ふるさと直方フォーラム

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基本政策を実施する施策の立案②の1 -大塚市長の所信表明や抱負を公共政策の定石から考える(7)ー2019.10.9

基本政策その2 『人に夢を』を実施する施策 (Program) は、「子どもたちからお年寄りまで、障がいのある人もない人もそれぞれの人権が尊重され自立して生きられる地域社会、自己実現が可能となるような地域社会」実現に尽力するというものです。

 これらが日本社会の重要課題であることは誰も否定できないことですし、大塚市長の〔狙い・意図〕はまったく正しいと思います。しかし、『人に夢を』という表現からイメージされるものと、人権が尊重される社会や自己実現が可能な社会とどういう思考と論理でつながってくるのか、若干分かりにくい気もします。二回に分けて考えます。

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まず、大塚市長の意図を正しく理解するために、「現状認識、課題の発見や取り組む事業の狙い」 (注 これらは大塚市長による表現ではありません。そのため、誤解している可能性があります。指摘があれば訂正しますのでご教示ください。) を見てみます。上の図を参照してご覧ください。

 

初めに、1)で「教育こそ重要・・・幼児期に人間として生きていく上で必要な基本的な力をしっかり身に着けさせることが重要・・・幼稚園や保育園の充実に向け支援していきたい」と述べています。これも、これ自体はもっともなことと思いますが、今度は人権が尊重される社会、自己実現が可能な社会がどういう経路でここの「教育」とつながってくるのか、分かりにくいように思います。

 

2)  「義務教育の中では、・・・低迷する学力を早い段階で県レベルへ引き上げることを目標とします・・・プログラミング教育やグローバルな競争に対応するための英語教育などの充実に努めてまいりたい」とも述べています。今日の保護者の願いや福岡県内における筑豊地区の現状などに鑑みると、外すことのできない課題の認識であると思います。

 そうではあるのですが、1)の「幼児期に人間として生きていく上で必要な基本的な力をしっかり身に着けさせる」から、7歳から始まる義務教育で教育の重点を学力へと切り替えることが本当にいいのか、日本社会のいろんな現実を踏まえると、もう少し慎重に覚悟して選択しなければいけない二者択一の関係にあるような気もします。

 仮に、義務教育では教育の重点を、人間として生きていく上で必要な基本的な力から学力へと切り替えることが必要だとしても、どのような条件を充たしたとき学力の向上が達成されるのか、切り替えにより得るものと失うものなどについて、きっと研究の蓄積もあるはずですから、実務上の処理手順としてはそうした条件や損益の分析を共有して議論し、切り替えの是非について合意を形成する作業が必要になるように思います。

 なお、この2)も、施策としての人権が尊重される社会、自己実現が可能な社会を、実現に向け一歩前に進めようとするものなのでしょうが、1)と同様、両者間のつながりが今ひとつはっきりしません。

 

3) 「夢にチャレンジしこの地で頑張りたいという若者に応えられる働く場を提供することや起業してもらえる環境整備に努め」るというのは、大変かっこいいし、実現できるならまことに結構なことです。

 しかし、働く場の提供にしろ、起業してもらえる環境整備に努めるなど、この数10年間そうした土壌や基盤がなかったと思われる直方でそんなことが実現可能か、私は率直に言って疑問です。それに、若者の多くが都会へ流出するのは働く場のあるなしだけではないとも思いますので、結論として、私はこうした事業に無理をして大きなエネルギーを注ぐことには賛成できません。

 取り組むとすれば、一度ふるさとを離れて都会に出た若者が、年月を経てふるさとに戻りたくなったとき、それを寛大な心でさりげなく受け入れる「戻れる場」の提供です。似たようなことを言っているだけと思われるかもしれませんが、最初からふるさとを離れないように引き止めたり、若者向けの働く場を提供するというのは、自然の摂理に反して抵抗が大きくコストパフォーマンスも悪く、最終的には4年後や8年後の政策評価・事業評価で厳しく評価されることになるおそれがあると思います。なお、この3)についても1)や2)以上に、人権が尊重される社会および自己実現が可能な地域社会の実現とのつながりが分かりづらいように思います。

 

4)  ジェンダー平等の社会、生涯学習社会、女性の力が十分発揮できるような環境整備、自己実現がどのような年代においても可能な社会、健康寿命を延ばす取り組み、そして住み慣れた地域で暮らしやすい地域社会づくりはどれも立派過ぎるほどに立派です。これらは経済大国になった日本が置き去りにしてきたというか、成し遂げることができていないものですし、日本が本当の意味で豊かな社会になるためには是非とも達成しなければならない大きな課題であることは明らかです。

 

それだけに、実現に向け本気で取り組むというなら、華々しくアドバルーンを揚げるだけでなく、十分な準備と周到な計画を立てなければいけません。そうすると基本的な問題として、上に挙げたジェンダー平等の社会などを政策体系全体の中で単に事務・事業として位置づけることが適切か問題になると思います。

 つまり、これらは、いわば横綱大関クラスの重要テーマですから、「直方に元気を取り戻したい」という最終目標と同じレベルとしてもいいくらいです。一段下げて、『人に夢を』という基本政策レベルの扱いとすることもありえるでしょうが、少なくとも「人権が尊重される社会および自己実現が可能な地域社会の実現」という施策レベルで取り上げるべきだということです。次回、続けて1)から4)をまとめて検討することにします。(続く)