ふるさと直方フォーラム

《目標スローガン》 “人とモノとカネが往来し、循環する直方と筑豊を創ろう‼”  ふるさと直方と筑豊の再生に取組む主体をふるさと直方を愛するみんなで創ろう❣

2019直方市長選: 総括壬生市政 第5 回 今さらながらの前例踏襲主義中央省庁等への職員派遣

職員に意識改革を求める (登庁式職員への訓示) ことは必要だったと思うのですが、29年度から人材育成のためにということで、「農林水産省総務省などの中央省庁や衆議院法制局等へ職員を派遣」(平成30年度施政方針)しているようです。

 

地方創生に取り組んでいる内閣府の地方創生推進室などなら少し様子は異なるかもしれませんが、農林水産省総務省といった中央省庁は霞ヶ関の中央集権官僚支配を形成してきた本元です。彼らの政治と法、そして事務処理に関する文化の核心に共通するのは省益優先と前例踏襲です。また、農林水産省は「政治・官僚・農協」の利権トライアングルであり、総務省は機関委任時代同様の地方統制です。衆議院法制局も私が調査訪問などしたときの経験からすると、開かれてオープンな議論がなにより求められる住民参加の地方自治とは縁遠い雰囲気の組織です。


職員派遣の金銭コストも馬鹿にならないと思いますが、職員に対し「前例踏襲にとらわれることなく、常にあるべき姿を求め、改善と改革の意識を持」つ(平成27年6月26日市長所信表明)ことを求めるというのであれば、まさに逆の方向を向いた人材派遣になってしまっています。


ですから、金銭コストが大きいうえに、市民と向かい合う市役所と市の職員を育てるうえで大きな問題のある中央省庁に職員を派遣するなどより、直方市の地方創生まちづくりビジョンをしっかりと確立し、そのビジョンに合致するまちづくりに取り組んで成果を挙げている多くの自治体に職員を派遣するなりして実情を十分に調査してレポートを提出してもらい、首長以下全員で議論して市政運営に成果を還元するなどの努力をしてほしいと思います。(参照、公共施設の図書館と、民間による産直市場、カフェや居酒屋を合築している「オガールプラザ」で評判になった岩手県紫波町の例について、直方道の駅構想と岩手県紫波町「オガールプロジェクト」の共通点 2015.3.14)

2019直方市長選: 総括壬生市政 第4回 直方の教育に求められているのは少数のエリートを育てることではない

平成29年9月から中学校給食をスタートさせているようで、大変、すばらしい取り組みだなと思います。

しかし、平成28年度から国内で開催される国際サマーキャンプに中学生を派遣する事業をスタートさせていますが、その狙いと効果は直方市の教育方針の中でどのように描かれているのでしょうか。私は現在の直方の教育に求められているものは、限られた一部特定の児童や生徒に限られた経済資源を使ってエリートを育てることではないように思います。 

私が現在住んでいる茨城県古河市では2017年の夏、小中学生の子どもたちや教職員が多数参加して、教育の場でITを活用して子供たちの自主性や協調性などを伸ばした実践報告大会がまる2日間、開催されています。私も一日見学しましたが、普通の子供たちが大勢参加し、ITを活用して弱い自分を克服していった経験など、結構感動する報告もありました。 

現時点の教育分野におけるさまざまな試みが、広い意味では直方市の政治文化、行政文化、教育文化を形作っていき、将来における直方市の文化として残っていくように思います。そして、学校教育の面ではもちろんですが、市職員の意識改革や人材育成、さらにはシニア世代が活躍できる場の創造ということとも関係して、隠岐島海士町では大変素晴らしい取組みが行われており、そうした先進事例から直方市も多くを学んでほしいと思うのです。


隠岐島海士町は人口流出が激しく、「半数は地域外の高校に進学」し、島で唯一の県立高校も統廃合の危機に瀕していたそうです。その海士町でやってきたことは、「学校や学習塾の壁を超えて、多様な人たちが、子どもたちの未来をつくっていくために深い対話や共通体験の場をつくるということでした。

学校では単に勉強を教えるだけでなく、子どもたちが大人と一緒になって社会課題を解決していくプロジェクト型の学習を中心に行っています」「大人と一緒になって社会課題を解決していくことで、子どもたちは貴重な体験を積み重ね、深い学びを得て」いくことでした。そこで学んだ子どもたちは学校を卒業しても、学びを止めない。 

そういう活動を続けているなかで、12年前は中学を卒業すると半分が本土の高校に進学していましたが、いまでは9割が地元の高校に進学、さらに県外からも“島留学”や家族ごと移住がやってくるようになったということです。

 

こうした知恵を出し合い、地道な努力で画期的な成果を出している自治体を訪ね、明確な問題意識をもち、地域のみんなで取り組んでいる実情を学ぶことは、限られた特定の子どもだけを外部に留学派遣するエリート育成志向より、全員にはるかに多くを還元でき、公教育にふさわしい収穫を得ることができると思います。国際サマーキャンプに中学生を派遣する事業とは優先順位の違いにすぎないかもしれませんが、底上げというか不特定多数の多くが育つ土台と枠組みを作ることを優先してほしい思うのです。


 
より詳しくは隠岐島での取り組みに関係した岩本悠氏らが立ち上げた以下の活動を参照してください。 

c-platform.or.jp 

以下は、地域・教育魅力化プラットフォームのビジョンです。

社会に開かれた魅力ある教育の実現により、地域社会の未来に意志ある若者たちが続々と育ち、「過疎化」した地域の「魅力化」が始まり、地方への新たな人の還流が生まれていく。
地域は子どもたちが憧れる本気の大人と若者に溢れ、多様な主体が協働しながら課題解決に挑戦し、課題先進地域で起きた様々なイノベーションが拡散・伝播し日本社会全体を変えていく・・・
日本はGNH(国民総幸福度)の高い持続可能な社会づくりのモデルとなり、「課題解決先進国NIPPON」として世界に貢献していく・・・

教育現場が活気であふれ花開くためにはもちろん経済も大変重要だと確信します。以前に書いています下記もご参照ください。 

学力向上のための教育施策には地域の経済力アップが欠かせない!

2019直方市長選: 総括壬生市政 第3回 企業誘致は地方分権以前の発想、そして遅すぎる目的不明の視察 

平成29年度施政方針からは企業誘致に取り組むと明言しています。具体的には、「企業立地奨励金は全 9 件で合計 5,816 万 9 千円の交付を行った。それに伴い 27 名の 新規雇用者があった。」 (第1回直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略検証会議議事録19頁) との成果が報告されています。


しかし、企業誘致は基本的には他力本願的要素が強い高度成長時代の施策であり、持続性ある自立したまちづくりという観点からすると、いささか外れる施策です。また、企業から見ると、自治体側が誘致してくれるから進出を決めるというのではなく、経営判断として進出に伴う費用便益を企業独自の立場から厳格に損得勘定しています。進出した後の縮小や撤退についても同様です。


したがつて、進出先の自治体としても、やみくもに企業進出の結果を出せばいいということでなく、自治体として長期的にどのような街づくりをしようとしているのか、その街づくりの内容に合致する事業を行う企業か、奨励金を提供しなければその企業は進出できない環境にあるのか、提供する奨励金に見合って直方市が受けるメリットについて短期的および長期的にどのように考えているのかなど、慎重な検討と合理的な判断が求められます。従来から「直方市にも企業立地奨励金という制度がある」からそれを使うというだけでは、「これまでの慣習や慣例にとらわれ」ていることになります。


壬生市長は、29「年度から、市内の各企業を積極的に訪問し、そのモノづくり の現場を自ら知るとともに、経営者の方々と積極的に意見交換を行うとの目標を定め、これを実践してまいりました。モノづくりの現場を知り、 様々な経営者とお会いして会社経営の理念に触れたことは、市政運営にとりましても極めて有意義なことでありました。本年度もこうした活動を継続し、民間の企業経営から学んだものを市政運営に活かす」(平成30年度施政方針)と述べています。

 

一見すると、立派なことに見えます。就任当時、市政を担当するにあたっての「基本的な考え」として壬生市長が第一に掲げていた現場主義とも合致するように思われます。つまり、「市政運営上、問題となっている現場に 積極的に出向き、その現状を把握し、関係者の意見を聞き、その問題の所在と背 景を自ら確かめ、市民の皆様の意見を聞きながら、判断していく」(平成27年4月市長登庁式職員への訓示)と訓示していましたし、私も立派なものだと大きな期待を抱いていました。

 

しかし、「会社経営の理念に触れたことは、市政運営にとりましても極めて有意義」であったと言うのなら、第2回(続き)で指摘したように、先ずは「収入以上の支出はできないし、しない」財政運営に取り組んでほしかったと思います。また、29年度というと平成27年4月の就任から2年あまり経過した頃なので、ここでもまた、しなくてもいい私選弁護士業務に気持ちと時間を奪われたから取組開始が遅れてしまったのじゃないのかと言いたくなります。何も知らずに行政マンになった首長としては、もっと早く就任してすぐに取り組むべきだったと思ってしまいます。 

 

就任から2年あまり経過していた頃であれば、既に現場の実情を知ったうえで目的と目標達成のための課題解決に取り組んでいることが期待されます。それを今さら「モノづくりの現場を自ら知る」ために出かけるなんて、金正恩がしている専制君主の視察じゃあるまいし、次の選挙を意識しての企業訪問でしかないのではないかと邪推すらしてみたくなります慣習や慣例にとらわれなくていいから、もっと次元の高い思考と活動をしてほしいと願うばかりです。

2019直方市長選:  総括壬生市政 第2回(続き) 前提政策要因として直方市人口ビジョンと将来の財政状況に留意できていない

 

 


次に、財政力が縮小し弱体化していくことについて述べます。

一 客観的なデータ

人口減少は市民税収入の減少に直結しますが、もう一つの大きな歳入源である地方交付税交付金の減少にもつながります。なぜなら、地方交付税交付金は基本的に「人口等を基礎に機械的に算定」される基本財政需要額を見定めて算定されるからです。


そのため、人口が減少すれば、それに比例して財政規模も縮小せざるをえません。これは財政支出を必要とするすべての施策と事務事業について、縮小のための見直しを余儀なくします。


ところで、現時点における直方市の財政状況は、地域経済分析システム(RESAS)の「主要財政指標比較レーダーチャート: 2016年直方市(https://resas.go.jp/municipality-finance/#/area/8.828665428303015/33.53711514/130.8218368/40/40204/2/2017/1/-)では以下のような図で示されています。レーダーチャートの字が見えにくいので、その内容を下に正確な数値と一緒にボックス状の表で示していますので、併せて見ていただくと正しく理解できます。

 

f:id:FurusatoDosouForum2015:20190202222934p:plain

 

 

財政力指数

経常収支比率

実質公債費比率

将来負担比率

人口あたり職員数

人口1人あたり人件費・物件費等の決算額

ラスパイレス指数

直方市

110.00

 106.38

136.23

188.12

  86.91

   93.61

 101.61

全国平均

100.00

100.00

100.00

100.00

100.00

100.00

100.00

[言葉の説明]
財政力指数

地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。財政力指数が高いほど普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるといえる。


経常収支比率
地方公共団体の財政構造の弾力性を判断するための指標で、人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費(経常的経費)に充当された一般財源の額が、地方税普通交付税を中心とする毎年度経常的に収入される一般財源(経常一般財源)、減収補てん債特例分及び臨時財政対策債の合計額に占める割合。この指標は経常的経費に経常一般財源収入がどの程度充当されているかを見るものであり、比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいることを表す。


実質公債費比率
:当該地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金及び準元利償還金の標準財政規模を基本とした額(※)に対する比率。借入金(地方債)の返済額及びこれに準じる額の大きさを指標化している。比率が大きいほど資金繰りの厳しさを示している。(※標準財政規模から元利償還金等に係る基準財政需要額算入額を控除した額。)


将来負担比率
:地方公社や損失補償を行っている出資法人等に係るものも含め、当該地方公共団体一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模を基本とした額(※)に対する比率地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化している。比率が大きいほど将来財政を圧迫する可能性の度合いことを示す。(※標準財政規模から元利償還金等に係る基準財政需要額算入額を控除した額。)


人口あたり職員数
都道府県の場合は人口10万人、市町村(特別区を含む)の場合は人口千人あたりの職員数。


人口1人あたり人件費・物件費等の決算額
:人口1人あたりの人件費、物件費及び維持補修費の合計。ただし、人件費には事業費支弁人件費を含み、退職金は含まない。


ラスパイレス指数
:加重指数の一種で、重要度を基準時点(又は場)に求めるラスパイレス式計算方法による指数。ここでは、地方公務員の給与水準を表すものとして、一般に用いられている国家公務員行政職(一)職員の俸給を基準とする地方公務員一般行政職職員の給与の水準を表している。

 

ニ 検討

上記図を見ると、あくまで全国平均を100とした場合の指数であって、それ自体の絶対的な良し悪しを示しているわけではありませんが、財政力指数、人口あたり職員数および人口1人あたり人件費・物件費等の決算額の数値がなかなか良くて、経常収支比率はやや少し、実質公債費比率はかなり、そして将来負担比率は非常に悪いことが読み取れます。


現時点で財政力指数はいいのに、なぜに経常収支比率、特に実質公債費比率と将来負担比率が全国平均と比べてかなり悪くなるのか私には正確に説明できません。しかし、表面だけ見ると今はほどほどによい状態であっても、「借入金(地方債)の返済額などの大きさ」を示す実質公債費比率がこれだけ悪いと、将来の資金繰りは相当厳しくなりそうだと思いますし、「一般会計等が将来負担すべき実質的な負債」の大きさを示している将来負担比率が限りなく悪いので、将来の財政破綻すら現実味を帯びてくる状況ではないかと不安になります。


そして、直方市では「毎年、介護費等の扶助費は、1 億円を超える規模で増大」(平成29年度施政方針)しているようですが、この増大する傾向自体は毎年度経常的に支出される経費(経常的経費)に算入されていないでしょうから、経常収支比率も今後20年ほどいっそう悪化すると思います。


財政について、壬生市長は平成29年度と平成30年度の施政方針で次のように述べています。
「財政上の重要な課題は、本市の財政における経常収支比率が 極めて高く96パーセントを超えているということであります。本市の財政力指数は 0.538 であり、さほど懸念される状況にはありませんが、 経常収支比率は、近隣の自治体と比較してもかなり悪く、県内でも下 2 位に位置づけられるものであり、財政の硬直化は明らかであります。 平成 29 年度におきましては、この財政の硬直化について、十分検討を行い、その原因と改善の方策について明らかにしていきたいと思います。この問題は、単年度で解決できる課題ではないと思料されますが、まず平成 29 年度からこの課題の解決に取り組んでまいりたいと思います。」(平成29年度施政方針)


「1 財政硬直化の緩和  平成 29 年度の施政方針でも指摘した財政上の重要な課題であります財 政の硬直化とその緩和について、本年度も継続して取り組んでまいります。昨年度におきましては、この財政の硬直化について、庁内で勉強会 を実施するなどして、全職員がこの問題の重要性を十分認識するとともに、枠配当予算の 4 パーセント減により、各所管課において、事業の検 証と見直しを徹底し、できる限りの歳出の抑制を行いました。このよう に全職員が財政に対する問題意識をもち、財政の硬直化の緩和への取り 組みを行うようになりました。本年度も引き続きこの取り組みを継続してまいります。」(平成30年度施政方針)


いろいろ感想はありますが、以下では特に声を大にして叫びたい意見を述べます。

第1は、平成 27 年に就任したのに平成 29 年度から財政の硬直化について検討を始め、原因と改善の方策に取り組むなんて遅すぎます。「職務に支障がない範囲で刑事弁護を引き受ける」なんて強弁する余裕はなかったはずです。自分の家計であれば、そんなのんびりしたことはけしてできないだろうにと思います。遅くとも翌30年には、原因を解明するとともに、改善の方策を示すべきです。


2番目は、「庁内で勉強会 を実施した」(平成30年度施政方針)と自慢げに述べていますが、枠配当予算の 4 パーセント減というのは、その年度内かぎりで投資的あるいは裁量的に利用できる資金を捻り出しているだけです。あくまでその年度かぎりで一時的にとりつくろう「弥縫策」的な対症方策でしかすぎず、直方市の長期の財政像を描き出すなり将来世代の負担を軽減する対策は検討されていません。もちろん、一般の市民や企業人なら、収入以上の支出を削ることに最低限取り組むはずです。

 

要するに、地方財政の健全性を判断する重要な指標とされているものの中で、経常収支比率が悪いために当該年度、柔軟な財政運営ができないことにしか目がいっておらず、将来の財政状況を大きく拘束する実質公債費比率や将来負担比率を視野に入れ、長期的見通しに留意しながら原因と改善の方策を考えるということができていません。


なお、先ほど、人口減少による財政力の低下や直方市では「毎年、介護費等の扶助費は、1 億円を超える規模で増大」(平成29年度施政方針)していることに触れましたが、その傾向は直方市の人口でもっとも多い団塊世代が90歳になる2040年頃まで継続すると思われます。

したがって、財政の硬直化どころか財政が破綻する危険すらあることを正しく認識し、市民の健康意識・健康努力を大きくアップさせる予防施策を具体的に展開する方向性をハッキリと打ち出すべきです(参照\、「健やかで幸せに暮らせる「健幸都市」だって!」および「プール、スタジオ、トレーニング施設をはじめ、河川敷サッカー場や野球場のあるスポーツ施設を開設し、みんなが健康で、明るく、楽しく過ごせる舞台を創ろう!」)。予防は医療や福祉と比べるとさほど重視されてきませんでしたが、それでも「介護予防事業を充実させる」というだけでは視野が狭すぎるし、対策として真剣味に欠けると思います。


第3は、『財政力指数は 0.538 であり、さほど懸念される状況にはありません』などと、どうしてそんなことが言えるのでしょうか。もしかしたら、財政力指数の全国平均が0.50なので、単純にそれとの比較で全国平均よりましだと言っているのかもしれません。
財政力指数は「基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値」です。普通の言い方をすると、家計であればカネの使い道がたくさんあるのに収入はその半分くらいしかない。このままでは半分しかニーズを満たせないから、なんとかしなければと思う状況です。つまり、収入がニーズの半分くらいしかないことに着目すべきであり、日本の自治体はどこも財政状況が悪いのですから、全国平均より3.8%よいと言って喜んでいられる場合ではありません


以上、人口が5万人、4万人、そして30年後には3.5万人近くと減少していくとき、地方税収入の低下見通しなどを踏まえた財政状況についても高い蓋然性で予測できます。否が応でもまずはこの人口と財政力をスタート地点に、政策方針と施策を考えなければならないことを述べてきました。

 

私の鞍手高校時代の同級生の中にも、現時点で市民として特に困っている点はないし、市の行政に特に不満はないという人は確かにいます。自分はそれなりの額の厚生年金や共済年金をもらえているからという気持ちのようでしてトランプ流の自分ファーストです。このまま自覚しないで何もせず、さらに4年間を無為に過ごすならば、直方の低落傾向と財政破綻への不安はいよいよ深まり、子や孫たちに希望の道筋を示すことは何一つできない事態であることを強く自覚すべきです。


なお、ふるさと直方フォーラムはオール直方委員会で直方の未来創造に取り組むことを提案しています。この提案は実は財政が破綻する危険も念頭においてのものです(国と政府全体について同様の問題意識と提案を述べる野田元首相の発言を紹介しています。

オールジャパンで大悪夢に立ち向かうと「オール直方の力を結集して」 2019.3.7 - ふるさと直方フォーラム 参照ください)。今はそこまでは口にしていませんが、ゆくゆくは直接民主政のようなオール直方委員会が機能することにより、現在、市条例により19人とされている市議会議員の定数を、11ある小学校区ごとに原則1名、例外的に最大2名とするとか、市職員の配置などについても予断のない検討をしなければならなくなることも意識しています。
 (参考) 直方市のランキング成績 地域番付トップ > 九州地方の地域一覧 > 福岡県 > 直方市

首長給料

全国全地域(1,750地域中):319位

福岡県内(60地域中):9位

議員報酬

全国全地域(1,750地域中):375位

福岡県内(60地域中):14位

議員定数

全国全地域(1,665地域中):632位

福岡県内(57地域中):18位

職員平均給与月額

全国全地域(1,762地域中):645位

福岡県内(61地域中):22位

 以上です。

2019直方市長選: 総括壬生市政 第2回 政策前提要因として直方市人口ビジョンと将来の財政状況に留意できていない


ここでは、施政方針なり施策を具体的に決定するさい、常に前提としなければならない制約要素について述べます。

それは人口減少とそれに伴う財政力の縮小という問題です。壬生氏だけでなくすべての立候補予定者に共通してお願いしたいのですが、施政方針なり施策を具体的に決定するさいには、直方市の人口ビジョンと将来の財政状況との関係に十分留意し、決定する施政方針なり施策等には人口ビジョンと将来の財政状況についてどのように考えているかを明記することを求めたいと思います。


直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略では人口減少問題を最初に取り上げていますが、国に倣って2040年までの人口減少しか予測していません。率直に言って、これでは迫りくる事実を認識して対応策を準備しなければいけないという危機意識が弱いと感じます。参照してください。

1. 人口の増減等に関する正確なデータを知ろう!

1-⑵ 2010年から2040年の間の直方市など市町別および20〜39歳女性の人口増減(率) - ふるさと直方フォーラム


 イ 市が公表している直方人口ビジョンなどによると、現時点で公表されている直方市の人口は57,686人ですが、2040年の人口は42,784人と推計されています。そして、20~39才の女性が赤ちゃんを産むとして、直方市のその数は現在約5,500人ですが20年後の20~39才の女性の数、つまり今現在0~19才の女性は約4,800人です。

また、ここ数年市内の出生数は年約500人ですが、20年後2040年の出生数は年約300人と推計されています。直方市への人口流入が始まるとか、特に赤ちゃんを産むことができる若い世代の女性が直方に転入してくるといった、人口に関する減少傾向が増加に転じる要素は今のところ見当たりません。現時点では予測できない変化がない限り、年約300人の出生数は2040年以降も減少を続け、早晩、直方市の人口は4万人を割り、私たち団塊の世代が100歳になる2050年には3万5千人を割ると推測されます。


 ロ 不確かなことばかりの未来ですが、直方市の人口が以上の推計とおりになる蓋然性は極めて高いと思われます。したがって、これからの政策方針を定め、具体的な施策を検討するさいには、30年後は直方市の人口が現在の半分近くまで減少することを否が応でも大前提として将来像を描いていかなければなりません。(続く)

 

2019直方市長選:総括壬生市政 第1回 壬生氏は市長選に再出馬する『目標とそのための施策』を明らかにせよ 2019.2.1 3.17

1回目は「市長として掲げる『目標とそのための施策』」について考えます。

しかし、肝心の到達したい『目標』とそのために考えている『施策』がハッキリしません。壬生氏に限ることではありませんが、およそ市長に立候補しようとするならば、達成したい『目標』とそのために実行しようとする『施策』をハッキリと示してもらわないと、有権者やマスメディアそして対立する候補者として議論のしようがありません。

 

昔なら漠然とした選挙公約で足りていましたが、最近は候補者や政党が有権者に向けてマニフェスト(政権公約)を発表し、それに基づいて有権者が候補者や政党を選択するというのが民主選挙の基本になっています。「知恵蔵」を見ますと、「それまでの選挙公約が総花的で、抽象的であったのに対して、マニフェストでは政策実施に必要な財源や、いつまでに実現するか期限を示すことが加わった。個別的な利益誘導ではなく、マクロな問題について政党が大きな構想をマニフェストで示すことによって、国民による政権と政策の選択が可能になるという期待がある」と説明されています。

 

ちなみに、政策評価法3条は政策評価の在り方について、「行政機関は、その所掌に係る政策について、適時に、その政策効果(略)を把握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価の結果を当該政策に適切に反映させなければならない。」と定めています。政策評価有権者の判断材料という違いはありますが、「いつまでに、何について、どのようなことを実現しようとしているのか」を明らかにすることは両者に共通の必須事項です。

 

ひょっとしたら誤解があるのではと気になるのですが、壬生市長は「これまでの慣習や慣例にとらわれず、直方市政を見つめ直す」を公約に掲げていました(選挙公約、市長登庁式職員への訓示)。また、「公平・公正で透明な行政の実現」も掲げています(平成27年6月26日市長所信表明平成27年4月27日市長登庁式職員への訓示)。さらに、平成 28 年度の目標として、「「伝える・伝わる」、「聞く・聞こえる」という双方向による発信と対話の推進を基本的な方針として市政に臨んでまいります」とも述べています(平成28年度施政方針)。

 

市民のための市政を推進するに当たって是非ともそのような姿勢で臨んでほしいと思いますが、それらは市民が市政の主役である現代の自治体行政が当然に守るべき基本姿勢であり行政手法であって、上記でいう『目標とそのための施策』ではありません。仮に、訳あって、基本姿勢なり行政手法を実現し維持すること自体が壬生氏の考える市長としての最終目標であるなら、理由を含めそのことを市民に明らかにすべきです。

 

ちなみに、人口減少と高齢化に直面する現在の自治体が『目標とそのための施策』を設定しようとするときに最も参考にすべきは、少子高齢化の進行や人口減少の現状、そして「東京一極集中」の傾向を正しく認識したうえで、『まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立』を目指している「まち・ひと・しごと創生総合戦略 (2017 改訂版)」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/honbukaigou/h29-12-22-shiryou1.pdf

かもしれません。国レベルのものですが、この「総合戦略」は4つの「基本目標」として以下の4つの「基本目標」を設定し、それが地方における政策効果として多様な形で結実することを狙っています。

<基本目標①> 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする

<基本目標②> 地方への新しいひとの流れをつくる

<基本目標③> 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる

<基本目標④> 時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する。

 

もちろん、学問をしているのではなく実務の場の話ですから、「基本目標」を設定した後では、「政策(基本目標ないし基本方針)ー施策(政策を実現するため の具体的な方策や対策)ー事務事業(「施策」を具現化する ための個々の行政手段)」の政策体系を完成させなければいけません。

 

参考までに、ふるさと直方フォーラムの提案(初出2018.9.19)の目標は、「オール直方の力を結集し、子どもや孫たちが夢と誇りの持てる直方を創ろう!」です。そして、その趣旨を説明した後、〔取組み〕として、「福智山と遠賀川彦山川のある自然環境の保全活用」から『4 財源の調達』までの計4つを挙げています。ですから、この〔取組み〕というのは政策体系でいう「施策」です。〔取組み〕は、さらに「福智山と遠賀川彦山川のある自然環境の保全活用」については、「イ 遠賀川河川敷のサイクリングロードの積極活用」や「ロ サイクリングロードとリンクさせた『直方道の駅』の開設」「ウーバー・サービスの導入」を含む4つを事務事業として挙げています。

 

そこで壬生市長の「平成 30 年度 施政方針」を見ると、次の構成です。「1 財政硬直化の緩和 2 産業・農業の支援強化 3 福祉政策の一層の推進 4 教育環境の整備 5 文化政策の一層の推進 6 観光振興の推進 7 複合施設の建設 8 人財の育成の推進と充実」。これでは羅列してあるだけで政策体系の体を踏まえた施政方針になっておらず、『目標とそのための施策』を読み取ることができません。再出馬表明の理由として「実施した施策は道半ば。目標に到達しなかったものについて到達」できるよう考えていかなければならない」と言うならば、『目標とそのための施策』を是非とも明らかにしてほしいと思います。

 

なお、直方にも「直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成30年5月一部改定)があります。その策定にあたり、市長は本部長として、審議会委員の委嘱等を含め、これをリードしているはずです。そして、総合戦略はその名のとおり『(まち・ひと・しごとという)目標とそのための施策』を実現するための「戦略」を述べるものですから、従来の総合計画のように、審議会に答申してもらって専門性や民主性を装い、策定してもらって終わりでは意味がありません。そして、市長の施政方針や所信表明にもしっかりと反映させ、整合性以上の首尾一貫性を確保したうえで、大いに活用してほしいと思います。

 ※ 地方自治法改正による総合計画の法的位置づけの変更と拘束力の消滅について、

  随分以前に指摘しているが、市のHPではいっこうに是正されていません。

  いささか恥ずかしいことと思います。

 

2019直方市長選:総括壬生市政 プロローグ 壬生氏市長選再出馬を総括する 2019.1.30、3.14 3.17

壬生市長が議会答弁で市長選再出馬を表明している。新聞報道によると、壬生氏は「市長になって初めて実施した施策は道半ば。・・・・目標に到達しなかったものについては到達できるよう考えていかなければならない。・・・」(毎日新聞2018年9月20日地方版)と述べている。そこで、壬生氏の再出馬表明をどう受け止めるか、支持すべきか、注文を付けるべき点は何か、壬生氏が到達したいという『目標』とそのための『施策』に焦点を合わせ、明日から何回かに分けて考えてみたい。今のところ、以下の項目を予定している。

1. 市政に取り組む基本スタンスと施策の選択決定

2. 直方市の人口ビジョンと将来の財政状況への留意

3. 誘致や視察について

4. 中央省庁等への職員派遣

5. 教育分野

6. 農業施策

 7.  文化政策  

 

  壬生市政を総括するために眼を通したのは直方市のHPにアップされている以下の情報です。ただし、直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略検証委員会報告など、直方市HPの検索エンジンで検索しようとしてもヒットせず、同じ言葉を外部のグーグルで検索するとヒットするものがいくつかあります。HPのシステム全体を見直すべきです。

 

    また、市の計画のうち最も重要な計画とされている第5次直方市総合計画に関する「第5次直方市総合計画にかかる市民会議」や「第5次直方市総合計画審議会」など、そもそもHPにアップされず公表されていないものもかなりあるようです。

 

 壬生氏は「市政が公平・公正であるかどうかを市民が判断するためには、 市政運営の過程が透明でなければなりません。透明であるとは、市政に関する情報が市民に十分開示され、市民が、市政運営の過程を監視し、批判し、検証できる状況にあるということです」(平成27年6月26日市長所信表明)と基本方針を述べていますが、実際に現場では徹底できていないのです。

 

    昔に比べると、公表というか説明責任の遂行は随分向上してきているとは思います。しかし、住民の異動受付窓口である市民課で住基ポイントデータをリアルタイムに整備する『住基台帳のポイント化による緻密な政策立案』https://www.esrij.com/industries/case-studies/94936/ の仕組みを構築して庁内業務効率化の成果を挙げているとPRしているのですから、外部に対する説明責任と透明性を果たすための情報についてはそれ以上に、実際に利用する市民の立場に立って、関係者が不断の改善に取り組むことを希望します。

 

 〔施政方針など〕

 

直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略 関係

      直方市人口ビジョン  (2638KB; PDFファイル) 

      直方市まち・ひと・しごと創生総合戦(改訂版) (3829KB; PDFファイル)

      直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略(概要版)(996KB; PDFファイル)  

        【資料6】施策の見直しについて (134KB; PDFファイル)

       【資料8】直方市まち・ひと・しごと創生総合戦略検証委員会報告事業 

 

〔策定された第5次直方市総合計画(後期基本計画)〕関係

      第5次直方市総合計画-基本構想 (5932KB; PDFファイル

      第5次直方市総合計画(後期基本計画)-資料編(13833KB;PDFファイル) 

      平成29年度直方市のまちづくりのための市民意識調査について

 

なお、壬生氏の『目標とそのための施策』について検討する前に、一点述べておきたいことがあります。話は逸れますが、壬生氏が2015年4月に無投票で市長に就任して半年ほどしか経っていない頃です。壬生氏は市長選に立候補した時のパンフレットなどで「(これまで刑事司法の狭い世界で生きてきたが)これからは多数の人の公共利益のために力を尽くしてみたい」「市長になった暁には市内をくまなく廻り、現場を見て学びたい」という趣旨の抱負を述べていました。

そして、それまでの刑事司法の狭い世界から、人口6万人弱とはいえ自治体の首長職を務めることになったのですから、市民よりも市の職員よりも誰より一番、直方の現実と公共利益のあり方を知らないのは自分であると自覚し、それくらいの謙虚な姿勢で、人口減少と高齢化が進む直方市の再生と創生を目指し、さぞかし不眠不休でまい進してくれるだろうと期待していました

ところが、直方市が関係する民事事件の代理人として弁護を引き受けるなどというならまだしも、あろうことか福岡県警元警視の詐欺未遂事件で私選弁護を引き受けると全国的に大きく報道されました。どこにそんな脇目を振る余裕があるのかと期待を裏切られた気持ちでしたが、報道の一般は同意するでも批判するでもない、ただ珍しい出来事を報道するという印象でした。しかし、壬生氏と市の事務局は地方自治法を含め法律上違法ではないとの立場で態度は変わらず、そのまま1審有罪、控訴審も控訴棄却になっています。

私選弁護を引き受けることが地方自治法上適法か違法かなどという、法を生業にしている者にとっての関心と次元からどうこう言っているのではありません。まったく素朴に、直方に対する思い入れを問いたいのです。考え直しても、私選弁護を引き受けたとき、直方市のことだけに専念する気持ちがないことを明らかにした時点で壬生氏は市長を辞すべきでした。本人が辞職しないのであれば市議会は不信任決議なりをすべきであったと思います。

私はこのように考えますから、再出馬表明をすんなりと受け入れる気持ちにはとてもなれません。少なくとも壬生氏自身、『目標とそのための施策』を語る前に、上記の刑事事件弁護についてどう考えているのか、また今後も弁護士として活動を続ける意思があるかどうかについて明らかにしてほしいと思います。

 

 補遺 以上を書き終えた後で気づいたが、詐欺未遂事件の私選弁護引受けについては、当時、地方自治法中心に行政法の視点から考察しています。参照ください。

市長に対する監査請求に思う(上) 2016.7.26 - ふるさと直方フォーラム