ふるさと直方フォーラム

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地域の課題を「自分ごと」として考える住民協議会方式の試み 2019.1.17

 

 

今日は阪神大震災から24年です。あの日の5時46分だったのですが、夜明け前の5時半頃から私はマンション3階のベランダで大阪湾から明石海峡を見渡しながら歯磨きと屈伸運動を終わり、部屋に戻ろうとしていました。そのときでした。西南の方角からガサガサとした後、ものすごい揺れと響きに襲われました。かろうじて転落を免れ、部屋に戻ろうとしましたが、部屋の中は小山ができたように物が散乱していました。私が寝ていた和室では、洋ダンスの上に置いていた博多人形のガラスケースだけでなく、和ダンスの上半分が外れて私が寝ていた布団の上に落ちていました。何も分からないまま夜が明けて様子を見ようと阪急六甲辺りまで車で出かけましたが、道路があちこちで凸凹状態になり、変な煙も出ていたので、ようやく大変なことになっていると気づき自宅に逃げ帰りました。何日もした後、崩壊した近くのアパートで下敷きになった神戸大の学生がいて、友人が助けようとしたのですが、迫ってきた火に負けて助けられず、若い学生は亡くなったという話を聞きました。自分の無知と無力を悲しく恥ずかしく思ったことを思い出します。合掌。

 

以前、オール直方の力を結集するオール直方委員会をスタートさせよう!』を提案しました。提案のきっかけは、直方の人口や財政の状況が顕著な低減悪化傾向にあるにもかかわらず、市のHPで公表されている「総合計画・総合戦略」や市長の「施政方針等」などをいくら読んでも、希望ある直方の未来像を提示しようとする成果どころか、動きを垣間見ることができないからです。

 

そして、ただただ審議会類似の組織が肥大化しているだけで、親方日の丸意識のまま、権限と責任が分散し誰一人政治的にも経済的にも責任を負わない無責任体制を是正しなければならないと思ったからです。国や県における審議会の実態については、「官僚の作文を委員が追認し、審議会の名で答申や報告書を公表している。そのため、最初から役所が意図していた原案に専門とか中立の立場からのお墨付きを与える結果で終わることが多い。そして、省庁等は幅広く国民の声を聴いたとして、施策の正当化に利用している。」といった批判をしばしば耳にしますが、この批判は直方市の審議会等についてもそっくり当てはまるように思われます。

 

しかし、突然、オール直方委員会をスタートさせよう!と言われても、なかなかイメージが湧かないかもしれません。そこで、ピッタリではないのですが、それに近いものを例に挙げて説明したいと思います。

 

紹介したいのは、無作為に抽出した市民が参加する「住民協議会」手法と呼ばれているもので、民間の政策シンクタンク構想日本」が提唱しているものです。この住民協議会手法は、なんと福岡県大刀洗町が全国で初めて2014年度から本格実施し、ごみ問題や地域包括ケア、子育て支援などを議論し、ごみ指定袋の見直しなどにつながったそうです。

ほかに、香川県三木町、千葉県富津市、茨城県行方市滋賀県高島市で、自治体が主催者となり、移住促進策などを議論しています。浜松市では内閣府がモデル事業として防災をテーマに実施し、神奈川県伊勢原市と北海道恵庭市では市議会の会派が主催しています。国や自治体、市議会会派が関与しない住民団体主催の住民協議会も昨年7月松江市で初めて開かれています。

このうち、千葉県鴨川市の「小湊地域の活性化と学校跡地活用を考える100人会議(100人会議)」の例を紹介します。

鴨川市は、人口が3万2千人あまりで太平洋に面しています。少子化が進み、小中学校の統廃合や廃校跡地の活用は全国的な課題ですが、同市では、平成 30 年度廃校予定の小学校と、隣接し既に廃校になっている中学校の跡地活用を中心とした地域の活性化を検討するため、政治や行政と接点の少なかった市民が、地域の課題を「自分ごと」として考えるための取り組みとして、住民協議会の手法を用いています。

具体的には、住民基本台帳から無作為抽出した市民を中心とした「小湊小・中学校の跡地活用を中心とした地域の活性化を考える100人会議(100人会議)」と小湊地区の各種団体等関係者を中心に「小湊小・中学校の跡地活用を中心とした地域の活性化を考える会議(検討会議)」を設置し、小湊地域の活性化や跡地活用の方策について、「日蓮上人ゆかりの地域資源をどう位置付けるか」「海と山の優れた自然をどう生かすか(漁業のこれから)」「観光地としての生き残り策(小湊鉄道との連携など)」「少子高齢化に対応した地域をどうつくるか」の4つの観点から約1年間議論しています。

その議論の結果やプロセスをまとめた報告書(案、全20頁)が市のHPで公表されていますが(http://www.city.kamogawa.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/6/181125-5.pdf)、手作り感があり、市民が「自分ごと」として考えた成果であることがひしひしと伝わってきます。ここまでの手作り報告書ができあがっていれば、これまでのように、報告書を作成してそれでおしまい、後は知らないなんてことにはならないだろうなという気がします。

「100人会議」の運営には、政策シンクタンク構想日本(代表加藤秀樹) から派遣されたコーディネーターとナビゲーターが協力していますが、加藤秀樹氏は次のように語っています。

「この会議のキーワードは「手作り」だと思う。自分で作ったものは、 買ってきたものよりも 愛着がある。まちづくりも同じではないか。小中学校の跡地をどうするか、住民同士で議論することを通して、鴨川市のまちづくりが 「手作り」で行われていくための場づくりをしていきたい。」

上記のほか、現在進行形の住民協議会として、岡山県新庄村が「役場庁舎の建て替えについて」をテーマに開催している「村づくり自分ごと化会議」があります。新庄村は人口が900人ほどの村ですから委員を選ぶために無作為抽出する必要がないようにも思われるのですが、主催者である村議会の議長曰く「行政や議会の集まりに出てくるのは『世帯主』(=男性かつ高齢)しかいない。それを変えるために無作為抽出をしてみた」そうです。

村民120人を無作為に抽出して送付したところ、17人から応募があったそうです。しかも、17人のうち6名(35%)が女性。かつ40代以下が40%。住民協議会は全4回の予定で、残り2回です(2019年1月13日現在)。もともとシナリオは一切なく、どのように決着するかまったくわからないけれど、「普段出てこない人ばかりが参加している」ということで、それだけでも半分成功したという声が出ているそうです。

なお、住民団体主催の住民協議会である松江市の場合、市の選挙人名簿約16万9千人から2200人余りを無作為に抽出して参加を呼びかけたようですが、抽出した人数の1%程度約20人が参加すると想定しているほか、若者の意見も反映させたいとして島根大学の学生5人程度も加える予定とのことです。

結局、「住民協議会」方式の特徴は、地域の課題を「自分ごと」として考え、取り組もうとする住民を無作為に抽出して行政の場に案内し、構想日本のような政策シンクタンクからの専門的技術的支援を受けてオープンに議論し、住民目線からの解決策を出そうという試みのようです。そして、首長だけでなく、議会(会派)も屁理屈を言わず、現実と向かい合って住民協議会の主催者になっている勇気には感心させられます。