ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

『産業に活力を』のまとめ(各回で述べたことの要旨) 基本政策を実施する施策の立案③-大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(17)ー2019.11.29

以上、大塚市長の3つ目の基本政策である『産業に活力を』について検討しました。大塚市長の、市民所得を向上させるため産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨きたいという狙いと、直方市で特に外貨を稼ぐ可能性があるのは製造業という前提に即して検討しましたが、結論は、製造業を強化することにより直方市の地域経済循環率を1(=100%)に近づけようとする努力は、適切で効果的な施策とはなりそうにないというものです。

しかし、域内経済循環に着目してこれをしっかりしたものにしたいという狙い自体は極めて正しい目標であることも確認していますし、“直方に元気を取り戻したい”という最終目標は不変です。

そこで、次回は“直方に元気を取り戻したい”という最終目標を実施する人的体制について取り上げますが、そのあとでは大塚市長も重視されている、直方が交通の結節点に位置するという立地環境を生かしたまちづくりを基軸にして、“直方に元気を取り戻したい”という最終目標を実現する施策をありったけの力を振り絞って考えたいと思います。その検討結果は、ふるさと直方フォーラムからの心を込めた提案でもあります。どうぞ皆様のご意見もお寄せください。

 

『産業に活力を』については、第9回から第16回の長い連載になりましたので、各回で述べたことの要旨を「まとめ」として、以下にあげておきます。

 

 

大塚市長の3つ目の基本政策は『産業に活力を』です。産業を活力あるものにして稼ぐ力を磨き、それにより市民所得を向上させるという狙い、および、製造業を含む産業を強化して域内経済循環をしっかりしたものにしたいという狙いについて、それら二つの狙いはそれぞれ社会経済的見地から見たときに根拠を有する合理的なものであるか、また、製造業を強化することに施策のエネルギーを注入することで、果たして域内経済循環を確立できるか、そして、究極的に“直方に元気を取り戻したい”という最終目標の実現につながるか、考えます(第9回2019.11.15)

 

産業を活性化させて市民所得の向上につながる社会基盤や経済基盤を見出すことは今日なかなかに容易でない。大塚市長の思いと狙いは理解できるし業界団体や商工会議所との適切な連携は必要だが、あくまでもそれら団体が主体的に取り組むべきであるし、最終的には個別の企業が独自に決断して成し遂げるべき課題です(第10回2019.11.19)

 

これからの地域政策やまちづくりを考えていくうえでは、経済産業省内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が地方創生の様々な取り組みを情報面から支援する目的で、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化して提供している地域経済分析システム(リーサス)を利用することが必須ですし有用です(第11回2019.11.21)。

 

直方市全体の付加価値産出額において製造業が占める割合は33.3% (2016年)ですが、製造業をさらに8つに区分した企業単位・中分類の業種で言うと、一番割合の大きい生産用機械器具製造業にしても5.8%です。大塚市長のいう製造業が鉄鋼業を念頭に置いているなら鉄鋼業の付加価値額の割合は3.2%であり、鉄鋼業の強化に少々成功したとしても市全体の稼ぐ力に及ぼす影響は限定的です。

それに、8つに区分される製造業はどれもITやAIを含め専門技術化が著しく、公益を追求する自治が公共性を確保しつつ適切な強化策を提案できる体制を用意することは無理な相談です。加えて、第2次産業の移輸出入収支額は0を割っていてマイナス25億円でして、差し引きすると地域の外からお金(所得)を稼いではいません。産業連関表を正確に読めば製造業に限定した移出入収支額を読み取れるでしょうが、大きな傾向は変わらないと思われます。

以上の検討から、直方市で特に外貨を稼いでいる、あるいは外貨を稼ぐ可能性があるのは製造業という前提は、ハッキリ間違っているとまでは言いませんが、正しいと断言できるデータはありません(第12回2019.11.22)。

 

地域経済循環を確認する最大の意義は、生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で、地域外にお金が流出しているかどうかを把握することにあります。そして、三段階のどこかで地域外にお金が流出していると必ずや生産(付加価値額)が縮小し、それが繰り返されていくと、将来的に地域の生産力と地域経済はジリ貧的に縮小していくことを予測できます。

そうしますと、生産(付加価値)、分配(所得)と支出の額は同一であることが望ましいし、3つが同額ながらも少しずつ増えている状態が理想的でして、そのとき地域経済には活気が生まれてきそうです(第13回2019.11.23)。

 

“直方を元気にしたい”を実現するために、政策ないし施策を実施するさいの目標として位置づけられる「域内経済循環の確立」は、政府の地方創生が提唱している、地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立するという、“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”と究極的には同じです。

 域内経済循環を確立させることこそ、自治のまちづくり政策ないし施策の本丸ですし、“直方を元気に! ”と直結します。そして、ふるさと直方フォーラムが掲げる目標スローガンは“人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう であったのです(第14回2019.11.27)。

 

直方市の地域経済循環率は92.6%であり、支出面に着目すると「民間消費額」は他地域から379億円流入していますが、「民間投資額」では73億円流出し、その支出流出入率は-24.8%で全国1,106位です。

なすべきは、市内での投資が増えるよう、投資対象としての直方の魅力を向上させる、市民の側に着目すると、市民が当事者意識をもって積極的に参加する気持ちになるような投資の機会と場を市内に創り出すことでしょう。あるいは、人口増の傾向を作り出し、地域としての成長力を増やすなども広くはこれに含まれるかもしれません。

では、製造業を強化すると、投資対象としての直方の魅力が向上して市内への投資が増加し、それにより民間投資が地域外へ流出する状況を改めることができるかというと、強化された製造業自身による市内での投資が増えなければなりませんが、なかなかそれについて現実味あるイメージを描くことができません(第15回2019.11.27)

 

市役所が実施する公共事業による地域外への支出にしろ、地域外からの商品・サービスの移入が地域外に対するその移出を上回る貿易赤字にしろ、他地域へ443億円が流出している現状を改善する即効薬を見出すのは困難なようです(第16回2019.11.28)