ふるさと直方フォーラム

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ふるさと納税改正案は角を矯めて牛を殺そうとしている  ふるさと納税改正案に対する代替案の提案(2) 2019.3.22

なお、大都市圏自治体からの税流出が著しいとの報道がある。しかし、納付すべき個人住民税の全額をふるさと納税できるのではなく、約2割の上限があり残り約8割は依然居住自治体に納付される減収分の75%は交付税で補填される。そもそも大都市圏の自治体は地方で育った人が社会人になって転入してきたことにより棚からぼた餅的に住民税収入を得ているのであるから、ふるさと納税が増えたために税収が大きく減ったと騒ぐのは前後関係の全体を見ない議論である。

他に返礼品目当てのふるさと納税は見返りを求めない寄付本来の姿に反するなどの批判がある。窮状極まる地方の現状を顧慮しない雲上人の論というしかないが、ふるさと納税は入り口では寄付と寄付金控除という形をとっているが、根幹は居住自治体からふるさとへの住民税の一部移転であり利用者もこれを認識して行っているのであるから美徳うんぬんを持ち出して批判する問題ではない。

さらに、富裕層ほど節税効果が大きく不当であるとの批判がある。例えば、年収500万円の単身者のふるさと納税枠は6.7万円であり、寄附金額がこれ以下であれば適用下限額2,000円を除いた額が税控除されるだけであるが、年収が1000万円とか5000万円の高額所得者になると、ふるさと納税枠はそれぞれ18.8万円とか436.2万円となり、適用下限額2,000円を除いた残りの税控除される額が絶対的に多くなり不公正というのである。

しかし、これも大都市圏自治体からの税流出で指摘したように、高額所得者は納付すべき個人住民税の約2割を上限にふるさと納税できるだけで、残り約8割、つまり税控除される額の約4倍を依然居住自治体に納付しなければいけないことを見落として議論している。つまり、直接的な脱税そのものはもちろん、タックス・ヘイブンへの租税回避あるいは税の減免制度により税負担を免れているのではない。

高額所得者の立場から見ると、ふるさと納税として高額を税控除してもらうためには個人住民税だけでも税控除される額の約4倍、他に相当の倍額の所得税を納付して初めて享受できる恩恵である。悔しかったら高額納税者になってみろというのは言い過ぎであるが、頑張って所得をあげ国と自治体の歳入増に実際に貢献して初めて享受できる恩恵なのであり、納税しないで不当な利益を得ているのではない。税制度の全体と具体的な運用の実情を踏まえ、批判の矛先を正しく見定めて議論する必要があると思う。