ふるさと直方フォーラム

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2019直方市長選:総括壬生市政  第6回(続き) 直方農業を客観的に把握していない農業施策 2019.2.4 3.18 補遺5.1

 ホ 農業について、壬生市長は次のように述べています。

 直方市の認定農業者の方々と意見交換を行い、 今、直方の農業及び就農者が直面している様々な問題を知ることができました。・・・課題が明らかになりました。行政としてこれらの諸問題に対 して積極的に対応してまいります」(平成28年度施政方針)、

 「農業委員会制度の変化をふまえ、農業及び農業経営の課題を的確に把握するとともに、営農者の方々との意見交換を密にし」ます(平成29年度施政方針)。


 しかし、27年4月から行政責任者の地位に就いているのですから、就任して1年、2年後に、現場主義を可能にする前提である実情を知るための活動に重点があるというのでは取り掛かりが遅いとの印象を拭えません。27年度中に課題を把握し、28年度、29年度は対策を提案し、実行すべきでした。


 へ より大きな問題は直方市における農業の位置づけと行財政資源投入のレベルです。農業振興については、産業振興に含める形、あるいは産業と横並びにした項目を立てて、平成27年の所信表明から一貫して支援する姿勢を打ち出していますが、1980年大分県の平松知事が提唱し,全国的に広まった一村一品運動のような取組が具体的に示されてはいるわけではありません。次のように述べています。


直方市においても、このような農業の振興は極めて重要な分野であり、農業振興のための施設整備や新たな事業展開に対する支援を充実 させていきたいと思います。」(平成27年所信表明)、
「農業につきましては、・・・・営農者の減少や集約化、営農の継続性 や農家の利益の最大化という課題に積極的に取り組んでまいります。本市では、昨年度から農林水産省との人事交流が実現し、農業振興に対する積極的な取り組みが実践されるようになりました。「儲かる農業」というテーマを掲げて、講演会や米粉の勉強会などをとおして、これからの 農業のあり方について営農者の方々と協議の機会をもうけ、行政として より積極的に関わる方針であり、本年度もこの方針を一層進めてまいり ます。」


 ト しかし、これでは政府による米の全量買い取りと配給制度による食糧管理制度のもと、農業というより農家を保護した戦後日本の農業政策とほとんど同じ着想のように思われます。また、米の余剰が明らかになって生産調整(減反)や自主流通米制度が始まった1970年前後から後、農林水産省かんがい排水圃場整備等の土地改良事業公共事業として巨額を投入して主導してきました。まさに、自民党政権の票田確保手段としての農業保護政策であったわけです。

 

利権と結びついたこの農業政策の構造は、コメの市場開放が強く求められ、国際競争に立ち向かう強い大規模農業を目指すようになった90年代以降においても、大局として変化はないと思われます。つまり、いわゆる“政官財”のトライアングルではありませんが、農林水産省が「政治家・官僚・農協」の利権構造の一角をなす利権官庁であることに変わりはありません。今日、農林水産省は企業の農業参入、食料自給率の向上やスマート農業にも取り組んでいますが、利権官庁の本質は微動だにしていないと思います。

 

 チ ですから、「儲かる農業」自体を否定するわけではありませんが、コメ、野菜、畜産、そしてオレンジなどの果樹といった、力を入れる分野と具体的な方策を明示しないまま、漫然と農業関係者や農林水産省との関係を深めるというだけでは、利権的旧来的な結びつきを強めるだけに終わってしまい、いずれ公正さや持続性を見失ってしまうようになると思います。

 また、「儲かる農業」は、少なくとも一自治体がサポートして先が見えるようになるものではなく、当事者である農業関係者自身が創意工夫して初めて見えてくるものだと確信します。まして、自治体が「儲かる農業」をリードしようとするなど、自治体自身が自治体を運営した結果、厳しい財政状況を招いているのに、分際を弁えないにもほどがあります。 

 リ 一村一品運動 のような画期的取組とまでいかなくても、農業従事者が旧来的な利益団体としてではなく、誇りをもって農業に従事できるような目標テーマを、農業関係者のほか関心ある方が参加して議論し、是非見つけてください。

 たとえば、日本国内における食料供給は需要をはるかに下回っているのが現状です(農水省が公表しているところによると、平成29年度の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースでは65%)。

 そこで、地球温暖化の影響などによる将来の食料不足に備え、地域内食料自給の実現を期すといった、子や孫たちが誇りをもって農業に取り組むことができる、環境と社会に調和する持続性ある農業政策を提示してほしいと願うばかりです。

 

 〔補遺 2019.5.1〕

 政府が2017年6月にまとめた成長戦略には国家戦略特区の推進、2025年の国際博覧会誘致などとともに「ジビエの利活用促進」が入っているという。野生鳥獣による農作物被害額は年間約200億円。農作物を荒らす動物を駆除し、その肉を活用すれば被害額を減らして農村の所得向上にもつながる。

 そして、「令和」の発表で評判になっている菅官房長官も、「ニッチ(隙間)なテーマ」として、ジビエ(野生鳥獣の肉)の利活用に強い関心を持っているらしく、政府は2018年度に全国で12の財政支援付きモデル地区を指定し、2019年度にジビエ利用量を倍増させる方針ともいう。

 壬生氏の言う「儲かる農業」が「ジビエの利活用促進」であったなら、お詫びしたい。また、ふるさと納税の返礼品として、返礼品の発送が遅れて全国ニュースになった電化製品以外に、直方産のコメや野菜の開発にも十分に力を入れていたならば、それもお詫びしなければならない。そうした気配が感じられなかったので、壬生氏の農業施策を批判したのだが。