ふるさと直方フォーラム

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基本政策を実施する施策の立案 ②の2-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(8)ー2019.10.9

前回、大塚市長が提唱している、「直方に元気を取り戻したい」―『人に夢を』―「人権が尊重される社会および自己実現が可能な地域社会の実現」―ジェンダー平等の社会、女性の力が十分発揮できるような環境整備、自己実現がどのような年代においても可能な地域社会づくりなどの、最終目標―基本政策―施策―事務・事業の体系が、どういう考え方の経路でつながるのか、若干分かりにくいと申し上げました。

 

この最終目標―基本政策―施策―事務・事業が、一つの政策体系として趣旨が明確でないと、最終目標以下、そこに挙がっている施策や事務・事業に至るそれぞれがいくら立派なものであっても、最終段階の事務・事業を的確に実施することはできず、結局は最終目標を実現できないことになってしまいます。

 

では、最終目標、基本政策、施策、そして事務・事業のそれぞれは立派であるが、政策体系としての趣旨目的が明確でないとき、それをどうやって是正すればいいでしょうか。いろんな対応策が考えられますが、現実的かつ論理的にももっとも優れたものとして、大塚市長が基本政策「人に夢を」のもとに提案している施策や事業の多くは、まち・ひと・しごと創生法2014年11月28日公布施行に基づく政府の政策、施策や事業と多くが共通していることを活用したらいいのではないかと思います。

 

なぜなら、まち・ひと・しごと創生法の第1条は次のように現状認識と課題を明らかにしていますが、これは大塚市長の所信表明におけるものと多くの点で重なっています。つまり、同法第1条は国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進することが重要となっている」(1条)と述べています。

 

現状認識と課題が多くの点で重なっているので当然ですが、大塚市長の政策体系全般、なかでも前回紹介した基本政策『人に夢を』以下の施策や事務・事業は、前に紹介したまち・ひと・しごと創生総合戦略」とかなり共通しています。まち・ひと・しごと創生総合戦略」の政策体系は前に紹介しましたが、もう一度示しますと、以下のとおりです。

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上の図を参照してください。再確認しますが、まち・ひと・しごと創生総合戦略」の最終目標は“将来にわたって活力ある日本社会を維持する”です。大塚市長の“直方に元気を取り戻したい”とほとんど同じ思いだと言えるでしょう。

 そして創生総合戦略は最終目標を達成するために4つの基本政策を掲げています。「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「地方への新しいひとの流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」及び「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、 地域と地域を連携する」の4つです。そして、基本政策それぞれについて施策や事業が配置されています。

 

そこで、共通する点が多いことをプラス要因としてどう活用するかですが、結論として、政策体系の大きな枠組みは、政策体系としての趣旨目的が明確なまち・ひと・しごと創生総合戦略」の枠組みを活用させてもらい、その枠組みの中に、大塚市長の抱負なり希望を適宜はめこむ方法を試みるのがいいのではと思います。

 

もう少し言うと、最終目標は同じなのでそのまま残すとして、基本政策『人に夢を』の思いは施策や個別の事業で反映できるので外し、基本政策としては大きく二つ、たとえば「まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立」と「健康で幸福なまちづくり」に分けて表現し、施策や事務・事業段階で大塚市長の抱負なり希望を適宜入れるというのはどうでしょうか。詳しくは、次の基本政策その3 『産業に活力を』を実施する施策の立案を検討した後、総合的に取り上げて考えます。

 

幸い、国の枠組を踏まえ、地方公共団体においても「地方人口ビジョン」と「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」(合わせて一般に「地方版総合戦略」とよばれているようです)が策定されているようですし、1年以上前ですが、直方市のHPでもアップされていました。もちろん、大塚市長の気に入らない、納得できない箇所があるでしょうが、無色透明中立的な政策体系の枠組みを借用し、中身は大塚市長の考えや希望に沿うものに仕上げたらいいと思うのです。

 

補足ですが、2015年10月発足の第3次安倍内閣は「アベノミクス第2ステージ」として「一億総活躍社会」を目指すことを宣言し、翌年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定しています。

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内閣府HPから

「ニッポン一億総活躍プラン」の概要は上の図のとおりですが、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、 障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型」の全ての人が包摂される社会を掲げています。そして、人生100年時代を見据え、幼児教育と高等教育の無償化やいくつになっても学び直しができるリカレント教育などに取り組むとしており、大塚市長の「人権が尊重される社会および自己実現が可能な地域社会の実現」とも重なるところも多いと思います。

 

他方、ニッポン一億総活躍プランは強い経済の実現に向けた取組を通じて得られる成長の果実によって、子育て支援社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという『成長と分配の好循環』を生み出していく新たな経済社会システム」­≒「包摂と多様性による持続的成長と分配の好循環」を究極の目標としていて、そのためか、政策体系として趣旨目的が明確でないとか、理論的にも整合性がないなどの批判も見受けられます。

 

そこで思うのですが、「ニッポン一億総活躍プラン」による政策体系の枠組みを借用することはお勧めできませんが、「ニッポン一億総活躍プラン」が提案する事務・事業の中で、大塚市長の「直方に元気を取り戻したい」「このまちに生まれて良かった、住んで良かった、住み続けたいと云われるまちを、市民と共に創っていきたい」という目標と矛盾なく両立できるものがあれば、補助金など国からの支援制度を受けられる限度でこれを利用することは、地方創生が求められる自治事務のあり方として当然許容されることだと思います。 

以上。