ふるさと直方フォーラム

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いこま市民パワーは市民参加型地域新電力を構想するときに見逃せない❣   2024.3.10

ハ 事例3-6  いこま市民パワー株式会社

  設立2017年7月、電気供給開始2017年12月。奈良県生駒市人口117,259人(2023年9月1日現在)

 以下の目次1~3は、今から1年半くらい前の2022年秋頃、「地域新電力事例集」(環境省大臣官房環境計画課地域循環共生圏推進室、2021年3月。以下、「事例集」として引用します。本文中の説明のない「 」は「事例集」からの引用であることを示しています)の情報に基づき、下書きを完成していました。

 しかし、その後、4で取り上げる住民監査請求が出されたとの報道を見かけましたので、その顛末を確認してから、下書きに「追記」として記載してアップするつもりでいました。

 些事に追われてさらに1年が経ち、昨年の秋になって住民監査請求と住民訴訟の後の経過に関する情報に接しました。すると、その間、いこま市民パワーと生駒市の対応や取組み姿勢に大きな変化が見られます。下書きを含め「追記」をどのように書き込むか迷ったのですが、結局、1~3には手を加えないことにし(ただし、そこでも2つほど「追記」しています)、住民監査請求と住民訴訟の後のことは、4以下で述べることにしました。ご了承ください。

 【参照または引用している文献】

参照文献① 「~SDGs未来都市生駒の創造~再生可能エネルギ-の普及と地域エネルギーによる収益の地域還元」(楠正志・いこま市民パワー取締役、市民エネルギー生駒代表理事、2023(令和4)年7月、以下、文献①「生駒の創造」として引用)

参照文献➁ 「いこま市民パワーの取組」(生駒市SDGs推進課、2023(令和4)2月、以下、文献②「市民パワーの取組」として引用)

 

 [目次]

 1 いこま市民パワー株式会社のスタートアップ  (2024.3.10)

 2 いこま市民パワー社の組織編制  (2024.3.10)

 3 いこま市民パワーの活動と課題       (次回2024.3.13予定)

 4 住民監査請求・住民訴訟による問題提起      (次々回2024.3.15予定)

 5 住民監査請求・住民訴訟が再生エネベースの地域経済循環施策を強力プッシュ❣

 6 脱炭素先行地域認定といこま市民パワー飛躍の新しいステージ (2024.3.21)

 7 まとめ

 

1 いこま市民パワー株式会社のスタートアップ(PR上の別称はIkoma Civic Power。以下、いこま市民パワーあるいはICPと表記します)

 ⑴ いこま市民パワーの最大の特徴は「市民団体が出資に加わる全国初の自治体新電力」1です。そして、「生活総合支援事業としての『日本版シュタットベルケモデル』の構築」を目指しています。具体的には市域の再エネを最優先で調達し、公共、民間へ供給」するというものです。

 目標は大きいのですが、同社の出資金総額は大きくなく1,500万円です。出資の内訳は、生駒市が過半の765万円(51%)、大阪ガス株式会社が510万円(34%)、生駒商工会議所が90万円(6%)、株式会社南都銀行が75万円(5%)、一般社団法人市民エネルギー生駒が60万円(4%)の構成となっています。

 自治体が出資する電力小売会社の設立は、奈良県内で初めての試みとなり、さらに市民団体も参画する事例は全国初とのことです。
  注 市民グループは、市内に4基の太陽光発電所を所有していますが、いこま市民パワーが設立されたとき、市民グループは一般社団法人市民エネルギー生駒を結成しています。そして推測ですが、この一般社団法人は所有していた太陽光発電所を現物出資する形で、いこま市民パワーの出資者になっています。なお、「生駒市、地域エネルギー会社『いこま市民パワー株式会社』を設立」(2017年7月30日 http://www.renewable-ene.info/detail.php?pid=bbD8JEtGAA) が、いこま市民パワーの設立当時の状況を詳しく伝えています。

 

⑵ 一般社団法人市民エネルギー生駒の代表理事は、当初、生駒市から公共施設屋根20年間の無償貸与を受け、全額市民出資による太陽光市民共発電所の完成に向けて取り組んだ2013年当時の思いを次のように述べています(文献①「生駒の創造」5/24頁)。同じような思いを持つ者として深く心に留めておきたいと思います。

 ☆信用も知名度もない市民団体ファンドの最初の調達事業費は、1,700万円。多くの市民による共同発電所を目指し出資額は一人20万円までに限定。

 ☆環境講演会&出資者説明会の開催、街頭チラシ配布などを実施した。

 ☆定年後のボランティアで何故こんな事を始めたのか課題が山積、日程にも迫られ大きく後悔。持続可能な社会実現のため決意した目標に向け、自分達の力を信じ定めたロードマップに基づき一歩一歩実践する。

 これまで私たちは主に第三者所有方式によるPPA(電力購入契約)を想定した提案をしてきましたが、これからは市民が太陽光発電所を自ら所有して取組みをスタートさせることも念頭に置いてこれらの実行可能性を検討したいと思います。

文献①生駒の創造2/24

2 いこま市民パワー社の組織編制

 市民団体が出資して自治体新電力会社に参画するというのは、理念の高邁さと情熱という点でホントに素晴らしいと思います。しかし、電力エネルギー事業という専門性が大きな分野に関係することですから、一般的な企業活動以上に電力エネルギーや金融関係の専門家との連携や協力を求めることが欠かせないでしょう。その点の対応はどのようなものであったか、そして、それらはうまく機能できているのか、深い関心を持って調べてみました。

 設立当時の記事(前掲注)は、「奈良県生駒市は(2017年)7月20日、エネルギーの地産地消地域活性化を目指し、大阪ガス株式会社、生駒商工会議所、株式会社南都銀行、一般社団法人市民エネルギー生駒との共同で、地域エネルギー会社『いこま市民パワー株式会社』を、7月18日に設立したと発表した。」としています(生駒市、地域エネルギー会社『いこま市民パワー株式会社』を設立 2017年7月30日)。

 つまり、エネルギーの地産地消地域活性化に取り組もうというときに期待される関係者がすべて登場し役割分担をしているようで、非の打ちようのない感じです。

いこま市民パワー社の組織編制 事例集69頁

⑵ この組織体制は、「生活総合支援事業としての『日本版シュタットベルケモデル』事業を展開」しようとする生駒市といこま市民パワーの目標を取り込み、反映させるために理想に近いものを実現できているように思われます。

 少し詳しく見ますと、エネルギー事業の専門家である大阪ガスが出資するだけでなく業務上も協力しています。また、出資者である商工会議所を通じて地域企業との連携が図られており、地元の金融機関(南都銀行)が出資すると共に監査役に就任しています。さらに、市長がいこま市民パワーの社長に就任しています。

  そうしますと地域新電力として理想に近い組織体制ができたとき、次にはそれが現実にどのように機能し、結果を出すことができているか、関心が尽きません。そこで初めに、いこま市民パワーがどのような取組みを展開してきているのか、次に、取り組みの成果を見ることにします。 

 (追記) 2023年12月に確認したのですが、いこま市民パワーICPのトップに変更があり、生駒市長が代表取締役を辞し、代わって市に次いで多くの株(24%)を保有することになった生駒商工会議所の会頭が代表取締役に就任しています。

 

いこま市民パワーの出資状況 文献①生駒の創造15/24

 また、ICPが2019年度から電力を調達していたTJグループホールディングス(株)の取締役が新たに役員に加わっています。TJグループ(大東市)は木質バイオマス発電所を運営していますが、これは令和2年度末(2021年3月)をもってICPから撤退した大阪ガス(株)が保有していた510株(全体の34%)について、しばらくの間ICPの自社株となっていたのを、商工会議所、TJグループとICPが3分して保有することになったことによるもののようです(2022年3月1日付け発表)              (つづく)