ふるさと直方フォーラム

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ふるさと納税改正案は角を矯めて牛を殺そうとしている  ふるさと納税改正案に対する代替案の提案(1) 2019.3.22

ふるさと納税の返礼品を寄付額の3割以下で地場産品に制限する地方税法改正案が審議されている。政府は地方創生推進の観点からふるさと納税を拡充してきたが、規制の動きを受けすでに昨年秋から寄付激減の兆しがある。ふるさと納税本来の目的を実現する方策を提案する。

ふるさとの活性化に貢献しようとするものである以上、地場産品に限ることは当然である。ネット通販かカタログショッピングのようだといった批判があるが地場産品に限ることでほとんど是正されよう。めぼしい地場産品がないと嘆く自治体が少なくないが、後述のふるさと宿泊券など先ずはしっかり工夫してほしい。では返礼品を寄付額の3割以下に制限することは適切か。

返礼品競争の実情を正しく認識して3割以下制限の是非を考えたい。ふるさと納税は個人住民税の2割を上限に利用が認められる。個人住民税(全国)は13兆円弱(平成30年度予算)であるから上限一杯利用されると最大2兆6千億円が自治体間を動く。しかし、平成30年における住民税控除額は約2,448億円であり、上限の1割に達しない利用である。一方、寄付受入額上位50自治体に全国の総額(2017年度3653億円)の約4割が集中し、その結果多くの自治体で収支が悪化する偏りが生じている。

このとき、是正しなければならない実情を正確に認識するなら、ふるさと納税が利用され過ぎていることが問題ではなく、豪華返礼品と一部自治体に寄付が偏っていることが問題ということになる。利用され過ぎているというのであれば返礼割合を一律に下げて熱を冷ますことが考えられるが、寄付が偏っていることが問題であるから偏りを是正する方策に焦点を合わせて議論しなければいけない。

すると、返礼割合の高い自治体に寄付が偏る可能性はあるから、返礼割合を全国一律とすることは合理的である。ただし、一律で足り偏りを是正するために3割以下とするのは不要である。また、肉、カニ、コメなどの人気ブランドを地場産品とする自治体があるとき、一律3割以下の制限を課したとしても偏りは生じうるであろう。結局、現在の改正案は偏りをなくすための有効な方策ではなく、むしろすでに兆候が表れているようにふるさと納税の利用を急減させる可能性がある。

そこでふるさと納税を着想した原点に帰って制度を再構築することが考えられる。ふるさと納税できる自治体を自由に選べることが行き過ぎた返礼品競争を作り出した面のあることを率直に認め、進学や就職によりふるさとを離れた人がシンプルにふるさとを応援し恩返しする制度とするのである。たとえば、生まれ育ち通学した学校のある地域や親祖父母の住むところなど、ふるさと納税できる自治体を本人が自由に決めて5つまで個人番号カードに登録することとし、そこにふるさと納税できる制度とするのである(10年経過後に変更できることにしてもいい)。

ふるさと納税できる自治体の数を限るところがミソであり一種の囲い込みになるため国全体のふるさと納税総額は少なくなる可能性があるが、過熱気味の自治体間競争や偏りは格段に減少しよう。自然災害被災地などについては国が指定し、登録されている場合と同様にふるさと納税できるとすればよい。

では3割以下制限についてはどう考えるか。ふるさと納税には地方創生を推進する役割が期待されているが、地方創生に肝要なことは地域内に「人とモノとカネの循環」をもたらすことである。補助金付公共事業によってカネとモノはもたらされてきたが、東京一極集中と地方の過疎化は進むばかりであり、地方を人で賑わす施策が渇望されている。地方創生の切り札が見つからない中、ふるさと納税はそのための潜在能力を有しており、それを開花させるために3割以下制限は有害である。

たとえば、1万円のふるさと納税に対して調達価格8千円のふるさと宿泊券を返礼品にしたとしよう。ふるさと宿泊券の利用で人の賑わいがもたらされるが、親せきや友人知人と会食したり同窓会に出席し二次会にも出かけて地産地消が促される。都会に戻るときには土産を買ってカネを落とす。ふるさとが人で賑わい、街の売上げと住民の所得もアップし、次年度住民税収入が自ずと増える。返礼割合を下げて自治体の手元に多くを残し行政施策の原資としても、行政主導の施策は利権がらみに陥りやすいうえ中間経費が高くついて非効率というのは周知である。地方創生は民のかまどを賑わすことから始めよということである。ふるさとの自治体は返礼品の開発を奨励し、できた返礼品を紹介して2割程度の手数料をもらう問屋の役に徹する位でいい。結局、地場産品条件は強制すべきであるが、返礼割合を何割とするかは自治体の選択に委ねていい。