人口の東京圏一極集中が続くばかりで、これといって地方創生の切り札を欠くなか、ふるさと納税はほとんど唯一、機能している実効的な制度です。しかし、今日のNHKニュースはしきりと、総務省が自治体に対し、返礼品の調達価格を寄付額の3割以下にすることや地元の特産品を使うよう通知していると報じています。
ふるさと納税では、寄付者の住む自治体の住民税収入が減るであるとか、返礼品目的でふるさと納税するなど、寄付の名に値しない反倫理的な行為がまかり通るであるとか、納税者ばかりが優遇されて不公平だなどの批判があります。
しかし、そうした批判は全体の状況と考慮すべき要素を正しく把握したうえでなされていません。
まず、住民税から税額控除を受けるといっても住民税の2割程度までという上限がある話ですし、寄付者の住む自治体は依然8割程度の住民税を確保できます。
また、脱税しているなら非難されて仕方ありませんが、住民税から税額控除を受ける前提として、きちんと納税したうえで税額控除されている事実を軽視すべきではありません。より端的に言うなら、前段階できちんと納税し、国家と社会の財政基盤を充実充することに貢献した後に初めて税額控除を受けることができているのです。
それに、日本社会では一般に、ふるさと納税をしている寄付者の多くは大都市ではない地方で生まれ育った人たちです。つまり、大きな構図としては、地方が小中高教育や福祉医療などの面で寄付者を育て上げ、勤労者として大都市に送り出しているという、戦後日本社会の構図があります。その結果、地方は今日過疎化に苦しんでいますが、他方、大都市は勤労者を育て上げる費用を負担しないまま、大都市に移り住んだ勤労者から住民税などの果実収入を受けているのです。
私が特に声を大にして言いたいことは、地元の特産品を使うことは最初から当然に条件とすべきでしたが、返礼品の調達価格を寄付額の3割以下にするように義務付けることは、ふるさと納税制度が秘めている地方創生に貢献できる可能性を大きく殺ぐものだということです。その理由は簡単に言うとこうです。
返礼品を寄付額の3割以下にするということは、残りの7割以上を寄付を受ける自治体にとどめ、自治体が施策を実行する費用に充てるということを意味します。しかし、すべてと言うわけではありませんが、行政がらみの事業施行は利権がらみになりがちだし中間経費が高くついて非効率だというのも周知の事実です。それに対し、地元特産品を返礼品として利用すれば、宿泊や遊具レジャー施設の利用を含む地元特産品の発掘と需要を喚起し、最終的にはヒトと物とカネが地方に循環するようになります。
つまり、ふるさと納税にはヒトと物とカネを地方に循環させる可能性があるということであり、こうした仕組みを地方創生の施策として確立しなければいけません。均等な競争を維持するために、返礼品について全国一律の上限割合を設けることは考えられるでしょうが、寄付を受ける自治体自身は地元特産品の発掘や宣伝その他ふるさと納税事務が円滑に進むよう、遺漏のない舞台設定をすれば十分なのです。
みなさんも、総務省とふるさと納税改悪に好意的なニュースを多く取り上げるNHKに、反対と抗議の声を届けてください。
なお、私のこのブログの2014.3.13付「ふるさと直方同窓フォーラム」の提案の「1(3)ふるさと納税制度を活用して直方の街おこしをしよう❣」もご参照ください。