより地域経済の活性化が当初の狙い通りに進んでいない地域もあると考えられます (日本政策投資銀行DBJ&価値総合研究所「地域経済循環分析解説書 2 地域経済の再生に向けて 2-1 望ましい地域経済循環構造の構築 (9頁))