安倍首相は先日民主党政権を「悪夢」と切って捨てたが、これに対して野田佳彦元首相がアベノミクスの「大悪夢」に危惧を表明するとともに、オールジャパンでこの「大悪夢」に立ち向かうしかないと決意を述べる記事に出くわした(2019年3月5日Texts by サンデー毎日、おそらく3月17日号)。安部首相と周辺はアベノミクスの成果による史上最長政権であるとか、いざなぎ景気以来の好景気と言って浮かれているが、ひたひたと押し迫ってきている内実は、金融と財政の両方とも出口と入り口が見えない最悪の袋小路に入っており、オールジャパンでこの「大悪夢」に立ち向かうしかないとの分析である。
私も以前、30年後の持続する直方の創造を目指すために、「オール直方の力を結集し、子どもや孫たちが夢と誇りの持てる直方を創ろう!」(初出2018.9.19 )を提案している。国と一自治体にすぎない直方市という違いはあるが、財政状況の厳しさや今後の人口の顕著な減少という共通する事情を踏まえると、「オールジャパンでこの「大悪夢」に立ち向かうしかない」というのは今の直方にも当てはまると思う。市長選挙が来月に迫っているが、立候補者はこれくらいの危機感をもって市長候補者としての政見と公約を提示し、市民はしっかりと吟味してほしい。
以下の引用は上記サンデー毎日記事の一部です。太字は私によるものです。
アベノミクスの副作用こそ
史上最長政権の全能感?
「自分だけが、という意味の高揚感がある一方、そうはいってもアベノミクスを含めいろんな旗は立てたが、結果が出ていない。あわててレガシー探しをして、功を焦っているような……」
アベノミクスは?
「異次元金融緩和政策は、政治家が学者のようにデフレは貨幣的現象だと言い切ったところから始まった。実現のため日銀総裁の首をすげ替え、政策決定会合のメンバーも人事で入れ替え、現在は全部リフレ派にした。2016年1月のマイナス金利導入決定会合では5対4と別意見があったが、今は金太郎飴(あめ)状態だ。反省して軌道修正、または撤退したりすることができないレールに自らを追い込んだ」
「アベノミクスで脱デフレができなかったことはもうわかっている。むしろ、異次元の副作用が現実化してきている中で、それに対してごめんなさい、ではなくて、苦しいけど先に進もうという路線をまだ取っている。悪夢どころか大悪夢、地獄を見るのではないか」
異次元の副作用?
「マイナス金利は地銀の収益を上げるビジネスモデルを崩した。地域経済にはものすごい影響がこれから出ていく。量的緩和の行き過ぎはマーケット原理を歪(ゆが)めた。債券市場も株式市場も官製相場になっている。日本経済は市場という貴重なアンテナを失っている」
金融の出口は?
「想像つかなくなってきた。日銀が大量の国債を購入、手放せない状態だ」
手放した途端にどう?
「市場へのメッセージを含めてものすごく難しくなってきている。日銀のETF(上場投資信託)購入もやり過ぎてきたが、あれすらやめるとは言えない」
財政は?
「日銀が無制限に国債を購入する財政ファイナンスが、財政規律を崩している。現役世代の票さえあればいい、将来世代を慮(おもんぱか)る気持ちのない政治がど真ん中にある。20年度財政収支黒字化という小泉純一郎政権以来の目標も5年先延ばしにした。アベノミクスが宣伝するほどの税収アップ、財政改善効果がなかったことを自ら認めたようなものだ」
ということは?
「財政の入り口にも立てない。金融の出口も見えない、この入り口と出口がセットになっているが、両方とも見えないという最悪の袋小路に入ってきている」
袋小路の脱出法を政治が考えるべき時期に入った?
「そうだ。ただ、非常に難しい。危機を煽(あお)ると過剰反応が起きる。ただし、いざとなった時にはきちんとものを言う。もう、ETFはダメだよ、と言い始めていかないといけない」
「バラマキ増税でもわかるように首相の思い付き、独善が致命的になってきている。独善を止めるためにも参院選は大事だ。選挙で退陣に追い込むことだ」
安倍退陣で政策変更しない限り出口はないし、まともな増税はないという認識だ。その受け皿は誰が?
「誰がやっても大変だ」
1997年のアジア通貨危機で韓国がIMF(国際通貨基金)管理下に入り、血が出るような経済改革を迫られたことを思い出す。
「韓国はIMFが助けられる規模だったが、日本では無理ではないか。特定の政治家ではなくてきちんとしたチームでないとできない大テーマだと思う」
与野党超えた救国政権? 福田康夫政権では民主、自民の大連立構想があった。
「クラッシュになる前に意思疎通できる自民党の人たちと知恵を出していく」
誰と?
「特定の誰かではない。オールジャパンでやるしかないのではないか」
安倍首相を退陣に追い込むしかない
野田氏は首相経験者といえどもまだ61歳だ。毎朝2~3時間の駅頭立ちはいまだに続けている、という。一体改革を成し遂げた手腕に再登板を望む声が経済界にもある、と聞く。安倍政治の悪夢性から解放されるためには、選挙で野党が勢力を拡大、安倍氏を退陣に追い込むしかない、と明言した。ただ、その後の政体については、大連立を念頭に置いている感もあった。アベノミクスの出口と連動する動きであろう。