ふるさと直方フォーラム

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『70歳の品格』 2019.1.14


 以前、「国家の品格」がベストセラーになり、その後も『ハケンの品格』はテレビドラマのタイトルですが、『女性の品格』『男の―』『親の―』『会社の―』『横綱の―』と題した本が出版されているようです。今日は成人の日ですが、俗化してきている「品格」の波に乗って、今日は私の『70歳の品格』を語りたいと思います。

前に、国の借金は今や1千兆円を超える巨額になり、それを私たち祖父母世代は子や孫の世代に引き継ごうとしていると書きました。つまり、祖父母世代は個人としてはお年玉や入学祝いを孫たちに渡して当座の世代間関係を取り繕っていますが、集団としては莫大な債務を子や孫たちに遺そうとしています。数字と経済の面から見るとかなりずるいことをしており、トランプ大統領アメリカ・ファーストに負けないほどの祖父母世代ファーストです。道義的に恥ずかしいことだと思います。

しかし、政治的には、「高度成長期のいざなぎ景気(57カ月)を超える好景気が続いている。雇用も正社員が78万人増えている」といったアベノミクスの宣伝が勝っているのでしょう。もりかけ問題がありましたが、去年9月の自民党総裁選で安倍首相は平穏に三選されていますし、内閣支持率は4割前後でほぼ安定的に推移しています。

それでも、いざなぎ景気を超える好景気が国民の生活を本当に豊かなものにしているなら文句ないのですが、借金が1千兆円を超えて膨張を続けているだけでなく、基礎的財政収支プライマリーバランス)の黒字化目標時期は2020年度から25年度にずらされ改善のめどすら立っていません。また、2015年厚生労働省国民生活基礎調査」によると、日本の貧困率相対的貧困率1は15.6%であり、かつてごく一般的だった一億総中流は消滅しつつあり、日本社会においても富の集中と貧富の格差2は拡大しています。

1 所得が国民の等価可処分所得(以下、可処分所得)の半分に満たない人の割合。厚生労働省の2015年「国民生活基礎調査」によると、世帯の可処分所得の中央値は年間245万円で、その半分つまり年間122万円未満の可処分所得しかない世帯が相対的貧困層、その割合が貧困率となる。さらに、ひとり親世帯の貧困率はすでに50%を超え、人口の3分の1を占める高齢者の半数が近い将来、貧困に陥ると見込まれている。

2 「世界のトップ8人の大富豪は世界の人口のうち経済的に恵まれない下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じ」(国際NGO、Oxfamレポート「99%のための経済」2017.1.16)

 

加えて、インバウンドの訪日外国人旅行客が著しく増加しているのは円安が大きく影響し、輸出大企業は大儲けして内部留保を増やしていますが、円で給料や年金をもらっている日本国民の実質賃金や世帯収入は国際的に見ると安く切り下げられていることを意味しているはずです。にもかかわらず、政府から“おもてなし”の質を高めてインバウンドの訪日外国人旅行客を増やせば、さらに景気は良くなり経済成長が続きますよと諭され、心がけと行儀作法の躾けまで説教されて、唯々諾々とそれに従ってばかりいるに至っては、情けない気すらしてきます。

先人の知恵と努力があってクール・ジャパンなるものがたくさん残っていることや、新しく生まれているクール・ジャパンがあることを否定しませんが、クール・ジャパン依存症的な姿勢ばかりを見せつけられると醜悪さすら感じます。

結論として言いたいことは、権力者がコントロールする政府に品格を求めることは木に縁りて魚を求めるようなものと思いますが、個人としては、自分ファーストでない程度の道義性と政府権力者の欺瞞を見破る知性を備えるという意味での「品格」を磨かなければならないということです。

願わくば、地球温暖化への対応も含め、持続する社会の創造に向け、小さくてもいいからその歯車の一つになるような生き方を実践したいと思います。そのような意味で、人生の第4コーナーを曲がった今、遅すぎるかもしれませんが、私は私の「個人の品格」、より正確に言うと、「70歳の品格」を高める生き方をしたいと思うのです。