ふるさと直方フォーラム

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自治体の「尊厳死」宣言と地方版「地方創生」総合戦略の策定  2015.5.22

共同通信が2015年1~2月に実施した地方創生に関する全国約1800自治体の首長アンケートの結果、2016年3月までの地方版総合戦略策定を政府が交付金の条件としていることに関し、50・5%が賛成する一方、45・7%が「どちらともいえない」と慎重姿勢を見せているという。

 地方版総合戦略策定について、自治体の間で受け止め方が異なっているということであるが、アンケート結果を分析した日本総合研究所によると、既存の計画と重複することへの疑問や、地域の実情に合わない計画作りを強いられるとの不安が多いらしい。

 

去年の夏以降、声高に叫ばれてきた政府の「地方創生」キャンペーンではあるが、もともと統一地方選挙対策として遂行されてきただけのものであろう。安倍政権の本音の関心と政策の力点は間違いなく安全保障法制の完成と強い国を作ることにあるのであり、地方選挙も終わった今、自治体が策定する地方版「地方創生」総合戦略に対する政府の財布のヒモは随分と厳しくなると思われる。

 

それでも、ふるさと直方道の駅構想を提案している私としては、もちろん、直方市を含むすべての自治体が、それぞれの創意と工夫で、一過性ではない将来的に持続可能な総合戦略を作ってくれることを期待したいが、今日は、以上に関連し、すでに読んだ方がおられるかもしれないが、「ある村が『尊厳死』宣言」という、いささかショッキングな見出しの西日本新聞記事を紹介して少し考えてみたい。

 

 人口減少が続き超高齢化したある村が1日、「尊厳死」を宣言した…=2015/04/02付 西日本新聞朝刊(下線は比山)=

 人口減少が続き超高齢化したある村が1日、「尊厳死」を宣言した。「延命措置」の施策を行わず、静かに自治体としての最後の時を過ごすというのだ

人手と予算を掛けてきた地域振興策を一切やめる。観光客を呼び込まなくても、新産業を起こさなくても、人口が増えなくてもいい。今、住んでいる人たち(大半が高齢者)が心豊かに暮らせることを行政目的にするという

▼例えば、後々お荷物となる“箱物”公共施設は造らない。道路など生活基盤は必要な補修にとどめ、作業も村民の手を借りて。村議会の定数は最小限にし、村長や議員の報酬も大幅にカット。宣伝効果が疑わしいゆるキャラは引退だ

▼浮かせた予算はすべて痛みを和らげる「緩和ケア」施策に充てる。お年寄りが遠くの病院まで行かずに済むよう「かかりつけ医」がいる村営診療所を開設。訪問介護も充実させる。買い物用のミニバスを走らせ、お使いの代行も。独居世帯は地域全体で見守る…

エープリルフールのきのう、政府が旗を振る「地方創生」から頭に浮かんだ「うそニュース」。国の財政支援を目当てに、地方が横並びで見通しの甘い活性化策に奔走するのではないか。そんな懸念から、流れに逆らう村があってもいいのかなと

▼自治体の「尊厳死」は冗談だが、地域と住民の尊厳は守らなければ。過去の無謀な開発主義が地方に深い傷痕を残したことを忘れてはなるまい。

 

ある村が「尊厳死」宣言という見出しからは、人間としての尊厳を保ちつつ死を迎えるため不合理な延命措置は一切施さないというのと同じように、人口減少消滅社会の傾向に対し、無駄な抵抗をしないで、自治体として消滅するときを迎えることを提案しているのかなと思った。

 しかし、村議会の定数は最小限にし、村長や議員の報酬も大幅にカットなどという重要課題は実施しているので、結局、見通しの甘い活性化策に奔走することはしないという趣旨のようであり、矍鑠かくしゃくとした元気のよさや、ある種のすがすがしさまで感じてしまう。

 

延命措置を施すにしろ、諦めてなにもしないにしろ、私見では、それぞれの途を選択する理由が重要である。上記では50・5%が賛成しているが、地域の特性に着目し、それを活かして、真に持続的な未来志向の計画を作るチャンスと捉えているのであれば大いに歓迎したい。

 しかし、自治体における従来の計画策定にはコンサル任せの金太郎飴的なものが多かったことを思うと、自らの創意と工夫で、一過性ではない将来的に持続できる計画を作る難しさを自覚したうえでの賛成でなければ、大した総合戦略など策定できないのではとの疑念が残る。

 

他方、既存の計画と重複することに疑問を抱いたり、地域の実情に合わない計画作りを強いられるとの不安を抱いているという方が、それぞれの自治体内部におけるこれまでの計画等策定の経緯と実情を正しく認識しているように思われ、正直だし、その分、むしろ信用できる気がする。

 

私は、ふるさとなどを数年かけて考え抜き、十分実現するに値すると信じて提案しているつもりだが、この「尊厳死」宣言記事の問いかけに真正面から答えることができているか、いささかの不安がないわけではない。

 

要するに、「地方創生」の実現と深化に期待しているのではあるが、これまでの経緯と実情を正しく認識するところからしか、正しい問題意識に基づく的確な解決策は生まれてこない。その意味では、「どちらともいえない」と慎重姿勢を見せている45・7%が、難しさを自覚しながらも、それを克服し、地域の特性を活かした個性的で持続できる地方版総合戦略の策定作業に取り組んでくれることを心から期待したい。